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昔話前編

 午前中の授業が終わり昼休みの時間になる

 この時間を待ってましたとばかりに泰輔が俺の席に飛んで来る(ちっ覚えていやがった)、まぁ約束したので仕方ないご飯を食べながら話すことにするか


 とりあえずいつも通り鞄から弁当を取り出そうとしたところで異変に気がつく

 ……弁当が見当たらない、よく中を探してみるが忘れたことは確かみたいだ


「あーごめん泰輔、俺弁当忘れてしまったみたいだわ」

「まじかーんじゃどうする?今から買いに行ってくるか?」

「んーちょっと待ってくれ考える」


 朝のことを思い出してみる……うん考えてみたらそうだ今日そもそも弁当を見た記憶がない、それにいつも弁当を作ってくれている母さんが料理している姿も見ていない


 まぁ弁当を忘れてしまったことはこの際仕方ない、泰輔の言う通り購買にでも買いに行けば一応解決する

 それより母さんが一言も弁当のことを話さなかったのが気になるな


 ……なのでとりあえず万里紗を呼ぶことにする


「ちょっとごめんな泰輔……おーい万里紗!!」

「ん」


 まだ万里紗が自分の席にいると思って声をかけたが、返事はすぐ後ろから聞こえてきた


 なので振り返り万里紗の方を向く


「はいこれお弁当、あと今日はここで食べる」

「おうありがと、じゃあ机動かすからここに座ってくれ」


 万里紗から弁当を受け取り自分の机に置いた後、俺は隣の席の机を動かして俺の机に対して垂直になるように付ける、俺の前の席は泰輔が既に動かして俺の机とと対称になるようにくっつけているから、丁度その二つの机の側面の中間に三つ目の机を付けている形だ


「万里紗も一緒に食べるけどいいよな?泰輔」

「お、おうそりゃ勿論いいんだけど……一連の流れが速すぎてついていけなかったぜ」

「ん?一緒に食べるための用意しただけじゃないか?」


 確かに万里紗が来てから一言も話してなかったみたいだが何をこいつはそんなに戸惑っているのだろう、ほら万里紗を見てみろよ既に椅子に座って食べる準備を進めているじゃないか


「いやだってそもそもお前弁当を忘れたって困ってたじゃん、なのになんで宝野が弁当を渡した瞬間何もなかったのように納得してるんだよ」

「それは万里紗が俺の弁当を持っていたのが答えじゃんか……そうだよな万里紗?」


 こくこくと頭を縦に振る万里紗


「ああいやだからその理解の速さが……もういいやこのマイペースについていくの馬鹿らしくなってきた」


 何故か一人で頭を押さえている泰輔は置いておいて、俺も万里紗が作ってくれた弁当を開けてみる……ほう見事に俺の好きなものだらけだな、まぁ俺と万里紗の味覚はかなり似通っているから実際は万里紗が自分の好きなものを作ったのだろうな



 少しして復活した泰輔もご飯を食べ始める、そしてある程度食べ進めたところで泰輔が質問してきた


「宝野が一緒に居る時に聞いてもいいのかわからないけど、そろそろ昔の話してくれないか?ずっと気になってたんだ」

「昔の話?千何のこと?」


 泰輔の質問に首を傾げる万里紗


「泰輔が俺らの関係が気になるから昔の話を聞きたいんだとさ」

「そう、わかった」

「じゃあ面白いかどうかはわからないけど話すとしようか」


 万里紗も納得したようなので俺は話しを始めようとする、しかし泰輔はまだ気になることがあるようだ


「あ、宝野はいいのか?昔のことを俺が聞いても」


 まだ万里紗の了承が取れていないと思ったのか、万里紗に問いかける泰輔

 気遣ってくれたのだろうが残念だが無意味だと思う、だって万里紗の答えは


「千が話してもいいと思うのなら話したらいい」


 というわけだ、つまり何も俺らにとって問題はないってことだ


「……はいではお願いします」


 万里紗の回答を聞き自分だけがずっと空回りしていることに気が付いたのだろう、もはや諦めた顔をしている泰輔は納得(こうさん)した




「じゃあどこから話すとするかな、そうだな俺たちが付き合い始めた時のことを話すか」

「おお、それ気になっていたんだよ」


 興味津々の泰輔に対して、特に反応もせずにご飯を食べている万里紗


「俺たちが付き合い始めたのって丁度小学校に入学した時だったのよ、けど付き合い始めたって言っても自分たちで決めた訳じゃなくて、俺たちの親が付き合わないの?って聞いてきたからそれに従っただけでさ、だから正直俺も万里紗も付き合うってことの意味を少しも分からずにただ付き合っていただけなのよ」


「あーそりゃそうだよな小学校に入学って言ったら……6歳とかだもんな、わかるわけないよな」


「そう、だから付き合ったからと言って俺ら自身は何も変わらなくてさ、それまで通り仲良く遊び続けたし、だから勿論お互い相手のことが特別だという感情も無かったよ」


「あー仲の良い友達の一人に過ぎなかったってことか」


「そういうこと、だけど俺たちはそれで問題なかったんだよ、なにせそれまで通り楽しく過ごせたし

 ……けどな周りはそうじゃなかったんだよ」


「周り?それってもしかして親の事か?」


「いや違う、俺たちの親もその関係でいいと思っていたよ、いつか付き合っている事で分かることがあるって言ってたし……まぁ今はそれはいいんだけど」


「じゃあ周りって誰のことだ?」


「それは……同じクラスの生徒のことだ」


 少し声のトーンが落ちる、泰輔も俺の雰囲気が少し変わったことに気が付いたのか何も口にしない


「ほら泰輔も見たことあるだろ?男子が女子と喋っていただけで周りの奴にからかわれたりする光景をさ、勿論俺たちのクラスでもそうやってからかってくるやつがいたのよ」


「あーそれは確かによく聞く話だな、あの頃ってそうやってからかわれるのが滅茶苦茶嫌に感じるんだよな」


「そうまさにそれなんだよ、俺もその時周りにからかわれるのが凄く嫌だったんだよ、だからからかわれないように気を付けようと思っていたんだけど……」


「でも既に……」


 泰輔は察したようだ、俺がどんな状況にあったのか


「そうその時は何も分かってなかったからさ、周りに何も隠さずに言ってしまってんだよ、万里紗と付き合ってるってことを」


「そんなことを言ってしまったらその後どういう扱いを受けるのかはわかりやすいよな……想像している通り散々からかわれたよ、今そんなことされても鼻で笑い飛ばすぐらいのことにしか思わないけど、当時の俺にがそんな風に思えるわけもなくてさ、それがずっと続いたことでついに俺は耐えきれないぐらい嫌に感じてしまったんだよ」


「それで千里はどうしたんだ」


 聞いてはいるが大体答えは予測できているのだろう

 だから俺も自嘲気味に答える


「簡単なことさ」


 万里紗の方を一瞬見るが何も動きは無い


「俺は万里紗を学校では無視するようになったんだよ」


どうもロースです。

お読みいただいてありがとうございます。

少し重たい話ですが、あくまで昔の話ですのであまり気にしないでください

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