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インフィニット・ダンジョン・オンライン《Infinite Dungeon Online》  作者: 筋肉式卓一同+α
第二章:《終戦行動編》
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番外編:ハロウィン【イラスト有】

挿絵(By みてみん)


ハッピーハロウィン!


 


 朝、目が覚めると窓の外は暗い闇に包まれていた。


 空に太陽は昇っておらず、星の無い空では紅い月だけが不気味に輝いている。


 そうか。

 今日は“ハロウィン”か。

 一層、騒がしくなりそうだな。


 そんなことを思いながら朝食を摂ろうと一階のダイニングへ降り、いつもの椅子に腰かける。

 するとフェイ・カトル・ポルの三人がトコトコと小走りで近付いてきた。


「タスクサン、おはようございマス」

「おはよー」

「おはよ!」

「ん。おはよ」

「今日の修練は……どうしマスか?」


 三人はどこかしょんぼりとしている。

 てっきり「トリック・オア・トリート!」とか言って、お菓子を強請ってくると思っていたんだが。


「普段通りやるぞ?」

「はあ!? 今日は“暗黒日”じゃぞ!?」


 俺の言葉にゼムが横から口を出す。


「暗黒日? 何だソレ?」

「知らんのか? 年に一度、太陽の代わりに紅い月が昇る日じゃ」

「それだけじゃなくって、不死種の魔物たちが狂暴化して家の外に出ている人たちを襲うんだよ!?」


 なるほどね。

 この世界に“ハロウィン”という文化は無いのか。

 ……にしても、不死種が狂暴化だと? アホか。


「もしかして、みんなも同じ認識なのか?」

「そうッスね」

「……私も。」

「拙僧もである」

「私もですわ」

「わたしもそう聞いた。信じてはいないがな」


 ……マジかよ。

 他のご家庭ならともかく、我が家だけはその都市伝説みたいな話を絶対に信じちゃダメだろ。


「不死種の魔物が狂暴化するって聞いてるんだよな?」


 全員が頷く。


 それを見た俺はスッと片手を挙げ、部屋の隅を指さす。

 全員の視線が指をさした方向に向き、そこにはバトラとキラが立っていた。


「私共、思念体は不死種の魔物でございますよ」

『あっ』

「え? じゃあ、嘘なの?」

「そうだ。今日はただのハロウィンだぞ」

「はろうぃん? ってなにー?」

「不死種の魔物に仮装してパーティーを楽しむ行事だ」

「なんで仮装するのー?」

「詳しくは知らんが、ハロウィンの日には悪霊がやってきて悪戯をするから、不死種みたいな恐ろしい見た目の魔物に仮装して、悪霊を怖がらせて追い払うためらしいぞ」

「じゃあ、俺たちもやろーよ! 仮装パーティー!」

「やりたーい」

「じゃが、どうするんじゃ? 仮装と言ってもそんな装備は無いじゃろ?」


 ゼムの言葉を聞いたカトルとポルは強請るような表情でチラッと俺の顔を一瞥する。


「何とか……ならないかな?」

「タスク兄。おねがーい」


 うん。

 卑怯。


 俺は全員の前に一巻の転移スクロールを置く。


「なんじゃ、遠出する必要があるのか?」

「ああ」

「俺たちも行っていいの!?」

「仮装したいんだろ?」

「「やったーーー!」」


 朝食を摂り終わった後、早速出かけることにした。 


 行先は――『寂滅(じゃくめつ)南瓜(かぼちゃ)』。

 IDO時代からだが、10月31日限定のダンジョンだ。


「でっかーい」


 転移してすぐ視界に入ったのは、一軒家ほどの大きさの巨大な南瓜。

 三角形にくりぬかれた目と鼻、そして笑っているように大きくくりぬかれた口からは光が漏れ出している。


 『寂滅(じゃくめつ)南瓜(かぼちゃ)』は『幻惑の花畑』と同じフィールド型ダンジョンで、大きな口の中に入るとダンジョン内部に飛ばされる仕様となっている。


「それじゃあ、行くか」


 全員が南瓜の大きな口に入ると、一瞬のうちに光に包まれ、視界が切り替わる。

 巨大な南瓜の内部に入ったはずのソコは外だった。


