万里紗は尽くすタイプ
翌朝目を覚ました時には万里紗はもう家に帰ったみたいで、部屋の隅に布団が畳まれて置いてあった
時刻は7時半を回ったところだ、大体いつも8時過ぎに家を出るから後30分ほどある
それでもあんまり悠長にしている暇もないのでさっさと着替えて1階に降りることにする
1階に降りるといい匂いがしてくる、いつも俺が降りる頃には母さんが朝ご飯を用意してくれているのでその匂いだろう、匂いから考えるに今日のご飯はパンと目玉焼きかな……ああ何かを焼いている音もするからベーコンエッグってところかな。
「おはようかあさ……ん?ああ万里紗か」
台所に立っているであろう母さんに挨拶をしようとしたが、そこに立っていたのは母さんではなく万里紗だった、しかも制服を着ているからやはり一回自分の家に戻ってそれからまた俺の家に来たようだ
「おはよう千、もうすぐでできるから座って待っててね」
「あぁおはよう万里紗、ご飯作ってくれてありがとうな、でも俺も手伝うよ」
「ん、ありがと」
そういえばじゃあ母さんは何しているのかと思ったが、洗面所から水を使う音が聞こえたので顔でも洗っているんだろう、母さんも勿論食べるだろうしそれなら3人分の用意をしないといけないかな
お茶とコップ、それにお箸や調味料を持っていき食卓に並べる……さてこっちの準備は終わったから万里紗を手伝うとしよう
そう思ったが丁度パンが焼けた音がしたのでバターを塗らなければいけないな、なので塗る合間にベーコンエッグを作っている万里紗へ必要なものを渡すことにする
「はい胡椒……それとお皿3つ」
「ん」
3人分のベーコンエッグを作り終えた万里紗が最後にフライパンから皿に移して朝ご飯は完成した
食卓に3人分の朝食を並べ終わったところで、母さんが洗面所から出てきた
「あー万里紗ちゃんありがとねー代わりに作ってもらって、ほんとに助かったよー……千里も手伝ってくれたのねありがとね」
「うん、美味しくできたと思うよ」
母さんに褒められた万里紗は少し誇らしげにしている
「さぁじゃあ食べましょうか、せっかく作ってくれたのに冷めたら台無しだもんね、いただきます」
「「いただきます」」
ご飯を食べ終わり、それから学校へ行く用意を済ませるともう出ていかなかなければいけない時間になってしまったので、万里紗と一緒に学校に向かうことにした
「「行ってきます」」
「はい、いってらっしゃい……あ、ちょっと待って万里紗ちゃん、今日はどうするのー?」
「んーまだ二人から連絡ないから来させてもらうかも」
「了解しました、また連絡あったら教えてね」
「ん、ありがとう光代さん」
「そういやなんで今日は朝ご飯作ってたんだ?一回家に帰ったのに」
今だってそうだ、昨日何も言ってこなかったから今日は別々に登校するのだと俺は思っていた
……まぁそれらの理由も推測することはできるがこういうことは本人に聞くのが一番だ
「……んー気分?」
俺とは目を合わせずにそう万里紗は答えた
成程気分か、あり得る理由だし実際気分が乗ったからというのはあるのだろう、けどそれが本当の理由ではないことぐらい俺にはわかる
何故なら万里紗が誤魔化そうとするとき理由は大体同じだからだ
「そうか……でも本当は俺の母さんに料理の腕が追いつきたいからなんだろ?」
「うん千の言う通り、今はまだ無理だけど将来的にあのカレーの味を超えられるようになりたい」
俺に嘘がばれているとわかっていた万里紗は、直ぐに俺の答えに肯定した
……全く万里紗も無駄な嘘を付くものだ、俺らがお互いの嘘を100%見抜くのはとっくにわかってることなんだし
……じゃあなんでそんな無意味な嘘を付くんだって?……それはただ万里紗は照れ隠しをしたかっただけだよ
あれだよ、努力している姿はあんまり他人には見せたくないってやつ
まぁ何にしても
「どうしたんだ?そんなに俺に話すのが恥ずかしかったのか?、この可愛いやつめ」
そう言ってから俺は万里紗の頭をがしがしと撫でる、サラサラの髪だけど流石に少しぼさぼさになってしまった
俺が撫でるのをやめるまで動かなかった万里紗だが、手をどけると万里紗はぼさぼさになった髪を手で戻しながら、俺を半目で見てきた
「千あんまりからかわないで……でも早くあの味をマスターして千に食べさせてあげるから待ってて」
顔だけ見ると半目でこちらを睨んできていて不機嫌そうだが、万里紗の気持ちが分かっている俺からすれば可愛い以外の何物でもない、しかも万里紗が俺の前で恥ずかしがることなんてあんまり見れないから今日はいいことがあるかもしれないな
そんなバカなことを考えていると
「むう、まだ私のこと馬鹿にしてるな……まあいいや千が嬉しそうだし」
万里紗はそう言ってから不機嫌そうな顔から一転させニコッと笑った
「んじゃまた後で」
「ん」
自分たちのクラスに着いたので、そこから俺は万里紗と別れ自分の席についていた
時刻は8時25分、後5分で授業が始まるのでおとなしく席に座っていたが、後ろから肩に手を置かれたため誰かを確認するために振り返ることにした、するとそこにいたのは荒巻泰輔だった
「よう千里おはようさん、今日も朝から宝野とラブラブだな羨ましいぞ」
「おはよう泰輔、別にそこまでじゃないと思うぞ普通だよ普通……ってこのくだり昨日もしなかったか?」
「それぐらい俺が二人がラブラブだと感じてるってことだ、気にするな」
「いやーうーんそれもどうなんだろう?」
若干気持ち悪い気がしないでもない
「にしてもさ、なんでそこまで仲いいんだ?10年付き合ってるとは言えども、そんなレベルの信頼度とは思えないんだが」
「えぇそんなに気になることか?多分他の奴とそんなに変わらないって」
「いや流石に全然違う、それに噂だけどもう結婚の予定まであるって聞いたぞ?」
こいつの断定もよく分からないが、それよりどこから結婚の情報が漏れたのだろうか……まぁ別に隠しているわけでもないし知られたら駄目なことでは無いが、でも昨日の先生みたいに問い詰められたら面倒だ、適当に誤魔化せる間は誤魔化そう
そしてこいつのこの興味津々さは面倒だ……仕方ないこいつを納得させるために昔のことでも話してやるとするかそれで納得してくれなかったら知らん
でもその前に
「あーわかったわかった後で話してやるから今は席に戻れ、授業始まってしまうぞ」
もう何秒かでチャイムが鳴るところだったので泰輔に席に戻るように言う
「おけ、じゃあ後でな、楽しみにしてるから忘れるなよー」
しっかりと釘を刺した後、泰輔は席へと戻っていった ……そのまま話したこと忘れたらいいのに
どうもロースです。
お読みいただいてありがとうございます。
というわけでギリギリですが投稿できました、ちゃんと伝わる若干不安ですが可愛い万里紗を書いたつもりです、なのでお願いです通じてください
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