長かった一日
「あー楽しかった、やっぱり高校生になっても遊園地は面白いもんだね、童心に帰るっていうのかな?」
「そうだな、せっかく近いところにあるんだし年間パスポートを買ってもいい気がしてきたな……まぁ流石にお金かかるから無理だけど」
あれからパレードを見終わった俺たちは先ほどまでの盛り上がりの余韻が冷め止まないパークの中を歩いていた
ちなみにあと少しで閉園の時間になるからそのため出口を目指している状況だ
「あははそれは仕方ないね、まぁそういうのは大学生になってからだね」
「大学生なあ……」
「ん?なんでそこにひっかかってるの?もしかして大学には進まないつもりなの?」
「んーというか全く決めてないっていうのが正直なところだな、まぁ何事もなければ進学する気がするけどどこに行きたいとか何になりたいとかほんとにないんだよなー」
「あーそういうこと、まぁ確かに言われてみればそうかもね、今の段階で将来何がしたいとか決まっている人の方が少ないだろうね」
「そういう絵里は何かやりたいこととか決まっているのか?」
「んー私ははっきりってわけじゃないんだけどね、一応は決めてるつもり」
「お、そうかちなみにそれは教えてくれるのか?」
「別にいいよ隠すものでもないし……私はアメリカで働きたいのだからそのために勉強してるってところね」
「へぇまたスケールの大きい話だな、じゃあ大学はどうするんだ?」
「それは日本の大学に行くつもり、その間に留学とかできたらいいなって思ってる」
「成程なぁ、いやほんと凄いと思うからぜひ頑張ってほしいよ」
「……なんか他人事過ぎない?凄く冷たく聞こえるんだけど」
うーんどうも俺の返答はお気に召さなかったようで、少しふくれ面しながら俺を睨んでくる絵里
……こんなこと言うと更に怒られそうだけどその顔は今日の中で一番かわいく思える、うん俺って最低だな
まぁ勿論そんなことは絶対口にはしません、オレハカシコイデスノデ
「はぁ、まぁいいや悪気が無いのは本当だろうし」
俺が返答をしないでいると絵里は勝手に納得してくれて怒りを収めてくれたようだ、助かる
しかし俺の窮地はここからだった
「じゃあさ進路調査票にはなんて書いたの?何も決まってないとはいえ流石に何かは書かないといけなかったでしょ?」
「……」
ここで適当な嘘でも自然に言えたのならこんなに苦労しないんだろうなと思いながら自分の単純さにあきれるばかりだ、そんなことをしていると勿論怪しまれるわけで
「……ねぇなんで黙ってるの?もしや何かやばいことでも書いたんじゃないでしょうね?」
こうなってしまうわけだ
それから程なくして絵里の押しに負けて白状してしまった俺がいた……情けない
「ほんとに何てふざけた二人なのあなたたちは?よく先生に激怒されなかったんだよ」
つい一時間前と同じように俺に対して激しい感情をぶつける絵里、しかしさっきと違い怒りと言うよりは呆れの感情の方が大きい気がする、皆はそれが良いことなんじゃないかって思うかもしれないけどその実怒られるよりもそっちの方が俺のダメージは大きいんだよな……
「いやあのね一応は反省してるよ、椎名にも同じようなこと言われたしさ」
「そりゃ誰だっていうよ」
「はぁ……」
仕方ないまた万里紗と話し合ってどうにかしよう……ん?俺たち二人で考えたら更にやばい方向に進む気がするけど流石に気のせいだよな?
「でもさ、そこまで言いきれるって何よりも価値があることなのかもしれないね」
「ん?」
いらないことを悩んでいた俺に、いきなり絵里がそんなことを言ってきた、しかしそれはどういうことだ?
