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長い一日 8

「ぜぇぜぇ、はぁ……でもなんであんたはそんなに平然としてられるのよ、なんだか私だけ慌てていてアホみたいじゃない」


 周りの目など全く気にせずひとしきり暴れた笹生は、時間のおかげかはたまた我に返ったのかそんなことを聞いてきた


 しかし折角落ち着いたところ笹生には悪いが、その質問は俺にとってはどうでもいいな


「んーだって特に取り乱すようなことでもないからな……強いて言うなら俺が笹生に何をしたのかなって思うぐらいだな」


 結局笹生が俺のことを好いてくれてるって言うのは理解できたが、それに至るまでの経緯は分かっていないのだ、だからもしかしてその内容によっては何か変わるかもしれないけど


「それは……今は言わない、というか言いたくない」

「そうなのか、まぁそれならそれで別にいいよ、無理強いすることでもないし」

「……うん、でもそれよりさ私としてはずっと疑問だったんだけど、なんで宝野はこんな状況に自分からしようと思ったのかな、どう考えても彼女にメリットがあるようには思えないんだけど」

「あーそのことね……まぁ大体わかるかな」

「え?知ってるなら教えてよ」


 まぁ笹生が疑問に思うのも仕方がないだろう、だから俺はここで少し考える、実際その理由と言うのも椎名の時と同じだろうから言っても問題は無いとは思っている、しかしまだ伝えない方がいい気もする、要は万里紗がどういうプランを想定しているのかということなのだ


「ごめん、今は教えられないかな、というか教えない方がいいと思う」


 考えた結果笹生にはまだ教えないことにした、そっちの方が万里紗の考える効果を得られると判断したからだ


「ふーん、そう……いいんだけどなんか妬けちゃうなぁ」

「妬ける?俺に?」

「水上だけじゃなくて、水上が宝野と通じ合っているっていうのがよく伝わって来たからさ二人にかな……まぁ今更引くわけにもいかないんだけど」

「まぁ笹生が引くか引かないかはまぁとりあえず置いておくけど……そうだなー万里紗とはなんやらかんやらずっといるからそう感じるんだと思うぞ、要は慣れだよ慣れ」

「絶対それだけじゃ済まないと思うけど、んじゃさ宝野の好きなところ5つぐらい上げてみてよ」

「5ってちょっと多くないか?普通こういう時多くても3個とかだろ」

「いいじゃんそれぐらいパッと出てくるでしょ」

「はいはい、じゃあちょっと待ってろ」


 そうだなあ万里紗の好きなところか……あれ?特に問題ないと思って簡単に引き受けてしまったけれどいざ考えてみると思いつかないな、良いところは幾つも出てくるけど、好きなところって難くね?


 俺がこの程度の質問で黙り込んでしまったのがよっぽど意外だったのだろう、新しいおもちゃを見つけたかのような高いテンションで話しかけてくる笹生


「え、え、ほんとに出てこないの?彼女の好きなところなのに?一つも?」

「煩い煩い、そんなことよりほら俺たちの順番になったぞ、ほら笹生早く行くぞ!!」

「うわこいつ誤魔化しやがった……て待って待って置いていかないで」


 わざと早歩きをして笹生を置いていく俺、そしてそんな俺に慌ててついてくる笹生、さっきの質問のことで追及してくるが勿論無視する


 うん、まぁそののことはゆっくり考えることにしよう、いつか出てくるだろう


しばらく粘っていたが俺が答える気が無いと分かったのだろう、しかしそれならと違うことを聞かれた


「もうそんなに無視しなくていいじゃんか……あ、そうだ今まで水上って呼んでたけど千里って呼んでもいい?」

「ん?別にいいけどいきなりどうした?」

「んーなんというかそっちの方が親しくなれそうだから?」

「そりゃ下の名前で呼ぶんだからな……んーまぁそういうことなら俺も笹生の事を下の名前で呼ぶことにするか、あ、でもごめん下の名前なんていうんだ?」

「おい……まぁうんでも考えてみたら知るわけないか、私の下の名前は絵里っていうの、今更の自己紹介になるけど笹生絵里です、はいもう忘れるなよ」

「絵里ね了解した、へぇすいませんでしたもう忘れませんってば、ていうか実際初めて知ったようなもんなんだけどな……」

「何か言った?」

「なんでもありません」


 全く油断も隙も無い、女子って大抵こういうものなのか?椎名もかなり鋭いし……これは迂闊なことを言って怒らせたりしないようにしないといけないな、何故なら今日は絵里を楽しませることが俺のやるべきことなのだろうから


 今日が終わった後どういった展開になるのかはわからないけどそれはそうなった時だ……果たしてすべてが終わった後絵里は俺たちの傍に残る選択をするだろうか、それはもう絵里に任せるしかない



 それから俺たちはいくつかのアトラクションを二人で回った、なんやらかんやら言っても俺も絵里も最初は緊張していたみたいだが少し経つと自然に会話できるようになっていた、普段のテンションで話す絵里はなかなか面白いやつだった

 いやしかしこの表現は正しくないのかもしれない、何故なら俺が面白いと感じているだけで多分笹生は世間一般で見ると「普通」の部類なのだろう、けど今まで俺が接してきた女子っていうのは万里紗を除くと椎名のような少しぶっ飛んだやつなのだ、だから絵里のような「普通」さが俺には新鮮に感じられる、と言うのが正しいのだろう


 まぁ御託はいいんだ、とりあえず絵里と過ごす時間は悪くないってことだ、そりゃさっきの四人のまま今日を過ごしていればそれは勿論面白かっただろうし後悔が無いわけではないが、それが薄れて思えるぐらいにはこの状況に満足しているということだ


 恐らく俺が楽しそうな雰囲気を出すようになったからか、絵里も自然と笑顔の回数が増えたように思う、傍から見るとまるで俺たち二人が付き合っているようにも見えるのではないだろうか




「ほら次はあれ乗りに行こうよ千里!!早く早く」

「待て待て、そんなに急がなくてもアトラクションが逃げるわけじゃないんだから、ゆっくり行こうぜ」

「駄目だよ、もう時間はそんなに無いんだし精一杯楽しまないと」

「はいはい分かったよ、全く仕方ないな」



 笑いながらも強引に俺の手を引っ張る目の前の女の子、少々疲れたのは確かだがまぁでも今日は目一杯付き合ってやると決めたのだから頑張るとしよう


どうもロースです。

お読みいただいてありがとうございます。

一言、笹生さんのビジュアルは今のところ各自で想像してもらえればと思います。

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