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長い一日 6

「行ったか」

「ん」


 香帆の言葉に同意する私


 さてこの場に残ったのは香帆と荒巻と私の三人だ、とりあえず千を笹生さんと一緒に行かせられたのは良かったが、私はこれからこの場を纏め上げないといけない

 自分が蒔いた種ではあるのでその責任と思えば仕方ないのだが、はぁ、と少しため息が漏れる


 まぁこれも千のために必要なことだ、だからまずは気になっていたことを聞いてみることにする


「荒巻」

「ん?どうした?」

「どうして千を笹生さんのところに行かすことを納得してくれたの?」

「ああそれは確かに私も気になっていた、私は理由があるからともかく、君が納得するような理由は無かったように思っているのだが」


 私は先程から荒巻の態度が気になっていた、香帆も私と同じようにそのことが気になってはいたみたいだ


 だって私の勝手な思惑でこのグループから千を離脱させようとしてたのだから、荒巻も香帆みたいに抵抗してもおかしくないと思っていた、なのに荒巻は特に何か言うこともなかったのですんなり話を進めることが出来た、こちらとしては好都合なので良かったが普通に考えると不自然である、それに今の様子を見ても先ほど起こったことを特に気にしてるようには思えないから尚更だ


 私達の質問に少し点を見上げて考える素振りを見せた後、困ったような顔をして話始めた


「んーなんでって特に理由があるわけじゃないけど……そりゃ俺だって千里がいた方がいいよあいつといると楽しいし」

「ん、それはわかるいつも楽しそうにしてる」


 でもそれなら尚更何故?


「何故だろうなー……まぁそうだな強いていうなら今回の出来事が宝野が考えたことだったからかな?」

「私?それがほんとうだったら有難いけど」

「ほんとほんと、流石にこんな時に嘘つかないよ」


 これには少し驚いた、荒巻が私のことをここまで買ってくれていたとは、でも少し違和感を感じる、違和感と言うかどこか無理やりさ?みたいなものを


 私のそんな雰囲気を察したのか、荒巻が少し慌てた声で喋りだした


「いやさ俺も途中まではなんだこの無茶苦茶な話は?って思ったよ、けど宝野が考えたことなら千里とか笹生に悪いようにはならないだろうって感じたんだよ、だから任せても大丈夫だからかなと」


 成程、しかし今のである程度理由も分かったがまだ分からない部分がある


「でもそれは私のことをそこまで信頼してる理由にはならなくない?」

「万里紗流石にその言い方はどうなんだい?」


 私の言い方が少しとげがあるように感じたのか、香帆から注意が飛んできた


 ……うん、自分が今かなりめんどくさいやつっていうのは自分で分かってる、けど何故かこれははっきりさせといたほうがいい気がしたのだ


 しかしそんな私の葛藤は気にも留めず、気に障った様子もなく荒巻が答える


「いやいや別にいいよ、確かに俺は千里じゃないから無条件で信頼できるほど宝野のことを知っているわけじゃないしな、そう思うのも無理はないと思う」


 一呼吸おいて、けど、と続けた


「けど、俺は千里のことを信用している、だったらその千里が無条件で信じている宝野を信じてもいいんじゃない?」


 少しにやっとしたしてやったりの表情で荒巻がそう言い切った



 ……少しの間静寂が場を支配したが、それを破ったのは陽気な笑い声だった


「あっはっはっは、万里紗今回は君の負けだよ、確かに荒巻の言う通りだ、水上のことを信用できると思っている荒巻が万里紗の事信用しないわけないじゃないか、いやーあまりに単純なこと過ぎて私も気が付かなかったよ」


 ……香帆と同じく私もそのことを見落としてしまっていた、言われて初めて気が付いた、なんだろう別に悪いことをしたわけではないはずなのに滅茶苦茶恥ずかしい、穴があったら入りたいとは正にこのことだ


「~~~~~っっっ」

 顔を二人から背けてこの感情が収まるのを待つしか今の私には出来ない


 しかし香帆がそんな私を見逃すはずもなく


「お、照れてる万里紗なんてなかなか見られないぞ、やったな荒巻ファインプレーだ」

「お、おおうなんか俺としてはそんな達成感はないんだけど……むしろこの後が怖くなってきたぐらいなんだが」

「気にするな気にするな、骨は拾っといてあげるから盛大に逝ってこい」

「あれ?俺死ぬの確定してるの?」


 ああもうまったくこの二人は……でも二人の会話を聞いていると平常心を取り戻していくのが分かった……うんもう大丈夫


 平常心に戻れたのであればやることは一つだ


「荒巻、明日校舎の屋上ね」

「!!?本気で虐められるやつじゃねぇかそれ!!理不尽すぎるだろーー」

「ふふっ」


 私の発言に大袈裟に反応する荒巻、その行動が滑稽で私は少し笑ってしまった



 空気が和んだことが分かり、もう大丈夫だと判断したのだろう、香帆がぱんっと手を叩いた


「さ、じゃあ纏まったところでそろそろ次のアトラクション行こうか、なんやらかんやら時間経ってしまったからこれからは駆け足で行くぞ!!」

「おー……ってジェットコースターはやめてくれよ」

「よし香帆ジェットコースター行こう、さぁ早く」

「おおおおいまださっきの根に持ってるんかよ」

「冗談、何かそんなに激しくないのに次はしよう、ご飯食べたばっかだし」

「そうだね、それなら……じゃあここに行こうか」


 次に向かうアトラクションが決まった私たちは店を出て歩みを進めることにした

 

 千は居ないけどこのメンバーはほんと面白い、私がやることは終わったしもうあと今日は楽しむだけだ




 ……少し歩いたところで荒巻が急に思い出したように声を出した


「そういえばささっき宝野が何か言って椎名は納得したみたいだけどあれなんだったんだ?椎名と同じっていうのは聞こえたんだけど意味が分からなくてさ」

「ああ、そのことか……んーと万里紗これは言ってもいいのかな?」

「香帆がいいなら」

「そう、じゃあ私は問題ないから別に言うけど」

「言うけど?」


 一呼吸おいて香帆は何でもないように答える


「昔水上に告白して振られたことだ」


「……は?」


 うーんもう一波乱ありそう

どうもロースです。

お読みいただいてありがとうございます。

万里紗が視点は一旦お休みして次は千里の方へ、笹生さんとの会話を楽しみにしておいてください

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