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長い一日 5

 俺は本気で困惑していた、見覚えのない女子からいきなり話しかけられたこともそうだし、しかも内容が突拍子もないことときたもんだ、この状況に即座に対応できる自信のあるやつがいたら手を挙げてほしい俺と今すぐに交代しよう


「何をぼさっとしてるの?私が言ったこと聞いてた?」


 ……現実逃避は許されなかった

 話しかけても俺が何も反応しなかったことに少し腹を立てた様子で目の前の女子が語気を強めながら詰め寄ってくる


「まぁまぁ少し落ち着きなよ、君が何を焦っているのかわからないけどとりあえず水上が状況を把握できずに困っているじゃないか……ええと確か名前は笹生さんだよね?」

「ええそうよ、そういうあなたは椎名さんよね、よく先生に呼び出されているのを聞くわ」

「あはははは確かにそれは私だな、まさかそんなことで有名だとはこれはこれは」


 困っている俺を見かねたのか椎名が仲裁に入ってくれた

 いやそれはありがたいんだけどさちょっと待てよ、お前が有名な理由ってそんな笑い事じゃないと思うぞ、もうちょい恥ずかしいと思えや


 ……まぁ今更言っても無駄なのはよく分かってる、状況が状況だしここはおとなしく椎名に味方に付いてもらっておこう


 さて、その椎名によるとその女子は笹生という名前みたいだ、でも笹生ねぇ


 ……うーん、なんとなく聞き覚えはあるけど今まで話した覚えもないし関わった記憶もないな、でも相手は俺のことを知っているようだし、もしかしてどこかしらで接点があったのを俺が忘れているだけなのか?


「まぁ私のことは今はどうでもいいんだけど、笹生()()はなんでいきなり水上に付き合えなんか言ったんだ?それに水上の様子を見るにどうも君のことを覚えていないようだが」


 ……その言葉を聞いて少し寒気がした、まだ俺は何も口に出していないのに椎名は俺が笹生さんのことを思い出せてないと気付いたからだ、エスパーか?こいつ


「……え?それはほんと?私のこと覚えてないの?」


 流石に俺が覚えてないというのは予想外だったのか、少しうろたえた様子で俺に尋ねてくる笹生さん、しかし申し訳ないがその通りなのだ


「……悪い、ほんとに覚えてない」

「あーほんとに覚えてないのね……まぁそれならそれで好都合かもしれないけど」


 俺の謝罪の言葉を受けて、何かぶつぶつ独り言を言う笹生さん、そんなに怒らしてしまったか?


「ま、まぁいいわとりあえず私に付き合ってよ、いいでしょ?」


 何故かはわからないが開き直ったようでばっと顔上げる笹生さん、そして俺に手を伸ばしながらまた最初の言葉を繰り返した


「悪いが笹生()()、私たちは見ての通りこうやってグループで行動してるんだ、その中から水上だけを引き抜こうっていうのは勝手が過ぎるんじゃないか?万里紗も荒巻もそう思うだろう」


 しかし勿論のことながら笹生の願いは椎名には納得しがたい言葉だったようだ、それは俺も同じような気持ちだ、誰だかもよく分からないこいつに何故今から付き合わないといけないのかという気持ちが芽生えている


 泰輔も椎名の言葉に同意するように頷いている


 俺らの拒絶に近い行動や言動を受けて笹生さんは困惑した表情を見せる、その二つの目は俺らと視線を合わないように違う場所を向いている


 そして誰も何の言葉を発することなく時間が経った


 ……少し可哀そうになってきたな、でももうこれ以上何も言えることなさそうだしこの場は穏便に済ませてまた今度話をするか


 と考え、お開きとするための言葉を言おうとしたその時、ふと違和感を覚えた


 あれ?そう言えばこの会話になってから万里紗は一度も話してなくないか?皆は完全に意識の外にあるみたいだから気にしてないようだけど、よく考えてみれば万里紗はずっと俺の正面に座っているはずなのだ

 そして先ほどから謎だった全く合わない俺たちと笹生の視線、そこから考えられるのは


 ……あぁそうか笹生の視線が変な方向を向いていると思ったら万里紗の方を向いていたのか、そしてそれが今も変わってないところを見るに笹生は万里紗が反応するのを待っているわけだな


 そうと分かれば話は別だ、俺は万里紗の考えに従うために何も話さないでおこう


 その俺の考えは正解だったのだろう、程なくして万里紗が久しぶりに声を上げた


「笹生さん、その程度の思いなら諦めたら?」


 万里紗が言った言葉の真意は今のところ分からないが、やはり万里紗は笹生さんと何かしらの話をしていたのだろう、だからこそこうやって万里紗に助けを求めているのか


「……嫌だ諦めたくない、だからお願いチャンスを頂戴」


 万里紗の言葉で先ほどまで揺らいでいた何かの気持ちが固まったようだ


「そう、まぁ少しおまけだけど今は許す、頑張ってみたらいい」

「え?いいの?」

「元々そのつもりだったし、後は私に任せて」


 そう言った万里紗は俺の方を向いてこう言った


「千、笹生さんと一緒に行って」

「いいのか?」

「これがいいと判断した」

「わかった、なら後は任せた」

「ん」


 まだ仔細は分かっていないが万里紗がいいというのなら俺はそう動こう、なので早速この場から笹生を連れ出すことにする


「行くぞ笹生さん、じゃあまた後でな皆」


 展開の速さについていけてないのか、ぽかんとしている笹生の腕を取り店から出ようとする俺


 しかしそんな俺らとは違いまだ納得していないやつがいた


「ちょっとまって、まだ私は何も分かってないんだけど説明してくれるかな?」


 万里紗の言葉だけでは納得するに値するまでは至らなかったのか椎名が抗議してくる、が次の万里紗の一言で態度を一変させることになる


「香帆あなたと同じなの、分かるよね?」

「あ……そういうこと、分かった悪かったね皆、水上も行ってくれていいよ」

「まぁお前がそれでいいならいいけど……じゃあ行こうか」

「……うん」


 改めて許可を得た俺たちは二人で店の外に出ることにした

どうもロースです。

お読みいただいてありがとうございます。

一日空いてしまいました、これからは少し更新できない日があるかもしれませんができるだけ頑張りたいと思います、これからも読んでいただけると嬉しいです。

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