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インフィニット・ダンジョン・オンライン《Infinite Dungeon Online》  作者: 筋肉式卓一同+α
第二章:《終戦行動編》
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雑話:聖剣

 


「「海だーーーー!!」」


 ジュラルダラン獣王国から帰って来た翌日。


 俺たちは、使用人の三人を除く『侵犯の塔』のメンバーでシャンドラ王都から西に進んだ先にある港街モルガンナにやって来ていた。


 何故こんな所に来ているのかというと、ロマーナの研究にとある海藻を使うからという理由だ。


「なあ、本当に市販のやつじゃダメなのか?」

「ダメだ。干された物は使い物にならん。インベントリを使えば新鮮なまま持ち帰ることが出来るのだろう?」

「それはそうだが。本当に必要な物なのか?」

「わたしが不要な物を欲しがるわけないだろう」


 海藻を使うレシピとか知らないんだが?


 深くため息をつく俺の服を、三人が目を輝かせながらクイックイッと引っ張る。


「ねえ、タスク兄! 泳いでいい?」

「泳ぎたーい」

「タスク様! いいですよね?」


 カトルとポル、そして何故か居るテアだ。


 どこから聞きつけたんだよ。

 モルガンナに行くって決まったのは今朝だぞ。


「絶対に危ない事は絶対にするなよ?」

「「「はーい!」」」


 なんにせよ海には入らないといけないんだしな。


 てか、この世界でも水着とか売ってんのか? IDO時代は防具屋で売ってたはずだが。

 性能は……まあ、言うまでもないだろう。


 ん? 待てよ。

 防具と言えば。


「ゼムってさ、水着を作ったりするのか?」

「はあ? 何でワシがそんなもん作らにゃならんのじゃ」

「ですよねー」


 ゼムが水着を作ってんのを想像しただけで笑いそうだ。


「水着を作ってるのは仕立屋さんッスよ? もしかして未来じゃ水着も防具なんッスか?」

「まあ、防具屋が作ってたな」

「本当ッスか? 布一枚でどうやって守るんッスか?」

「原理はわからんが、強い水着もあったぞ」

「未来ってすごいッス……」


 嘘は言ってない。

 課金アイテムを使えば見た目は水着、性能は鎧とかに出来たからな。


「とりあえず、俺は行きたいところがあるから別行動だ」

「何処へ行くのであるか?」

「埠頭だ」

「拙僧も行こう」

「ん? みんなと一緒に海に行ってていいぞ? すぐ合流するから」

「主と行くのである」


 今日はえらく頑なだな?


「もしかして泳げないのか?」

「…………」


 なんか言えよ。


「……私も泳げない。」

「アタシも水嫌いッス」


 お前らなんで来たの?


 ……仕方ない、海組と埠頭組で別れるか。

 俺と一緒に埠頭に来る事になったのはミャオ・リヴィ・ヘスス・ヴィクトリアといつもの四人。

 海に行くことになったのがフェイ・カトル・ポル・テア・ロマーナ・ゼムの六人だ。


「ゼム、そっちは任せたぞ」

「わかったわい」



 二手に別れた後、それぞれが逆の方向へと歩き出す。


 十数分ほど歩いていると、レンガ造りの大きな建物が見えてきた。

 IDO時代と変わっていないのなら、この建物で船の手配が出来たはずだ。


 扉を開けて中へと入ると、奥には受付が並んでおり、ロビーには船を待っている間、腰掛けておくためのベンチが設置されていた。

 俺たちが受付の方へと向かうと、奥で座っていた女性が話しかけてくる。


「いらっしゃいませ。本日はどういったご用件ですか?」

「北の大陸に行きたいんだが」


 俺の言葉に受付の女性は眉を顰める。


「推薦状はお持ちですか?」

「推薦状?」

「はい。現在、北の大陸に渡るための船を私共の判断だけでは出せない決まりなんです。しかし、ギルド本部や各国の王族が発行できる推薦状を持参いただけた場合のみ、北の大陸へと船を出すことが出来ます」