「んーいやなんというかね、何があっても自分の味方になってくれる人が一人でもいるっていうのは思っている以上に凄いことなんだってこと」
「まぁそれは確かに?」
そう言われてもあまりしっくりときていない俺、それを見越したかのように絵里が続ける
「千里はさ、宝野さんがいなかったらって考えたことある?」
「万里紗が居なかったら?」
「そ、宝野万里紗っていう存在が完全に居なくなって誰も彼女のことを覚えていなくて、勿論千里もその存在を全く知らないってこと、想像できる?」
「……」
……想像できるかと言われれば全くできない、今まで万里紗がいない状況を過ごしたことないし常に俺の隣にいることが当たり前だったからだ、それは万里紗からしても同じだろう
だから想像できない、固定概念と言うものは簡単には覆せないのだ
「……ごめんわからない」
俺の答えを聞いた絵里だが、ある程度予想はしていたようで、軽く笑って肩をすくめた
「まぁ答えなんて期待してないよ、所詮IFの話だし気にしなくていいよ……それよりほら」
「ん?どうしたんだ?」
さっきまでの真剣なムードはどこに、急に弾んだ声で話題を転換した絵里は更に腕を突き出して前方に指を指した
絵里が指し示すほうを見る、すると少し暗くて見えづらかったがよく見れば見覚えのある三人の背中が見えた
そして何かを感じたのかその3人の中で一番背の低い一人がこちらを振り返った
「あ、千と笹生さん……その様子だと問題なく過ごせたようだね」
振り返った人物……というかもう皆わかってると思うが、さっきまで話題に上がっていた万里紗はこちらに気が付いた後近づいてきて開口一番そう告げてきた
すると俺が反応する前に絵里が万里紗に近づいた
「……問題なく?私はあなたのせいで色々と大変な思いをしたんだけど?何か謝罪は無いわけ?」
どうやら先ほどのことで俺は絵里がもう怒っていないと思っていたが、いざ万里紗を前にすると静まったはずの思いが爆発してしまったようで、今にも万里紗につかみかかりそうな勢いである
しかしそんな激しい感情を叩きつけられても万里紗はどこ吹く風状態で
「でも楽しかったんでしょ?千と一緒に居るのは、それにその様子だと踏ん切り付けて納得したように見えるからそう言った」
「っぐ……でもほんとに千里の言った通りだわ、完全に私のこと試していたのね」
「試したなんて人聞きの悪い、ちゃんとあなたの望みも叶えたと思うんだけど、ほら名前でも呼んでるし」
「ううう、いやそうなんだけどさ、わかってるよわかってるよこれが八つ当たりってことぐらいさ、でもなんかあまりにもあんたの計画通り動かされているのが腹が立って仕方ないんのよ」
「それこそ私に言えることは無い、だってあなたの頑張り次第でもしかしたら変わっていたかもしれないし」
「……いやそれに関しては無理だよ、どうやってもあんたらに割って入るのは不可能だよ」
「まぁあなたがそう思ったのならそれでいいけどね……でこれからどうするの?」
二人による一通りの応酬(ほぼ一方のリンチだったが)が終わったと思ったら、万里紗が最後にそんなことを聞いた
それに対して絵里は
「……仕方ないからこれからもちゃんと友達をやらさせてもらいますよ、凄く癪だけど」
「そう、ならこれからもよろしく、あ、後で香帆と話してみたらいい、色々と教えてくれると思うよ」
「ん?私とか?そりゃ別にいいけどさ」
今まで少し後ろで会話を見ていた椎名はいきなり自分の名前が挙げられたことに驚きながら返事をした
「そうね、椎名さんには色々聞かないといけないことがあるわね……後でよろしくね」
「んー?いきなりだけどまぁなんとなく予想は付くからいいか」
椎名はいつも通りあっけらかんとしたものだ、ある意味羨ましいよ
話しが一段落したところで、今まで一言も発していなかった泰輔が口を開いた
「じゃあ良い感じに纏まったし皆で帰ろうぜ、というかご飯食べないか?お腹が空いて仕方がないからさ」
「そうだな、俺と万里紗はオーケーだけど二人はどうだ?」
「私は構わんよ、一人暮らしだしその辺はどうとでもなるからさ」
「私も大丈夫かな、お母さんには遅くなるって伝えてるし」
「よし、じゃあ5人でどっか食べに行こうか、とりあえず駅に向かおう」
全員の決が取れたところで泰輔が先導し駅に向かうことにした、最悪この辺の店が混んでいるようなら俺たちの家の最寄りまで行ってから食べてもいいだろう
そんな感じで色々あったが俺たちの校外学習だけど、まぁ無事に終わることが出来たんじゃないかな
どうもロースです。
お読みいただいてありがとうございます。
そしてすいません、更新が10日ほど空いてしまいました、とりあえず毎日とは言えませんが出来るだけ更新はしたいと思いますので気長にお待ちください、次はエピローグです