長い一日 1
本日は皆が待ちに待っていた火曜日だ、各々の生徒がそれぞれの思いを持って今日と言う日に臨むのだろう
ある人は友達との大切な思い出作り、ある人は新たな人間関係を求めて、そしてある人は大切な人を作ろうと思っているのだろう
……まぁ最後の一つは余計としても、誰しも今日をいい日にしたいと思っていることは間違いないだろう
というわけで俺と万里紗は今日をいい日にするための初めの一歩として椎名の家に向かって歩きながら話していた
「なぁ万里紗賭けでもしてみないか?」
「賭け?」
「そう、椎名がちゃんと時間通りに起きることが出来ていて、尚且つ予定の電車に間に合うように用意を済ませているかどうかを」
因みに今の時刻は7時半を過ぎたところだ、何もなければ最寄りの駅から遊園地までは30分もあれば行けるので八時半までに駅に着いていればいい、だからこの時間に家を出ているのはほんとは早すぎるのだが、勿論この時間にした理由がある
もし俺らが椎名の家に着いた時、まだ椎名が寝坊していて寝ていたとしても、この時間ならそれから俺らが椎名を叩き起こし用意をさせ電車に間に合わせることができるからだ
だからどっちにしても俺らがいるから椎名には遅刻はさせないのだけど、ほんとに椎名が寝坊しているのかどうかちょっと予想してみたくなったから万里紗に賭けを提案してみたのだ
「いいよ、でも何を賭けるの?」
万里紗も気になっていたことなのかあっさりと賭けに乗ってきた、しかもただ予想するだけでは面白くないのか何かを実際に賭けたいようだ
いいだろう、こちらとしても確かに賭けと言ったからには緊張感が欲しいと思っていたところだ
「んーそうだな、今日の昼飯を奢る……なんてありきたりでつまらないな、何かいい案でもある?」
負けてもそんなに問題と思わないことなら賭けても面白くない、かと言ってガチすぎる罰ゲームとかをしたいわけでもない、丁度いいところを見極めるのは結構大変なのだ
万里紗が少し考える素振りを見せた後、ふと言葉を漏らした
「何でもいいから相手が気に入るだろうなって物を遊園地で購入するっていうのはどう?」
「成程な、何をプレゼントするか結構考えないといけないし、もらう方もサプライズ感があっていいかもしれないな、よしそれにするか」
「負けない」
俺も万里紗も相手がどんなものを気に入るかは知っているから、変に迷う心配はないし丁度いいぐらいの難易度だろう
罰ゲーム?の内容も決まったところで、早速椎名が起きているかそれともまだ寝ているのか考えてみることにする
如何に椎名であっても、予定の時間にはギリギリになるだろうがそれでも間に合うように用意していると思いたい……けど昨日の先生との約束の時間を平気で破っている事実もあるからなぁ、普通に寝坊している可能性も否定できない、悩ましいところだ
………………よし、決めた俺はこっちに賭ける
「万里紗どっちか決まったか?」
「ん」
もしこれで二人の答えが被っていた場合はじゃんけんになるがそうなってしまった場合は運に身を任せるしかない
せーの
「椎名は寝坊している」「香帆はちゃんと間に合う」
ほう、万里紗と俺の意見は違うようだ、俺は椎名が遅刻すると、万里紗は遅刻しないと予想した、これで賭けは成立だ
どっちにするか迷ったがあいつには今日俺たち二人で家に迎えに行くということを伝えているのだ、だからそれに甘えてまだ用意をしていないという可能性は高い、だからこそこっちを選択した
ふっふっふこれはもらっただろう
話が成立したところで丁度椎名の住むマンションに着いた、既に昨日の時点で椎名に許可をもらっているので迷わず部屋のインターフォンを押して椎名に連絡を取る、これで椎名が起きていて用意をしていたら万里紗の勝ちだが、そもそも反応しなかったら俺の勝ちだ
……ちなみに俺も聞いた時はびっくりしたのだが、椎名は高校生にしては珍しく一人暮らしをしているらしい、ただその理由が一人だと気楽だからということらしいので、まぁあいつらしいと思う
万里紗がインターフォンを押して数秒経つがまだ反応はない、それから十秒二十秒と経つがまだ反応はない
あれ?これは俺の勝ちじゃないか?と思い始めた瞬間目の前の機械から声がした
「あーごめんごめん、顔を洗っていたから出るのが遅くなったよ、ちゃんと起きてるからあれはやめてね万里紗……あ、でももう少し時間かかるから家に上がっといてよ、部屋の場所は……うんまぁ分かるでしょ、じゃあ開けるね」
椎名がそういうと目の前の自動ドアが開く、用意をしている最中なのに他人を部屋に入れていいのかと思うが気にしないでおこう、後何か気になることも言っていた気がするがそれも今は置いておく
とりあえず開いた扉を通りマンションの中に入って椎名の部屋を目指すことにしたが、それより俺は椎名がちゃんと起きていたことに衝撃を受けていた
椎名の部屋は8階にあるので、そこまで上がるためのエレベーター待っていると万里紗が勝ち誇った顔で話しかけてきた
「ほら、私の勝ち、ちゃんと香帆は起きていたでしょ」
「く、そうみたいだな、でもまさかあいつがちゃんと起きてるとはな、思っている以上にしっかりした奴だったってことか」
俺の中で椎名の評価が少し上がろうとしていたが、しかしそれを阻止するかのように万里紗が否定してきた
「いやそれは違う」
「どういうことだ?」
「私が昨日脅した」
……は?
「今日私たちが迎えに来た時寝ていたら香帆の秘密をバラすって言ったの」
「こわっ、そりゃ誰だって飛び起きるわ」
どや顔で万里紗は言っているが、それは洒落にならないだろう、何せ万里紗と椎名は中学の時から仲がいいからお互い色々なことを知っているのだ
流石に椎名のことが気の毒に思えたので、万里紗に注意しておくことにする
「あんまり椎名を虐めてやるなよ、ほどほどにな」
しかし万里紗は首を横に振ってきた
「ううん、私も出来ないことを無理にやらそうとは思わないよ、だけど香帆は出来るのにやらないだけだからこういう手段でいい」
「……そうか」
まぁ確かにそう言われると何も言えなくなる、実際こうやって椎名は起きれているんだし、それはいいとしよう
それより納得いかないのは俺だ
「でもそれせこくないか?答えを知っていたようなもんじゃないか」
その脅しのことを俺も知っていたら椎名がまだ寝ているなんて選択肢選ばなかったのに、万里紗を卑怯
と思ってもおかしくは無いだろう
しかし万里紗はそんな俺の抗議も、意に介していないようだ
何故なら
「でも今回提案してきたのは千だし、別に話を聞いた後に香帆を脅したわけでもないし、私は正々堂々と受けて立っただけ」
と言うことなのだ……くそう、そう言われればその通りだ、結局は俺の自業自得だってことになってしまう
「じゃあ千、プレゼント楽しみにしているね」
「はいはい、わかりましたよ、しっかりと選んでやるから覚悟しとけ」
「ん」
仕方がない、こうなったら万里紗が最高に喜ぶものをプレゼントしてやるとしよう
そうこうしている間に椎名の部屋についた俺たちは扉を開けて中に入ることにした
どうもロースです。
お読みいただいてありがとうございます。
あまり場面が進んでいません、なんなら時間の進み具合からすると10分ほどしか経っていません、この日が終わるときは来るのでしょうか(投稿的な意味で)
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