長い一日4
「いやー楽しかった、流石人気アトラクションだけあって結構並んだけどそれに見合うだけの面白さだったよ、ねぇ皆後でもう一回乗らない?」
ジェットコースターを乗り終えた椎名はよほど楽しかったのか、まだ興奮冷めやらぬ様子で俺たちに話しかけてくる
「ん、特にあの上に登っていく時の緊張感は凄かった」
「皆平気なの凄いな、俺は結構怖かったぞ、まだ途中からは楽しさもあったからよかったけど……二回目行くならお前らだけで行ってきてくれ俺はギブだ」
万里紗は特に苦手ではないから問題ないのは知っていたが、俺としては意外だったが泰輔は少しだけ苦手だったようで二回目は遠慮したいみたいだ
「へぇ、荒巻は絶叫系はあまり得意ではないんだ、でもそれにしては特に嫌がらずに乗ってなかった?無理してたの?
「いやー無理をしたわけではないんだけど、昔は乗った時結構怖く感じてさ、でもしばらく乗ってなかったからいけると思ったんだけどやっぱり怖いものは怖かったわごめん」
「あーそれは仕方のないことだと思うよこういうものは慣れとかでどうこうできるものじゃないし、まぁ苦手なことぐらい誰でもあるし謝ることじゃないよ」
少し申し訳なさそうにしている泰輔を椎名がフォローする、大雑把な奴だがなんだかんだ面倒見がいいやつだ
……こういうところを常に見せていればまともな奴に見えるのにな、いやギャップがあるから今そう見えてるだけなのか?
俺が椎名のことを考えているのが分かったのか万里紗が横に来てアドバイスをくれる
「香帆のことで悩んでもキリがない、だって全部考えずに行動してるから」
その言い方もどうなんだ……と思わないこともないが、確かに万里紗の言うことは当たっていると思う、実際椎名本人に意図があって発言したり行動したりしているわけではないのだからこっちが考えても無駄なのは明白だ
まぁ椎名のことはいいや、それより先に皆に伝えないといけないことがある
「おーい椎名、次のアトラクションもいいけどもう12時半だからご飯食べに行かないか?」
「え!?もうそんな時間なの?まだそんなに回ってないのに時間経つの早すぎやしない?」
俺も体感としてはあんまり経っていない気がするが実際そうなのだ、やはり平日といえども人が多いだけあって、何個かアトラクションを回っただけでもう3時間以上経ってしまってる
それに人間っていうのは不思議なもので、時間を忘れて何かをしていると空腹を感じないのだが、その集中が途切れると急に空腹を感じるようになるのだ
現に俺は今かなり空腹を感じている
「確かに言われてみればお腹が減ってきたなー……それじゃあ仕方ない先にご飯を食べるとしようか!!」
次のアトラクションに早くいきたいという思いを邪魔されたせいで、一瞬椎名の声が落ち込んだように聞こえたが、流石に空腹には勝てなかったようで直ぐに切り替えてご飯を食べる選択にしたみたいだ
さてそう決まったのなら早速移動しよう、かなり混んでるだろうしド定番にはなるがこの遊園地名物のハンバーガーショップで昼ご飯を食べるのがいいと俺は思っていた、まぁとりあえず皆の意見を確認しておくことにしようか
「昼ご飯はハンバーガーでみんないいよな?」
「いいよー」「ん」「いいぞ」
三人とも異論は無いようだ
「よしじゃあ行くか、道は……うんこっちだからついて来てくれ」
「はーいよろしく」
俺は地図を見て自分たちがいる位置と目的のハンバーガーショップがある場所を把握したので、皆を連れていくことにした
「おーい万里紗?何してるんだ早くいくぞ」
「……ん、今行く」
皆は動き出しているのに何故か万里紗は携帯を触っていて動かなかったので、不思議に思い声をかけるとすぐに万里紗は携帯を触るのをやめて、走って俺たちに合流してきた
「何か用事でもあったか?」
「いや大丈夫気にしなくていい」
何か少しだけ済ませることがあるなら待つぞと言外に言ったが、その必要はないと断られた
まぁ万里紗がいいならいいかと思い、俺は気にすることを辞めた
「もぐもぐ……うん、そういやさ、水上と荒巻ってなんでそんなに仲いいんだ?」
到着したハンバーガショップはやはりかなり混んでいたが、なんとか商品を買うことが出来更に4人分の席を確保することもできた、なのでようやく一段落が出来ハンバーガーを頬張っていたというところで椎名が急な質問をしてきた
「何でとは急にどういうことだ?」
泰輔が疑問で返す
「いや水上と万里紗とは中学生の頃から知り合いだから二人の関係性は把握し何も疑問には思わないんだけど、でも水上と荒巻って知り合ったの高校生になってからじゃん、あんまり時間経ってないのに仲良しだなーと思ってさ」
「んーなんでと言われても難しいな、何かきっかけあったかな?」
何か理由があったのかと言われても返答に困る、なんとなく波長と言うか、一緒に居て気疲れしないっていうのはあるんだけど特に何か出来事があったかと言うとそんなことなかった気がする
しかし泰輔は俺とは違い思い当ることがあったみたいだ
「あれ?千里覚えてないのか?……あ、そっかあの時千里は俺だって気付いてなかったのか」
「……あの時?なんのことだ?」
泰輔は何のことを言っているのだろうか?少し考えてみたが特に思い当たる節が無くて戸惑う
「ほうほう、何か荒巻の方は思い出があるみたいだな、しかし水上はそれを覚えてないと……因みに万里紗は何も知らないんだよね?」
「……あ、もしかしたらあのことかもしれないけど、千は荒巻の名前を言っていなかったから確証はないかも」
「???」
未だに何の事かわからないが、もしそれが本当なら俺は万里紗に話したことがある出来事のようだ、しかしそうは言ってもほとんどのことを万里紗に話しているはずだからどれか絞り切れないぞ
ひとまず泰輔に質問してみる
「因みにいつぐらいの話だ?」
「あー4月の終わりぐらいだったんじゃないか?うん確かそのぐらいで合ってる」
「4月の終わり……なら私の記憶とも一致する時期だ」
ふむ、泰輔と万里紗の意見が一致するということは俺が万里紗に話したことがあることなのだろう
……仕方ない少し本気で考えてみようか、集中して思い出そう
しかし
「水上君ちょっといいかな?私に付き合ってもらっていい?」
突然自分の名前を呼ばれたので思考が中断され思わず顔を上げた俺の目に飛び込んできたのは、どこか見覚えのある女子だった
……あれ?誰だっけか?
どうもロースです。
お読みいただいてありがとうございます。
やっと登場しました謎の女子、さてこの子は誰でしょーか()