60話:動き出す
俺は満面の笑みで二人を撫でる。
そして撫でていた頭を鷲掴み、力を籠める。
「あだだだだだだだだだだ!」
「……いたい。」
「お前ら座れ」
鷲掴みにしたままの状態で二人は地面に座る。
座ったのを確認し、俺は口を開く。
「最初に言っとくが、よくやった」
「へ?」
「が、負傷してまでやるな。今はまだ良いがその傷が命取りになる可能性だってあるんだ」
「ごめんなさいッス」
「……ごめんなさい。」
「謝らなくていい。その技が使えるよう一緒に考える。火矢が握れれば実戦で使えるだろ?」
発想自体は本当に面白かったし、強力だった。
だが、ヘススが居ない時や手を離せない状況下でさっきの荒業を使い、ミャオが弓を撃てなくなることが一番怖い。
アタッカーはヴィクトリアも居るが、一人では削り切れない敵は山ほど出てくる。
なら、使える環境を作ってやればいい。
実戦投入できればそれに越した事は無い。
二人は顔を見合わせると微笑みあう。
俺たちはそのまま花植物竜を倒しつつ、『幻惑の花畑』を進んでいった。
進んでいくこと数十分経った頃、『幻惑の花畑』ボス部屋である一本の大きな花の根元にたどり着いていた。
大樹程あるその花には大きな扉が付いており、花の文様が描かれていた。
「よし、帰るぞ」
予想外の言葉だったのか四人は驚く。
「ここまで来たのに行かないんッスか?」
「ああ。元よりここのボスは倒す気はなかったしな」
ボスと戦わないことなど今まで無かったため、意外だったのだろう。
だがココのボスは厄介な事この上ない。
実際に用があったのは花植物竜の方だ。
花植物竜のドロップする素材は、その内仲間にする予定である調薬師の調合素材になるし、経験値も多い。
俺たちは来た道とは違う道を通り、花植物竜を倒しながら出口へと向かった。
『幻惑の花畑』から出ると、人影が一つあった。
入る前に出会ったジェラだった。
俺たちの姿を見た彼女は一瞬ホッとしたような表情をした後、すぐに顔を引き締め俺たちに近付いてくる。
「生きて戻ったか」
「何か用?」
「……私の仲間を見なかったか?」
やはり、仲間が居たようだ。
十中八九、居ると思っていたが。
「見てないな」
というよりダンジョン内で偶然会い、それも救えるなんて奇跡は物語の中くらいでしか起こらないだろう。
ここは物語ではなく現実だ。
間違いなく死んでいる。
そうか、と小さく呟いたジェラは俯き黙り込む。
俺の周りに居た四人も口を噤んで、静寂が訪れる。
少しの間沈黙が続き、ジェラは立ち上がり頭をさげながら口を開く。
「頼みがある!」
「断る」
即答した。
恐らく、というか間違いなく仲間の捜索か、もう一方の二つだ。
だが、どちらも御免だ。
諦めてもらうほかない。
俺に即答されたジェラは顔を勢いよく上げると、ヘススの方に向かい同じように頭を下げる。
「どうかお願いします! どうしても『雫』が必要なんです!」
やっぱりな。
仲間の捜索の方ではないもう一方。
『幻惑の花畑』のボスの討伐だ。
ヘススに頭を下げるジェラは続ける。
「私に出来ることなら何でもします! どうか! どうか陛下をお助けください!」
「は?」
思わず声を漏らした俺に視線が集まる。
「なんだ人間。断ると言っておきながら盗み聞きか?」
聞こえる声で言ってんだろうが。
とツッコみたいが今は我慢だ。
「すまない。で? 魔皇帝に何かあったのか?」
俺の質問に答えようとしないジェラ。
こいつ……!
ヘススが俺の質問を繰り返してくれると口を開く。
「陛下は呪いを掛けられてしまい、寝たきり目を覚まさないのです」
それで『雫』か。
なるほど、これで合点がいった。
魔帝国の騎士が、こんな所でダンジョンに入っていた理由は呪いの解呪か。
レベル上げならもっと効率の良いところはいくつかあるからな。
だとすれば、結構強力な呪いの筈だ。
「呪いの原因はわかってるのであるか?」
と、ヘススに聞いてもらった。
しばらく口を閉じたまま黙り込み、眉を顰める。
すると、爆弾が投下された。
「レヴェリア聖国の教皇です……」
「ハァ!?」
「!?」
ヘススは両目を見開き、額には青筋が浮かぶ。
教会の総本山だ。
いつかの司教の時から気にはなっていたが……。
南大陸でその名前を聞くと思わなかった。
「待て。全くわからん。教皇? 何の冗談だ? 魔人種側は多種族と戦争中じゃないのか? ギュレーンは今、アザレアが治めてんじゃないのか?」
「人間! 陛下を呼び捨てにするなど……。人間、陛下を知っているのか!? ならば猶更だ! 頼む!」
咄嗟に名前を呼んでしまったがIDO時代と変わってなくてよかった。
ギュレーン魔帝国のアザレア・ツー・リレイドア魔皇帝。
MPの権化と云われていた彼女が呪われるとは俄かに信じ難い。
だが魔帝国の騎士であるジェラがここに居る以上、信じない訳にもいかない。
「とりあえず話は聞く」
俺はジェラの前に膝を付き座る。
ジェラは渋々だが詳しく話をしてくれた。
結果から言えば魔人種側は宣戦布告を行っていた。
だが、それは魔人種の都合ではなく、半ば売られた喧嘩を買ったようなものだった。
元々、種族間に差別など無かったのだが、数年前に教皇が変わった辺りから人種以外への差別が生まれ始めた。
その中でも魔人種に対する差別は強く、聞いているだけでもかなり酷い物だった。
奴隷は勿論のこと、角を折り、羽を千切り、尻尾を引き抜く者も居たなど。
それに怒った魔人種各国はレヴェリア聖国に対して宣戦布告をした。
だが、それは他種族全てに対しての宣戦布告となっていたと言う。
それが引き金となり魔人種差別も短い期間で加速した。
まぁ、裏で何かやってる奴が居るのは間違いなさそうだな。
呪いについては教皇からの使者が訪れた時、呪いを掛けられたとの事だ。
呪いを掛けたというより、呪いの憑いた物を装備させられたと言った方がいいか。
『不死種の宝冠』……。
とあるダンジョンのドロップ品。
元から呪いのバッドステータスが付いた装備だ。
強化していけば呪いは消えるのだが、それはどうでもいい。
それより気になるのは『不死者の宝冠』がドロップするダンジョンは難易度六等級という点。
この世界に難易度六等級に行ける奴が居る? それも人種の国である、レヴェリア聖国に? そいつらが裏で動いてる奴らか?
以前、戦争など俺には関係ないと言ったが取り消そう。
ヘススの問題は俺の問題だ。
それに、ヘススにあんな顔されちゃ放っておけねえだろ。
「話は分かった。手を貸そう」
「本当か!!」
「だが、条件がある」
体を両腕で隠しながら、眉を顰め睨んでくるジェラ。
ふざけんな、お前に何かをする気は毛ほどもない。
「条件とはなんだ?」
「他種族との関係を改善しろ」
「我々に降伏しろ、と?」
俺を睨むジェラ。
戦争の事はあまり詳しくはない。
だが、勝ち負けなんか絶対決めなくていいだろ。
「違う。終戦させるぞ」
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