 これは立ち寄って大正解だったな。


 IDO時代はクラン名声値が一定に達した状態で埠頭へ来ると、行先に北の大陸が追加されているという仕様になっていた。

 だが、この世界にはクラン名声値なんてゲームシステムによって数値化されたものなんてない。


 故に、別の何かが必要なんだろうとは思っていたが……なるほど、推薦状か。

 都合がいい。


「推薦状は一枚あれば良いのか?」

「はい。ですが、危険の多い航海をしたがる人は滅多に居ないので、推薦状があっても受けてもらえるかどうか」

「数枚あれば、引き受けてもらえるかもって事か?」

「そうとは言い切れませんが、前例はあるみたいですので可能性はあるかと」


 前例……ね。


 だが、顔を見ればわかる。

 前に渡ったってやつは戻ってこなかったんだろうな。


「そうか。ありがと。じゃあ推薦状を持ってまた来る」


 それだけ言い残して建物を後にする。 

 すると、出てすぐの所で中年の男が話しかけてきた。


「おい、小僧」

「あ? 俺か?」

「そうだ。北の大陸に行きたいとか言ってなかったか?」

「ああ」

「やめとけ。聖剣ですら帰ってこれなかった場所だぞ」


 聖剣? 何それ?


 首を傾げていると驚いたような表情で男は口を開く。


「お前、冒険者じゃないのか?」

「冒険者だが」

「それなのに聖剣を知らないのか……?」


 え? もしかして一般常識なの?


「お前らは知ってる?」

「さすがのアタシでも知ってるッスよ」

「……私も知ってる。」

「拙僧も聞いた事はある」

「存じ上げませんわ」


 お、仲間がいた。

 だけど、ヴィクトリア以外は知ってるのか。


「誰なの? ソレ」

「誰っていうか、クラン名が聖剣なんッスよ。数十年前までは聖剣以上のクランはないって言われてたくらい有名だったらしいッスね」

「へえ」

「ま、もう解散してるッスけどね。主要メンバーのほとんどが北の大陸に渡って、戻ってこなかったらしいッス」


 なるほど。

 それが受付の女性が言っていた前例かな。


「その子の言う通りだ。クランマスターの女は異常とも言えるほど強かった。それでも戻ってこなかったんだ」

「えらく詳しいんだな。ファンか?」

「違う! 当時は俺も聖剣のクランメンバーだったんだ。だけど、マスターたちが帰ってこなかったことで聖剣は解散しちまった。それでも俺は、いつか帰ってくるんじゃないかって思って、ほぼ毎日ここに来てたんだ。そしたら北の大陸に行きたいっていうお前たちの声が聞こえたから声をかけたんだ」

「なるほどな」


 クランマスターがどんだけ強かったのかは知らんが、一人が強いだけじゃダメだろ。

 未開拓地は上位職以上、それも高レベルのパーティじゃないと生き残れない。


 IDO時代には上位職と下位職のパーティで未開拓地に突っ込んでいく猛者たちも居たが、生き残れた数は相当少なかった。


「だから、もうあんな大陸には近付こうとも思わない方がいい。人の身でどうこうできる場所じゃないんだ」

「ご忠告どうも」

「気にするな。命は無駄にするもんじゃないぞ」


 そう言って男は手を挙げて、建物の中へと入っていく。


 俺もゼムたちと合流するために海沿いを歩きだした。



 ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~



 ――北の大陸、未開拓地内部。


 日の光も差し込まないほど木々が茂る中で動く、巨大な影と小さな影があった。


「ね、パパ」

「何ダ?」

「ママって、強い、だったの?」

「ンー。ソウダナ。人間ノ中デハ強カッタンジャナイカ?」

「そか! それなら俺様、強いなれるだよね?」

「マタ言葉ガ変ダゾ」

「んー! 言葉って難しいだね」

「ユックリ覚エテイケバ良イ」

「そうする! 覚えるしたら、ママ、喜ぶくれるかな?」

「ソウダナ。キット喜ブ」


 巨大な影に小さな影はよじ登る。


「ママ、俺様言葉、覚える。早く喋るしたい」

「“()()()()()”ハ、眠ッテル。今ハ、喋レナイ」

「そか! ならパパたくさん喋るする」

「良イゾ」



 真っ暗闇の中、二人分の話し声だけが響いていた。



読んで頂き誠にありがとうございますorz


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毎日一話ずつですが更新します!

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