 空には先ほどよりも近く感じる程の大きな紅い月が不気味に輝いており、地面は耕された畑の様に柔らかく、体重のみで足が土に埋まる感覚がある。

 そして、何より目につくのは無数の墓石。

 石で作られた十字架が土に突き刺さっているのだ。


「なんか不気味な場所ッスね」

「……だね。少し怖―――」

『ヨホホホホホホホホホホ~』


 話していたミャオとリヴィの間に突如として“ソイツ”は現れた。


 ダンジョンの外装と同じ頭部に黒いマント、袖からは白い手袋が顔を出している。

 その人物? は頭の中に直接響いてくるような声で笑い、顔を左右に振りながらミャオとリヴィの顔を交互に見ていた。


「うわッ! なんッスか!? こいつ!」

「……ッ!?」


 声を上げながら咄嗟に距離をとり、俺を除く全員が戦闘態勢をとる。


『ヨホ。良い反応をありがとうございます。驚かした甲斐がありました。私はダンジョン案内人の“ジャック”、と申しますヨホホ~』

「ジャック。早速で悪いが、お前は()()()()()()は出来るのか?」

『ヨホッ? その口ぶりからして初めてのお客様ではないようですね? もちろん。出来ますヨホホ~』


 よし。

 この世界でも設定が生きてるようで良かった。


 というのもIDO時代、初心者から廃人までイベントを楽しめるようにと、このハロウィン限定ダンジョンは難易度が変更出来る仕様となっていた。

 その難易度設定を変えてくれるのがこの“案内人ジャック”という訳だ。


 正直、ドキドキしていたが居てくれて安心した。

 居なかったら難易度が固定されるって事だしな。


「幾つまで設定できる?」

『ヨホッ。お望みとあらば()()()でも出来ますヨホホ~』


 出来るなら難易度十等級に挑みたいんだがな。

 なんせこのダンジョンは、難易度によってレアアイテムのドロップ率が変わる。

 だが、レベルを始め色々なものが足りていない。

 できるだけ高い難易度で行くか。


「それなら難易度五等級で頼む」

『ヨホホ~。畏まりました。ではでは、お楽しみください。ハッピ~~ハロウィ~~ン』


 掛け声と共にジャックの姿がフッと消えると、ボコボコと音を立て地面から無数の南瓜が生えてくる。

 そのどれもには邪悪な表情の彫刻が施されており、フワフワと宙に浮き上がる。


 胴体の付いていない南瓜の魔物『魔南瓜(デビルパンプキン)』だ。


「フェイ!」

「ハイッ!」

「チャレンジ――」

「ナイト――」

「「ハウル!!」」


 俺が前方、フェイが後方でスキルを発動させると、フワフワと浮いた南瓜たちは俺とフェイを睨み、凄い勢いで突進してくる。


「カトル!」

「任せて!」


 カトルが大きく息を吸い込み、大声を上げる。


「タスク兄、前左右! フェイは後方のみカバー! ミャオ姉、ヴィク姉、ヘス兄、リヴィ姉はタスク兄に向かって来る敵の殲滅をお願い! ゼム爺、ロマーナ姉はフェイの援護! ポルはデスビィ呼んで!」


 カトルの掛け声で全員が動き出す。

 すると全員の体が淡く光りだし、バフが掛かった。


「なんッスか!?」

「……嘘。」

「凄まじいですわね」


 そうか。

 ミャオ・リヴィ・ヴィクトリアの三人はカトルの『コマンダーバフ』を知らなかったっけな。


「……もしかして。……私、いらない?」

「リヴィのバフは<魔法使い>ツリーで、カトルの強化は<戦士>ツリーとバフの系統が違う。重複するからバフを掛けてくれ」

「……わかった。」

「それではカトル様のバフと、私の『ステージ』は重複致しませんの?」

「そうなるな」

「残念ですわ!」


 不服そうに浮いている南瓜を殴り落とすヴィクトリア。

 その後ろからはミャオが一匹一匹的確に『魔南瓜(デビルパンプキン)』を矢で撃ち落としていた。


「いつもより体が軽いッス!」

「だろうな」

「これならまだ上の難易度でも余裕そうッスね」

「今はいいが、この状態に慣れるなよ。本来のダンジョンは五人で一つのパーティだ。同じダンジョン内にクランメンバー全員で侵入出来てもボス部屋だけは一パーティしか入れないようになっているからな」

