59話:花植物竜
何が起こった?
その光景に俺は理解が追い付かなかった。
ヴィクトリアが花植物竜を殴った後。
火矢が飛んできた。
リヴィの『ファイアアロウ』なのは間違いない。
だが、違う。
速さが違う。
威力が違う。
そして何より飛んできた先に居たのはミャオだ。
ミャオにヘススが近寄り手を治療している? 何をした?
俺は花植物竜の攻撃をパリィしながらミャオを見る。
ミャオの隣に『ファイアアロウ』が浮かんでいる。
それを掴み弓を引絞る。
そして……放つ。
『パワーショット』で放たれた火矢は花植物竜の肩に咲いた花に直撃すると燃える。
なるほど……。
あいつら――。
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「……話ってなに?」
――二日前、私はミャオの部屋を訪れていた。
ミャオが呼び出したからだ。
「アタシたちって頼りないッスかね?」
ミャオはベッドに座り、悲しそうに俯く。
「……どうして?」
「一昨日、独りでタスクさん行っちゃったじゃないッスか」
転移スクロールを出したのはわかった。
でも、止められなかった。
まさか独りで行くとは思わなかったし。
「……そうだね。」
「まだ怒ってるとかじゃないッスよ? 昨日だって一緒に虫捕りに行った時も頼ってくれて嬉しかったッス」
「……うん。」
「でもッスよ。血が上ってても頼ってくれるくらい……」
言葉が尻窄みになっていく。
ミャオは多分、頼ってほしいんじゃない。
私と同じ気持ちなんだろう。
タスクさんは特別だ。
未来の知識も持ってるし。
独りだけ最上位職だし。
私とは違う意味で独りぼっち。
遠くに居る。
でもタスクさんは振り返らない。
だから、私たちは追いつきたいんだ。
あの人の隣に立ちたいんだ。
ミャオは感謝してるって言ってた。
それは私も同じ。
それなら――。
「……ミャオ?」
「なんッスか?」
私はスーッと息を吸い込む。
「一緒に強くなろ?」
ミャオは顔を上げると強く頷いてくれた。
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――面白れぇ!!!
『ファイアアロウ』を弓で放つだと!
「タスク様、嬉しそうですわね」
「ああ。最ッ高だ!!!」
花植物竜を殴りながらヴィクトリアが言葉を投げてくる。
どうやら俺は嬉しそうにしていたようだ。
実際に嬉しいから仕方ない。
フレンドリーファイアが無かったIDOで味方の魔法を掴むなんて芸当は出来なかった。
それはこの世界も同じだと勝手に決めつけていた。
だが違った。
俺は気付くべきだったのだ。
ルング湖でリヴィの<土属性魔法>が俺の後頭部に直撃したことを。
俺は、ここがIDOの世界だとは思っていない。
実際に『蟒蛇の塔』で蛇人間が設定されたシステムとは違う動きをしていた。
それにIDO時代、NPCだった多人種が知性を持ち、様々な変化が起きるとは思っていた。
その結果が戦争や迫害や差別だ。
だが、概念まで変わっているとは思ってもいなかった。
誰が魔法を触れると思うよ? 思わねえよクソ! 本当にやってくれる! 男神か? ちくしょう、ルールくらい教えやが……。
愉しいから教えてもらわなくていいやぁ。
それから数分間戦い続けていると、花植物竜は大きく仰け反り太陽に顔を向ける。
刹那、体に咲いた花から大量の霧を噴出する。
「なんですの!?」
近くに居たヴィクトリアは霧の噴出をモロに受ける。
黒いドレスを舞うように揺らしながら飛び、霧の外まで逃げる。
あの噴出された大量の霧は花粉。
それも強力な麻痺毒と幻覚作用を含んだ花粉だ。
それをヴィクトリアは吸い込んでしまった。
――が、問題ないはずだ。
三人の誰かがバフを切らしていなければだが。
俺はヴィクトリアを一瞥するが、問題なさそうに体の異常がないかを調べている。
ヴィクトリアは知らないが吸い込めば、即倒れていてもおかしくない花粉だ。
立っている時点で問題ない。
どうやらバフは切れてなかったようだ。
だが念のためだ。
「ヴィクトリア、一旦下がれ! ヘスス、ハイキュア頼む」
「畏まりましたわ」
「承知した」
俺は次の攻撃に備えながら叫ぶ。
ヴィクトリアはヘススの方へと駆けていく。
花植物竜は太陽に向けていた頭を俺の方に向けると、頭が若干光っておりピカっと光る。
花植物竜のブレスだ。
俺は大盾を構え『オーバーガード』を発動させる。
あ、やべぇ。
<軽騎士>スキル『ハイプロテクシールド』:盾の強度中増加。
発動、ゼムの大盾にMPが流れ込み強度が増す。
先ほどまで俺を押していたブレスを押し返しながら踏ん張る。
決して、大盾が弱いんじゃない。
あいつのブレスが思った以上に強かった。
ブレスを吐き終わると顔の花が萎びる。
俺は『パワーランページ』を発動させ、萎びた顔に向かって正面衝突する。
鈍い音を再度放ち、今回は花植物竜の顔が後方に吹っ飛ぶ。
ああ。
気持ちええ。
丁度、戦線に戻ってきたヴィクトリアが『ファスト・ステージ』を発動し『マグナム・メドゥラ』でぶん殴る。
ヴィクトリアのステージ系のスキルは車のギアのような物で、コンボを途切れさせたらまた一から発動しなおさなければならないが、そんなことは些細な事だと思うほど強力だ。
いい人材を拾えたなぁと思いつつ『チャレンジハウル』を放つ。
ミャオは相変わらず遠くから火矢を放っている。
ヘススが治療しているのを見る感じ、あまり使わせたくない荒技だな。
手袋なんかを作ってあげるのもいいかもしれない。
俺は作れないんだが。
そんなことを考えながら、振り下ろしてくる花植物竜の腕をパリィすると体をグラつかせる。
お、もう終わりか。
満身創痍の花植物竜は最期の足掻きと云わんばかりに花粉を撒き散らしながらブレスを溜める。
その攻撃は見飽きたぞ。
おおっ?
溜めて撃つまでの時間が早かった。
が、その分威力も控えめだったので、難なく大盾で弾く。
「チェックメイトですわ」
視界の悪い霧の中で、深紫と白銀の瞳を輝かせながら懐に潜り込み、呟く。
『ラスト・ステージ』まで上がった状態のヴィクトリアは速い、そして強い。
花植物竜の真下から『マグナム・メドゥラ』で突き上げる。
顔の花は完全に萎れ、ボトボトと液体を零しながら倒れ伏す。
すると、徐々に粒子になっていき花植物竜の討伐が終わる。
その場には風の魔石と花植物竜の素材だけが残った。
俺は討伐と同時に走り出す。
行先に居た人物たちはビクッと肩を跳ねさせおろおろとしている。
「面白かったぞお前ら!」
ミャオとリヴィの頭を撫でながら叫んだ。
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