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長い一日 9

「そういえば今更だけど、千里がいた宝野のグループはちゃんとやってるのかな?」


 時刻は六時を過ぎた頃、目当てのアトラクションをほとんど乗り終えた俺たちは近くにあったベンチで休憩していた、まだどうしても動けないというほど疲れたわけではないが、何せこの後夜の目玉のパレードがあるのだ

  あれだけ元気一杯だった絵里も流石に疲れが出てきたようなのでこうして休憩している


「いやほんと今更だなその疑問は……でもそれだけ余裕が出てきたってことだな」

「あーうん確かにそれはそうかもね、最近はずっとどうやって千里を誘い出すかだけを考えていたし、それに今日二人きりになったらなったで滅茶苦茶緊張するし、ようやく自然体というか肩の力を抜いて過ごせている気がするわ」

「それなら良かったよ、こちらとしても折角一緒にいるんだしどうせなら楽しんでもらわないと嫌だしな」

「何それ、なんか少し上から目線じゃない?」

「まぁまぁ俺もちゃんと楽しんでるから心配するな、なかなか新鮮な経験だったし」

「ふーん……ならいいけど」

「まそれにさっきの質問に答えるとだけど、万里紗たちは万里紗たちで楽しくやれてるぞ思うぞ、あいつらは別に俺が居なかったら駄目な関係でもないしな……恐らくだけど今頃万里紗が疲れてきていて椎名が引っ張ってるんじゃないかな?」


 椎名の体力に万里紗が付いていけるかと言うと多分無理だと思う、そんなに無茶な行動をしているとは思ってないけどそれでも俺達のようにこの時間には疲れてきているはずだ

 とりあえず心の中でファイトーと万里紗にエールを送る

 ……ん?泰輔?あいつはどうとでもなるから気にすんな


「千里がそういうなら大丈夫か……それ大丈夫なのかなほんとに」

「気にすんな気にすんなそれよりそろそろ行こうぜ、ちょっとパレードの前に行きたいところがあるんだよ」

「え?いいけどどこ行くの?」

「お土産屋」


 勿論普通にお土産を買いたいというのはあるんだけど、俺には万里紗にプレゼントを買わなければいけない使命があるのだ、今日は朝から色々あったけどそれはしっかり覚えていて良かった良かった



 というわけでやってきたお土産屋さんが並んでいる一角、どこのお店にも馴染みのあるキャラクターの商品が置いてあるのが見て取れる、正直言うと俺も万里紗もこういうキャラクターを好きだという訳ではないがこういう何かの日の記念として買う分には悪くないと思っている


 さて問題の万里紗へのプレゼントだが、こればっかりは商品を見ないことには何も決められないから早速店に入って確認しようか


「んじゃどの店から見てみようか、どれか行きたいお店でもあるか?」


 まぁと言っても色々見ていく中で決めて行ったらいいだろう、なので絵里の行きたいところがあるのならそこに付いて行ってみよう


「んーじゃああそこに行ってみようか、なんか可愛いものが多い気がするし」

「おけ、それじゃああの店から行こうか」




「ねぇねぇこれとか結構よくない?取っ手がキャラクターになってるし大きさもいいぐらいだし」

「うーん確かに可愛いけどなぁ、なんか面白みに欠けるというか」


 それから30分ほど色々なお店を見て回ったがしかしこれといって良さそうなプレゼントは見当たらなかった、その間に絵里は気に入った小物をいくつか購入しているが俺はまだ何も買っていない状況だ


「いや面白み面白み言うけどさそんなに面白みって必要なの?」


 何を提案されてもあまり煮え切らない状態が続いている俺に少しイラっとしたのか、絵里が少し呆れたような声でそう聞いてくる


「ごめんごめん、早めに決めることにするからちょっと待って」

「いやそう言うことを言ってるんじゃなくてね……はぁ」

「どういうことだ?」


 やれやれと言ったように首を横に振りながらため息をつく絵里、それから仕方ないなとばかりに少し穏やかな声でこう言ってきた


「今千里が悩んでいるのって宝野へのプレゼントでしょ?」

「え?なんでわかったんだ」


 これは素直に驚いた、俺は絵里にここで勝ったものを誰かにあげるということすらそもそも言ってないのに、そのうえその物を上げる相手まで特定されたからだ


「いや何でって言われても流石にわかるよ、そもそも自分が欲しいものを選んでいる気がしてなかったし」

「すごいな、でもそこまではいいとしてなんで万里紗って分かったんだ?」

「それは……まぁなんとなくかな、多分そうじゃないかって思っただけ」


 何故だろう、さっきまではきはきと喋っていたのに最後だけ投げやりな感じでそっぽを向いて説明を終える絵里、その表情からは何も読み取ることはできない


 しかしそんな様子も一瞬、さっきまでの笑顔に戻った絵里はこれまたさっきと同じ調子で口を開いた


「ま、そんなこといいじゃない、とりあえず私も探してあげるから早くプレゼント選んでしまおうよ……あ、あれとかどう?」

「お、おうありがとな……あれっていうのはあのぬいぐるみか?」


 絵里がそう言って指を指したのは恐らく抱き枕として使うのであろう大きさのぬいぐるみだ、近くに行って触ってみると確かに肌触りがよく柔らかさも申し分ない

 一つ懸念があるとすれば万里紗が抱き枕を寝る時に使うのかと言うことだが、使わなかったら使わなかったでクッションとしてでも使ったらいいだろう


「ふむ、確かに結構よさげな気がするな、これにしてみるかー」

「いいと思うよほんとに、多分喜んでくれると思う」

「運俺も多分そう思うよ、ありがとうなこれにしてみるよ……これで怒られずに済みそうだ」

「え?これってそんなに重要なことだったの?ほんとにこんなんで大丈夫?」

「んー大丈夫だと思うぞ……多分、ていうかこんなんって自分で選んだのに酷いな」


 まぁ確証はないが俺の勘が大丈夫と言っている気がする、こういう時の直感は信じるに値すると知っているから問題はないだろう


それからカウンターに行きぬいぐるみの代金を支払った、流石に大きすぎて手で持って帰るのはしんどいので自分の住所を伝えて送ってもらう手続きも一緒にする



「ありがとうございました~」


 一連の手続きが終了したので店員の言葉で見送られ、絵里と一緒に店の外に出る


辺りを見回すと陽が沈んできてかなり暗くなったように感じる、時計を見ると7時前だった


「よしじゃあ良い時間だしそろそろパレードを見に行こうか」


 丁度いい頃合いだったのでそう絵里に提案する、しかし絵里からの反応が無い

 不思議に思い振り返ると店を出てすぐのところで俯いていていた


 またしてもこの光景にデジャビュを覚える俺


……あ、そうかこいつあの時校門で会ったやつか、その時もこんな風にうつむいていたなそういえば


ようやく絵里と初めて会ったことを思い出した俺だが、そのことを伝える前に絵里が突然顔を上げて真面目な顔でこう伝えてきた


「今日はもうここまでね、楽しかったわ」


どうもロースです。

お読みいただいてありがとうございます。

そろそろ一日も終盤です、絵里の思いは果たして

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