「それなら、今もやめた方がいいんじゃないッスか?」

「大丈夫だ。このダンジョン内にボス部屋は無いからな」

「そうなんッスか?」


 そう、このダンジョンにはボス部屋は存在せず、もちろんボスも存在していない。


 ではどうやってクリアするのか。

 それは“時間”だ。


 無限に湧き続ける『魔南瓜(デビルパンプキン)』を制限時間内にひたすら狩り続けるという、いわば南瓜の収穫祭でもあるのだ。



 そして……戦い始めて三十分程が経った。

 二パーティ、十人がかりという事もあり一切苦戦することはなく順調に『魔南瓜(デビルパンプキン)』を倒していた。

 すると、徐々に『魔南瓜(デビルパンプキン)』の生成速度が弱まってくるのがわかる。

 

「ラストッ!」


 俺が『シールドバッシュ』で『魔南瓜(デビルパンプキン)』の突撃をパリィする。


「了解ですわ!」

「ラストはアタシが貰うッス!」


 ヴィクトリアの蹴りとミャオの矢が同時に『魔南瓜(デビルパンプキン)』を砕く。

 最後の一匹が粒子となって消えていくと同時に魔方陣が現れた。


「お疲れ」

「お疲れさん。久々に体を動かしたわい。明日は筋肉痛じゃな」

「ゆっくり休んどけよ」

「わかっとるわい。ところでタスク、これはなんじゃ?」

「ん? カボチャだな」

「そんな事は見ればわかるわい!! ワシはこの()の事を聞いとるんじゃ! もしかしなくても確定ドロップじゃろ!?」

「おう! 軽く五百個以上あるな。ハハハ」


 今、俺たちの視界に映る地面のほとんどはオレンジ色に染まっていた。


 もちろん、全て新鮮な生のカボチャだ。

 その光景を見たロマーナはため息を吐きながら愚痴をこぼす。


「もしかして、このダンジョンはただのカボチャしかドロップしないとか言わないよな……? わたしがキミたちについて来たのは一年に一度のダンジョンならば珍しい研究材料が手に入ると思ってついて来たんだぞ! それがただのカボチャだと……わたしは帰――」

