80話:骨休め(上)
ロマーナが加入した次の日。
俺は冒険者ギルドへと足を運ぶと、フランカがすっ飛んできた。
「タスクさあん!」
「おはよ」
「おはようございます! ギルド本部から水晶板は届きましたか?」
「ああ。俺が留守にしている間に届いたらしい」
水晶板とはギルドにある物と同じ魔道具で、どういう原理かはわからないが依頼の送受信やパーティを組んだりできる代物だ。
クランを設立し審査に通れば、ギルド本部から管理職員と水晶板が送られてくる。
だが、水晶板の管理はバトラに一任したので職員にはお帰り頂いた。
「タスクさんたちがギルドに顔を出す回数が減ると思うと悲しくなっちゃいます」
「それは大丈夫だ。魔石は売りにくる」
「こまめにお願いしますね?」
「ん。善処する」
ジト目で俺を見てくるフランカ。
ごほんと一度咳払いをすると、いつもの笑顔に戻った。
「それで、今日はどういったご用件ですか?」
「ああ、調薬師が新しく加入したから募集用紙から消しといてくれない?」
「見つかったんですか! 良かったですね!」
フランカは自分の事のように喜んでくれる。
この世界に来てからというもの、この子にはお世話になりっぱなしだな。
今度、何か持ってくるかな。
そんなことを思いながら、フランカに別れを告げギルドを後にした。
数十分歩いたところで、次の目的地に到着する。
「止まれ。何の用だ」
「『侵犯の塔』のタスクだ。国王に手紙を届けに来た」
そう、今居る場所は王城の門の前。
俺が二枚の手紙を門番に渡すと、血相を変えて王城の中へと入っていった。
よし、面倒事になる前に帰ろう。
また、数十分ほど歩く。
市場や商人ギルドなど様々な場所を梯子して屋敷に帰り着くころには夕方になっていた。
「ただいま」
「おかえり」
「タスク様! おかえりなさい!」
どうやら俺は家を間違えたようだ。
無精髭の生えたイカす男と青いリボンを付けた金髪少女は、俺の屋敷には住んでいない。
開いた扉を閉めようとすると、ガシリと腕を掴まれた。
「逃がさん。どういうことか説明してほしいのだ」
「何故、国王とテアがこんな所にいらっしゃるので?」
「あんな手紙を置いて行ったら誰でも来るのだ!!」
ですよねー。
今朝、門番に渡した二枚の手紙。
差出人が、ギュレーン魔帝国のアザレア皇帝と、ベルアナ魔帝国のグレミー皇帝なのだ。
「とりあえず、中で話されてはいかがですか?」
「お主を待っとったのだ! 早く入らぬか!」
国王とテアに連れられ屋敷に入る。
これじゃあ、どちらが家主かわからない。
二人と共に客間へ入ると、既にバトラが紅茶を淹れていた。
「どういうことか話を聞こうか?」
国王はソファに座ると同時に問いかけてくる。
「手紙に書いてあったと思いますが?」
「読んだから大体の事情は把握しているのだ」
「でしたら、何故ウチに来たんです?」
「……聖国についてなのだ。何か証拠があるのか?」
「今はありません。ウチのミャオが潜入した際、殺されかけたくらいです」
「なッ!?」
テアが驚いた表情で勢いよく立ち上がる。
「ミャオ様が!? 信じられません! 先ほどお会いしましたが元気そうでした!」
「もう治ったからな。だが、事実だぞ」
下を向き顔を曇らせるテア。
国王は少し額に青筋を立てていた。
ん? キレてる?
「で? ミャオは何を見たのだ?」
「それは本人に聞いた方がいいかと」
結局のところ俺もザックリとしか聞いていない。
俺が一瞥した頃には既にバトラは居らず、部屋にノックが響く。
「失礼致します」
「失礼するッス」
さすがバトラ。
行動が早すぎる。
でも、いつ出て行った?
