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インフィニット・ダンジョン・オンライン《Infinite Dungeon Online》  作者: 筋肉式卓一同+α
第一章:《登場人物編》
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4話:冒険者ギルド

 


 カウンターに装備の料金を置いた時、ゼムが口を開く。


「金は要らん」

「は? だが――」

()()なんじゃろ?」


 俺の言葉を遮り、ニカッと笑いながら言う。

 ……そう言われちゃ断れないな。


「そうだな。なら、ありがたく貰っとくよ」


 装備を手に取り、インベントリに仕舞う。


「お前さん、インベントリ持ちか!!」


 驚いた表情で声を荒げるゼムは、魔鉄製の胸当てを装備しながら、驚いたような表情を浮かべていた。


「そうだけど、珍しいのか?」

「珍しいなんてもんじゃないわい。持っとる奴は、大きな商会に大金を積まれて引っ張られるから滅多に居らん。面倒事に巻き込まれたくないなら、人前では使わんことじゃな」

「ご忠告どうも。面倒事は御免だ」



 そうこう話していると、ゼムが武器や防具を装備し終わったので、俺たちは店を出て冒険者(シーカー)ギルドへ向かう。


 その道中で俺は気付いた。

 というか、気付かされたのだ。

 まだ服を着ていないという事に。


 やらかした。

 視線が痛い。

 ゼム、このやろう。

 教えてくれても良かっただろ!


 俺は何故、最初に服屋ではなく鍛冶屋に行ってしまったのかというと、IDO時代の服とは防具であり、防具が服だったのだ。


 この世界での防具と服がセットな訳がなかった。


 このままではマズいと思った俺は、冒険者(シーカー)ギルドへ向かう途中の手頃な服屋に入り、数着の衣類を買った後、一着をその場で着る事にした。

 もちろん、店内に入った俺がガン見される事になったのは言うまでもないだろう。


 服屋を後にした俺たちは大通りに出て、しばらく歩いていると、剣と杖が交差している絵の描かれた看板がぶら下がった石造りの大きな建物が見えてきた。

 建物の入口である両開きの扉は開け放たれており、昼間だというのに中からはワイワイと喧騒が聞こえてくる。

 中へと入った俺は、再度感動を覚えた。


 王都と同じ、IDO時代と全く変わらない風景。


 入口から見て正面の奥に受付嬢の居るカウンターがあり、そこには受付嬢が三人立っている。

 右手には依頼などが張り出された木製ボードが立ち並んでおり、左手には複数の丸テーブル、それを囲むように複数の椅子が並べられていた。


 そこでは、昼間だというのに冒険者(シーカー)たちが大股を広げて座り、大きな笑い声を上げながら酒を呷っている。

 入ってきた俺たちをチラッと一瞥はするが、ベタな展開、つまるところの絡んでくるような輩は居ないようだ。


 俺は冒険者(シーカー)ギルドで情報収集をする予定だったのだが、ゼムから聞いた話だけで十分だったので、まっすぐと受付へと向かい、早めに要件を済ませることにした。


 要件は、二つ。


「こんにちは! 冒険者ギルドへ、ようこそ!」

「ギルドの登録が二人分とパーティメンバーの募集をしたいんだけど」

「それでは、こちらのご記入をお願いします!」


 元気の良い赤髪ポニーテールの受付嬢は笑顔で三枚の紙と二本の羽ペンを差し出してきた。


 三枚の内、二枚は俺とゼムのギルドの登録用紙。

 残りの一枚はパーティメンバーの募集用紙だ。


 先にギルドの登録用紙に名前と職業を記入し、受付嬢に渡す。


「しゅごしゃ? と鍛冶師(スミス)……ですか」

守護者(ガーディアン)だ。問題あるのか?」

「い、いえ! 大丈夫です!」


 登録用紙を受け取った受付嬢は水晶板に手のひらほどの大きさのカードを二枚載せ操作した後、カードを俺とゼムに手渡してくる。


「カードに魔力を籠めてください!」


 は? 魔力を籠める? どうやんの?


