幕話1
とある日俺と万里紗は近くのショッピングセンターに買い物に来ていた
特に買うものを決めているわけではないが、ぶらぶら二人でお店を見て回り、服とか小物とか気に入ったものがあれば買う予定だ
さてところで今の時刻は十二時を過ぎたところで、朝からお店を回っていたため流石にお腹が減った俺たちはその施設にあるフードコートで食事をしているところだ
「そういやさっき香水買ってたけど、今まで使ったことないよな?」
俺はシンプルな醤油ラーメンを食べながら万里紗に尋ねる、万里紗はあまりお洒落に凝るタイプではないから少し気になったのだ
俺と同じ醤油ラーメンを食べている万里紗が答える
「うん、使ったことない」
「そうだよな、まぁ勿論買うのはいいんだけど、でも万里紗が香水とか使いたいと思うのって意外だな」
万里紗もそういうことに興味を持つようになったのかと考えていた俺だが、どうも少し違うようだと分かった
何故なら万里紗が首を横に振っていたからだ
「……千はちょっと勘違いしてる、あれは私だけじゃなくて千も使うやつ」
「え?俺も使うの?万里紗だけじゃなく?」
あれそれは予想外だ、まさかの俺も使うものだったようだ、でもそれにしては俺に一言もなく買ってたような気がする、だから普通に万里紗のものだと思っていたよ
どこか腑に落ちない俺は先程の店での会話を思い出してみる
「あ、香水売ってる、千見てもいい?」
「勿論いいぞ、どうせだから俺もちょっと見てみるよ」
朝から色々なお店を見て回る途中、万里紗が香水を売っている店を覗いてみたいというので、それに付き添って一緒に入店することにした
「いらっしゃいませー」
女性の店員さんが笑顔で迎えてくれる、俺らはその人に軽く頭を下げてから店内に入り、棚に陳列してある商品を見回してみる……がそのあまりの種類の多さに一瞬眩暈を覚えてしまった
色々なメーカーの色々な種類の香水が所狭しと並んでおり、どれから手を付けたらいいのか全く分からない
何をしたらいいのかわからず戸惑っている俺とは対照的に万里紗は一直線に店員さんの方に向かい声をかけていた
「すいません、爽やかなの匂いのものってどんなものがありますか?あと……系とかあればそれもお願いします、出来ればどちらも匂いが薄く少し匂うぐらいのものがいいです」
「はい少々お待ちくださいね!!いくつかお持ちしますから」
万里紗は既にどういうものを買いたいのか決めていたようで、店員さんに淀みなくオーダーしている……しかし前半は何を言っているのか聞こえたが、後半の方はよく聞こえなかった、一体なんだったんだろうか
「はいお待たせしました、こちらになります」
少し待っていると店員さんが幾つか香水のサンプルを手に持ってやってきた
「お客様のご要望通り、まずこちらの3つが爽やかな匂いのする香水で、そしてこちらの3つが柑橘系の匂いの香水です」
どうやらさっき聞こえなかった香水の種類は柑橘系の香りのようだ
それから万里紗は店員さんが持ってきてくれた6つのサンプルを一つずつ嗅いで香りを確認していく、俺も折角なので香りを順に嗅いでみることにする
……ふむ、爽やかな香りって言うだけあってこの3つは嗅いでみるとかなりすっきりする、確かにこの中ならどれでも万里紗が好みそうな清涼感を感じるな、それに対して残りの柑橘系の香りを嗅いでみるとさっきとは違い甘い香りが仄かにした、それも微妙に香りが違うように感じたが特に2番目の匂いは一番良かった、これぐらいの香りならずっと嗅ぎ続けても不快感は感じず、むしろ心地いいと思うだろう
……まぁでも欲しいかと言われれば別にいいかな、なんというか日常的に香水を使おうとはなかなか思えないからな
とそんなことを考えていると万里紗がこっちを見ていることに気が付いた、どうしたのだろうかと思い声を掛けようとしたが、その前に万里紗は微かに頷いたあと店員さんのほうを向いてこう言った
「この香水とこの香水をください」
万里紗が指を指したのは、爽やかな香水の中の1つと、俺が一番いい香りだと思った柑橘系の最後に嗅いだ香水だった
へー万里紗もこの香りを気に入ったのか、やっぱりいい香りだよな、流石万里紗だよくわかってる
そうこうしている間に万里紗は会計を終えたようだ
「ありがとうございましたまたお越しください!!」
「お待たせ、次行こ」
丁寧な対応してくれた店員さんにお礼の意を込めて頭を下げそのお店を出ることにした
……さて、さっきの店での出来事を思い出していたわけだが、今から考えると確かに気になることがあった
「もしかして、俺が香水を嗅いだ時の反応でも見てた?」
「ん」
「そういうことね、だから俺が一番いいと思ったやつを万里紗が買ったのか」
成程なやはりあの時の視線は俺の反応を探るものだったようだ、俺がどれが気に入ったかなんて万里紗にとっては簡単にわかることだろうし
「てことはじゃあそっちの柑橘系の匂いを使ったらいいんだな?」
「いやそうじゃない」
俺が一番いい香りだと感じたものだからてっきり俺が使うのかと思ったけどそうじゃないみたいだ
「千には、私が一番いいと思ったこれを使ってほしい」
そう言って万里紗はもう一つの方の爽やかな香りがする香水を渡してきた
ん?でもそれは万里紗が一番いいと思う香りなのだから自分で使った方がいいんじゃないかと一瞬思った
……がそこでようやく万里紗の意図に気が付いた、成程なほんとに万里紗は俺のことをよく考えてくれているんだなと少し恥ずかしくなる
なので少し照れ隠しを込めながら微笑み、万里紗にこう伝える
「ありがと、万里紗が一緒に居ない時でも不安になることが無いようにこれで万里紗のことを常に感じるようにするよ」
「ん」
万里紗は俺がこの間泰輔に話した昔話を聞いて、自分がそばに居れない時に万が一俺が不安になるようなことがあったら嫌だと思ったのだろう、だからいつでも自分を想起させられるようなものとして香水を選んだのだ
……ほんともうそこまで子供じゃないっていうのに、まぁそこまで思われていると思うと悪い気はしないけどな
そんな万里紗の愛情を深く感じた、休日だった
どうもロースです。(これいるかな)
お読みいただいてありがとうございます。
ということでおまけ話のような幕話です、一応前回の話と絡んでいますが別に物語に影響するような話ではなく、ただの二人の日常です
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