その後、入って来たミャオにレヴェリア聖国であった事を細かく説明してもらった。
話の途中に出てきた白いウサギと赤いウサギというのは恐らく『怒狂兎』の事だろう。
『怒狂兎』とはフィールド上の魔物で、自身のHPを大幅に削り、ステータスを上昇させるというスキルを持っていた筈だ。
普段は温厚で人懐っこいという設定だったが、住処のニンジンを盗んだり、群れの一匹に攻撃を加えると群れ全体が敵対し全員ブチギレる。
ブチギレ状態の『怒狂兎』の強さは難易度四等級くらいだったはず。
そんな群れを簡単に倒してしまうほど、聖国は戦力を持ってるって事だな。
『怒狂兎』を皆殺しにして男神に捧げるってどんな宗教だ。
ヤバすぎるだろ。
ミャオの話を聞いていた国王とテアは顔面蒼白で沈黙していた。
「――以上っス」
「ん。良い情報だった。ありがとな」
「それでなんッスけど、あの、タスクさん?」
「ん? なんか欲しいのか?」
「違うッスよ!! もういいッス! 失礼するッス!」
ぷりぷりと怒りながらミャオが客間を出ていく。
国王の前だというのに慣れたなあ。
「タスク。お主なら、ミャオに勝ったというフードの男とやらには勝てるのか?」
「え、余裕だと思いますけど」
「「え?」」
フフッ。
親子で全く同じ顔はやめてくれ。
「それは、お主がミャオに余裕で勝てると言っておるのと同じ事なのだぞ?」
「ええ。まあ。今は、俺対俺以外の四人で戦っても負けないと思いますよ」
絶句する国王とテア。
二人は知らないが、俺が今まで培ってきたPVPの経験は四人とは桁が違う。
この先、四人がもっと経験を積めば間違いなく勝てなくなるだろうが、負けない方法はいくらでもあるのだ。
「……そうか。では、我もアザレア殿とグレミー殿に助力するのだ」
「ありがとうございます」
「ところで、お主ら『侵犯の塔』に依頼を出したいのだ」
「予想はしてましたから受けますよ。その時の護衛ですよね?」
「その通りなのだ」
こうして俺は国王の依頼をまた受ける事になった。
だが、今回ばかりは仕方がないと割り切ることにしよう。
話を終えた国王とテアは豪華な馬車に乗り込むと帰っていった。
さて、……意を決してダイニングの扉を開く。
すると、アンとキラが俺を一瞥すると視線を逸らす。
「ただいま」
「「……」」
無視……だと? 心にくるものがあるな。
昨日、改築すると口にしてからというもの、二人はこの調子なのだ。
気持ちはわからんでもないが、部屋数が足りないのはどうしようもない。
うんうんと悩んでいると、二人は吹き出した。
「あははっ! タスク様の焦った顔を初めてみたかもしれないですっ!」
「は? どゆこと?」
「私たちはもう怒ってないって事ですよぉ。最初は確かに嫌だったですけどぉ、少し思いつきましてぇ」
「思いついた?」
「はいっ! 実はこのお屋敷には地下があるんですっ! そんなに広くはないですけどっ」
え? 初耳なんだが。
「どこに地下があるんだ?見た事ないが」
「トイレと洗面所の間ですぅ」
「あそこは鍵を元主が持って行ったから開かなくなったって言ってなかったか?」
以前、屋敷を見て回っていた時にバトラに聞いた。
「はいっ。ですけど、改築するくらいなら扉を壊した方がいいかなーと思いましてっ」
「それじゃあ、ダメですかぁ?」
うーむ。
地下の広さにもよるなあ。
それで解決するならいいんだが。
出来る限り、この子達の意見を尊重してやりたい。
「わかった。それじゃあ一回、見てみようか」
「「はいっ」」
ヴィクトリア居ないし、誰に破壊してもらおう。
無難にミャオ辺りで良いかな。
「ミャオ、ちょっといいか?」
「なんッスか?」
「鍵を撃ち抜いて欲しいんだけど」
「なんでッスか!?」
「鍵がないから?」
「開けたら良いじゃないッスか」
「だから、鍵が無いんだって」
「……アタシ、元盗賊ッスよ?」
あっ。
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