下校(裏)
最近私は気になっていることがある、それは前に千が話していた謎の女子のことだ
千のことを脅したと言うのはあまり感心できないけど、実際実害はないに等しい内容だったし、千も許してるみたいだから今回は不問としよう
さてその子が一体誰なのかと言うことだけど、千によると私達と同じ学年で髪は少し長めだったようだ、しかしそれだけしか情報がないので今のところ私には誰なのか検討もつかない、しかも千はその出来事を忘れているのか全く誰かを気にする素振りを見せないので反応を伺うこともできない
まぁ私がその子のことを知りたいと千に言えば勿論一緒に探してくれるけど、今回に関してはその手段は選ばない、何故ならそうしてしまっては私がその子に会う理由がなくなってしまうからだ
あくまで千にばれないようにその子と接触するのが重要だ
さてそうして密かにその女子のことを探していたのだけど、如何せん情報が無さすぎてどうしようもなかった、なのでその子が先にアクションを起こしてくれることに期待をしていたがそれも特に今まで何もなかった
優先事項は高くないとはいえ早く接触できるに越したことはないと思っていたけど、もう何もしてこないのならそいつの思いはその程度だったのかと思い、いい加減その子のことを忘れようかと思いかけていた矢先に千が気になることを私に伝えてきた
千は最近視線を感じることがあると言った、よく一緒にいる私はそんな視線は一回も感じたことがないから千の気のせいと言う可能性は勿論ある
しかしもし本当に誰かが見ているのだとすれば状況的にその子の可能性が高いのではないかと思う、というか他にも千のストーカーがいるのだとしたらそれはもう千に責任を取らせないといけなくなってくる
……どうせ千はあのいつもの天然な態度で色々な人と接しているのだろう、だから特に千のことが気になっている女子からするとそんな隙だらけの態度に付け入れると思うのだろう、千は自分がある程度モテるということを自覚するべきだ
それに千はその気になれば頭の回転を速くして必要な答えを導くことができる、勉強は私の方が出来るがここぞの時の頭の回転の速さで勝てるかと聞かれたら無理と答えるだろう、それぐらい凄いのだ
……実は私は本気で思考している時の千が好きなんだけどね、しかもそれで私のことを考えてくれるとなるとそれはもう嬉しくてたまらなくなる、あの真剣な表情はせこいと思う
閑話休題
そんな千の態度によって、その子が千のことを諦められていないのだとするならばそれは私がどうにかしないといけないと思っている、千の不始末だとしてもそれは私達二人の問題でもあるからだ
というわけで、私は今日千とは一緒に帰らず後ろで尾行することにした、千は私と遊びたそうにしていたのでそれを断るのは少し申し訳なく思ったが我慢してもらうとしよう、しかし一人だとそのまま家に帰ってしまう可能性が高い、だからまず私の代わりに荒巻を誘うように仕向けた
さてそこまではいいのだが問題は二人が遊ぶ場所だ、二人の後をつけていけば分かるんじゃないかと思うだろうがそうはいかない、もし私が二人の後ろをつけている姿をその子に目撃されてしまったら警戒されてしまって姿を見せなくなるかもしれないからだ、だから私は千が行くところを先読みして、先に気付かれない場所で待ち伏せをして観察した方がいいと判断した
さて千が荒巻と二人で遊ぶ場所として考えられる候補はカラオケかゲームセンターだろう、そのどちらなのかということだがこれは簡単だ、最近出かけた時たまたまゲームセンターのそばを通ったのだ、その時は予定があったため入らなかったが千が気になっている様子でちらちらゲームセンターを見ていたのは分かっている、だから今日行くのはゲームセンターだろう
そこまで考察を済ましたところで、丁度終礼の時間が終わったようなので委員長の号令に従って私も立ち上がり挨拶をする、頭を皆が上げた瞬間香帆が「あーーーだるいーーー誰かわってくれーー」と奇声を上げたが当然無視する、今日はいつも通りの香帆に付き合っている暇は私にはないのだ、一刻も早く先回りをしないといけないといけないから
私は誰よりも早く教室を出て校門まで行く、そしてゲームセンターがある方へ歩きを進めた
ゲームセンターへの道の途中にあるカフェに辿り着いた私は店内に入り、外からは見えにくいけど中から外の様子が確認できる窓際の席に腰かけた、それから適当にジュースを頼み千たちが来るのを待つことにした
30分ぐらい経ったころ、見覚えのある学生服を着た男子が二人こっちに歩いてくるのが見えた、顔を見ると何か面白い話をしているのか笑顔の千と荒巻だったので、その光景に自然と笑みが零れながらも私は千がゲームセンターを選ぶという自分の考えが間違ってなかったと確信した
となるとここまでは読み通りだ、後は本当に千をつけているやつがいるのかどうかだ、もしかしたら今日はいないかもしれないと言う不安と戦いつつも千達が歩いて来た道を凝視する
すると、千たちの20メートルぐらい私と同じ学生服を着ている女子生徒がいることに気が付いた
……ビンゴだ、恐らくあの子が千の言っていた子だろう、しかしまだ確証はないからもう少し観察してみよう
その子が店を通り過ぎたのを確認して、私はお会計を済まし店を出て逆にその子を尾行することにした
少しついていくとやはりゲームセンターにたどり着く、千と荒巻はもう中に入っているようだがその女の子は中に入らず入り口の前で入るかどうか悩んでいるみたいだ
これは確定と思って大丈夫だろう、千が言っていた髪が少し長いという特徴にも当てはまるし
そうと分かったので、早速だけど私はゆっくりその子の後ろに近づくと、話しかけながら肩に手を置いた
「こんにちわ笹生絵里さん、私のことは知ってるよね?少しお話ししよ?」
その時の私は非常にいい顔で笑っていたんだろうね、急に肩に手を置かれてびっくりしながら振り返った笹生さんの顔が更に怯えた表情になってしまったからね
……え?それは話しかけてきた相手が私だからじゃないかだって?……その可能性は否定できない
というわけでストーカー女こと笹生絵里を捕獲した私は、彼女に要件を告げることにした
どうもロースです。
お読みいただいてありがとうございます。
実は初めての万里紗視点です、もう少し多くしたほうがいいんですかね?考えてもわからないのでちょくちょく挟むことにします、後ほぼ会話無しですなかなかしんどいものですね
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