 俺はゼムの方を見るとカードが薄っすらと発光し、文字が浮き出てきていた。


 うーん……見てもわからん。


 試しに目を閉じ、体内のMP(マジック・ポイント)を適当に操作してみる。

 そして、ゆっくりと片目を開けると俺の持っていたカードも薄っすらと発光し、文字が浮き出てきていた。


 なんか出来たわ。


 不思議に思いながらも俺は出来上がったカードを一度受付嬢に渡す。

 すると、受付嬢は「パーティは組まれますか?」と聞いてきたので、お願いしておいた。

 受付嬢はカードを置いた水晶版を操作し、俺たちにカードを渡しながら口を開く。


「依頼受注の際と完了の際にギルドカードの提示をお願いしますね!」


 どうやら、今のカードはギルドカードだったようだ。


 ギルドカードとは、冒険者(シーカー)の証であり、身分証にもなる物で、名前はもちろん職業やレベルなどが記載されている。

 その他にも用途があり、どういう原理かはわからないが専用の水晶版を使ってパーティ登録や依頼の受注、完了した依頼の記録などができる魔道具らしい。


「わかった。メンバー募集の記入は飯を食べた後でもいいか? 昨日から何も食べてないんだ」

「はい! 大丈夫ですよ!」


 この世界の料理を知らない俺はお金を幾らか渡し、ゼムに注文を任せて空いていたテーブルへと足を運ぶ。

 そして数分待っていると、何かの肉と元の世界でも使われていた野菜の炒め物、赤いスープ、数個のパンが木製のトレーに載せられ運ばれてきた。


「これ、何の肉?」

「魔猪じゃ」


 魔猪(まちょ)ッ!? そこら辺に居る魔物じゃねえか。

 ……食えるんだろうな?


 俺の隣でバクバクと食べるゼムを見て、意を決して食べた。


 ……完食。

 普通に美味かった。

 いや、めちゃくちゃ美味かった。


 炒め物の味付けが塩胡椒だったり、赤いスープもトマトベースだったりと元の世界と何ら変わりのない味だった。

 どうやら、肉以外の調味料や野菜は元の世界と一緒みたいだ。



 食事も終わったところでメンバー募集用紙の記入にとりかかる事にした。


 今、欲しいのは魔法使い(ウィザード)治癒師(ヒーラー)だな。


――――――――――――――――――――――――

 【固定パーティメンバー急募】

 <レベル>

 ・不問


 <種族>

 ・不問


 <性別>

 ・不問


 <職業>

 ・魔法使い(ウィザード)

 ・治癒師(ヒーラー)


 ※それ以外でも可


 <備考>

 ・ダンジョンメイン

 ・固定パーティを組める方のみ

 ・報酬は全員に均等分割

 ・レアドロップを使用する可能性あり

 ・面接あり

――――――――――――――――――――――――


 こんなもんかな。


 書き終わった俺は受付嬢の元へと歩いていく。


「頼みたいことがあるんだがいいか?」

「はい! 何でしょうか?」

「加入希望者が居たら一度会って話してみたい。毎朝ギルドに顔を出すから待たせてもらえるかな?」

「わかりました! 他の職員にも話しておきますね!」

「ありがと」 


 よし。

 用事は全て終わったので俺たちはギルドを後にした。


「さーて、ダンジョン行こうか」


 大通りを歩きながらゼムに言う。 


「どこのダンジョンに行くつもりじゃ?」

(なげ)きの納骨堂(のうこつどう)

「はあ!? 毎朝ギルドに顔を出すとさっき言っとらんかったか? ここからじゃと早馬でも二日はかかる距離じゃぞ!?」


 ハハハ。

 俺には()()がある。

 問題はない。


 俺は大通りから裏路地へと入っていく。

 人気がなくなったところでインベントリから転移スクロールを二巻取り出し、うち一巻をゼムに手渡す。


「なんじゃこれは」

「転移の呪文(スペル)スクロールだ」

「はあ!? 店で話を聞いとった時からめちゃくちゃな奴じゃとは思っとったが、こんな物まで持っとるとは……。お前さん、一体何者なんじゃ? 少し怖くなってくるぞ」


 ゼムは真っ青な表情を浮かべながら、転移スクロールを握りしめた手をカタカタと震わせる。


 この世界でのスクロールはダンジョンの魔物のレアドロップアイテムだ。

 とある上位生産職、もしくは最上位生産職が複製可能なのだが、この世界に生産職の上位以上は居ない。


 何が言いたいのかと言うと、この世界のスクロールは希少で、基本オークションなどでしか出回らない上、貴族や大商人、下手をすれば王族が高額で買い取るため、冒険者(シーカー)ごときでは手に入れることがほぼ不可能だと言う事だ。


 しかーし、俺は違う。

 IDO時代からクランメンバー全員の分まで貯蔵をしていた俺に抜かりはない。

 まあ、数に限りはあるから、いずれは無くなるんだけどね。


「早く他の人材も育てないとなあ」


 小さくぼやいたのが聞こえたのか、ゼムは呆れたような目で俺を見る。


 俺は辺りを見渡し人目が無いことを確認した後、スクロールを使用する。


「転移、(なげ)きの納骨堂(のうこつどう)


 視界が一瞬で切り替わる。



 さあ、パワーレベリングの始まりだ。



読んでくれてありがとうございますorz

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毎日一話ずつですが更新します!


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