「あれ? なんかカボチャ以外に落ちてるよ?」

「見せたまえ」


 山のようなカボチャをかき分けていたカトルが何かを見つけると、物凄い速さでロマーナが近付く。

 カトルが手に持っていたのは小さな茶色の宝箱だった。


「お、銅箱か」

「どーばこ?」

「一応、レアドロップ品だ。他に金箱と銀箱があるんだが、銅箱は一番価値が低い。だが、それでも中身はレア装備品だ。開けてみたらどうだ?」

「いいのー?」

「ん。いいぞ」


 ポルが箱を開けようとすると、ロマーナが全力でそれを制止した。


「待て! どういう原理でそんな小さな箱の中に装備品が入っているんだ!? わたしに調べさせろ!!」

「お前、自分で探せよ」

「あんなカボチャの山の中からこんな小さな物を見つけるのは面倒く――」

「こっちにもあったッスよー!」

「寄越したまえ」


 話の途中だったにも拘らず、ミャオの言葉を聞いたロマーナは、一目散に駆けて行った。


「じゃー、あけるね?」


 俺が頷くのを見たポルが宝箱を開くと、中から人の頭部より少し大きな丸い物体がゴトリと落ちる。


 ――“カボチャ”だ。


「また、かぼちゃー?」

「ハズレって事?」

「違うぞ。良く見てみろ」


 カトルが地面に落ちたカボチャ? を拾い上げると目・鼻・口・首の部分に穴が開いており、被れるようになっていた。


「カボチャの帽子?」

「『パンプキンヘッド』って装備だ。レア装備の中では、まあ良い方だな」

「そうなんだー!」

「タスク兄、金と銀に入ってる物は同じなの?」

「いや、違うぞ。金の箱にはウルトラレア装備が、銀の箱にはスーパーレア装備が、銅の箱にはレア装備がそれぞれ入ってる」


 そう言うとカトルとポルはキラッキラと目を輝かせる。


「金色にはどんな装備が入ってるの!?」

「ハロウィンドレスが男性用と女性用で二種類だな」


 刹那、背後から俺の肩を何者かが力強く掴む。


 後ろを振り向くと、そこにはニコニコ笑顔のヴィクトリア立っていた。


「タスク様? 今し方“ドレス”と聞こえたのですが、詳細を教えて頂いても宜しいですの?」

「ん? 女性用は黒のロングドレスだったはずだ――がッ!?」


 え? 何? 力、強ッ! 笑顔、怖ッ!


「私、最近ドレスを新調しようと考えていましたの」

「うん」

「私、ドレスを新調しようと考えていましたの」

「うん?」

「感謝致しますわ」

「…………」

「か・ん・しゃ・い・た・し・ま・す・わ!」


 わかっている。

 ドレスが欲しいんだろう。

 レアアイテムが欲しい気持ちは痛いほどわかる。

 だが、それは地獄の始まりを意味するんだ。


 うーん……覚悟を決めるか。


 案の定と言うべきか、その後、俺たちは地獄を見た。

 只でさえドロップ率の低い金箱。

 それをドロップするまで周回する事となった。


「や、やっと……出たッス……ウッ」

「……もう……無理。」

「やっと……終わった……」

「やりマシたね……」


 ミャオはその場に倒れ伏し、フェイとカトルは大の字で寝転がっている。

 リヴィは膝を付いて座りこみ、普段顔色一つ変えないヘススですら座りこんでいた。

 ポル、ゼム、ロマーナに関しては既にダウンし、ダンジョン内にすら入ってきていない。

 そんな中、しっかりと両手でドレスを広げ、満足そうに微笑んでいるヴィクトリアの姿があった。


「よかったな」

「ええ。ありがとうございます。大事に使わせて頂きますわ」

「そうしてくれ」


 かくいう俺もさすがにグロッキー寸前だったので、少し休憩をしてから屋敷に帰る事になった。


 因みに入手した装備品は九種類。


 ・金箱:ハロウィンドレス~男性用~

 ・金箱:ハロウィンドレス~女性用~

 ・銀箱:ハロウィン衣装~吸血鬼~

 ・銀箱:ハロウィン衣装~キョンシー~

 ・銀箱:ハロウィン衣装~人狼~×2個

 ・銀箱:ハロウィン衣装~神父~

 ・銅箱:パンプキンヘッド×複数個

 ・銅箱:ミイラの包帯×複数個

 ・銅箱:フランケンシュタインのボルト×複数個

 

 となっている。


 これらの装備は高難易度ダンジョンで通用するほど強い装備ではない。

 あくまでイベント用の見た目重視装備である。

 だが、イベント事を愉しむためのダンジョン周回もたまにはいいだろう。



 屋敷に戻ると、玄関ホールでアンとキラが出迎えてくれた。


「「おかえりなさい!」」

「ただいま」

「ささっ、皆様こちらへっ!」

「待ってたんですよぉ」


 アンとキラに連れられ、全員がダイニングに入るとテーブルの上には豪華な食事が用意されていた。

 

「どうしたの? これ」

「バトラさんから仮装パーティーをすると聞いたので用意してみましたっ!」

「一人で?」

「私も手伝いましたよぉ。疲れて帰ってくると思ったのでぇ」

「そうか。ありがとな、二人共」


 アンとキラの頭を撫でていると、あることを思い出した。


「あ、そうだ。アン」

「はいっ?」

「新鮮なカボチャが一万個以上あるんだが、どうしようか?」

「一万……個?」

「うん」

「これから毎日カボチャ料理ですねっ!」

「だよなあ……」



 こうして我が家の料理はしばらくカボチャ料理になった。



いつも読んで頂き、誠にありがとうございます♪


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毎日一話ずつですが、頑張って更新します!

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