58話:幻惑の花畑
俺の大盾を作るための三日の休日も終わった。
なので、早速ダンジョンにやって来ていた。
メンバーは俺たちのパーティのみ。
目の前に見えるのは青々と茂る丘陵にある遺跡跡地。
丘陵が広がるこの場所は、魔人種の暮らす南大陸。
遺跡跡地というだけあって、石で出来た壁などが朽ち果て地面に落ちている。
遺跡跡地自体がダンジョンなのではなく、転移するための魔方陣が存在している。
入口である魔方陣に向かい遺跡跡地を歩いていると、ミャオがピクリと反応を示す。
「誰か居るッス」
珍しいな、ここは難易度六等級のダンジョンだが。
どうするかな? 魔人種が宣戦布告したと聞いてるが。
俺が悩んでいると ミャオは口を開く。
「弱ってるみたいッスね」
「行くぞ」
即答した俺を四人はジト目で見てくる。
お前ら俺をなんだと思ってやがる。
何かしようって訳じゃないんだぞ。
ミャオの先導で気配のある方へと近付いて行くと、そこには一人の鎧を着た女性がうつ伏せ状態で倒れていた。
鎧は酷く損傷しており、女性の額からは汗が噴き出している。
呼吸も荒く、苦しそうにしていたので仰向けにした後、鎧を外すことにした。
インナー姿になった女性の治療をヘススに任せ、他の四人は辺りの捜索をしたが人はいなかった。
恐らく全滅したのだろう。
元より一人の可能性はあるが、一人でダンジョン外に逃げられるとは考えにくい。
女性が倒れていたすぐ近くにはダンジョンの入口がある。
今回来た『幻惑の花畑』は難易度六等級の転移フィールド型ダンジョン。
このダンジョンは麻痺や毒、幻惑や恐怖など多種多様の状態異常のオンパレードだ。
そして状態異常に罹った侵入者を植物が捕食するといった仕様になっている。
そんな中、仲間に助けられ命からがら逃げてきたんじゃなかろうか。
<僧侶>スキル『ハイキュア』:状態異常の中治癒。
発動、女性の顔色はみるみる良くなっていく。
ヘススは『ハイヒール』も同時に発動させ、女性を治療する。
しばらくするとゆっくりと目が開き、俺たちを視認すると勢いよく起き上がる。
「誰だ!? 人種!? なんなんだお前たちは!?」
寝転がっていた時は長い赤髪で見えていなかった短い角を手で隠しながら声を荒げる。
「落ち着け。俺たちは用があってこのダンジョンに来ただけだ」
「嘘をつけ! ここは難易度六等級のダンジョンだ! お前らみたいなやつらが来るような場所じゃない!」
だいぶ失礼だなこいつ。
人を見た目で決めつけるんじゃあない。
「別に信じて貰わなくも構わないが、礼くらい言ったらどうだ? お前はこいつに救われたんだぞ?」
俺はヘススを指さし、赤髪の女性に言う。
女性は自分の体を触り、傷がない事に今気づいたのか、ヘススの前に座りなおす。
「失礼しました! 私はギュレーン魔帝国、騎士団所属のジェラと申します! 助けていただき感謝します!」
ジェラの名乗る女性はヘススに地面に額が着きそうなほど頭を下げる。
「構わない。タスクの指示である」
「タスク?」
ヘススは俺に視線を移すとジェラも俺の方を見る。
露骨に嫌そうな顔をしながら俺に対しても同じように頭を下げる。
こいつヘススを魔人種と思ってないか? 一応、亜人種だぞ。
「礼は良い。クラン、『侵犯の塔』のタスクだ。何があった?」
「人間には関係ないことだ」
「そうかよ」
まぁ、気まぐれに聞いてみたが、言わないなら気にする事でもない。
俺は「行くぞ」とだけ声をかけ、ダンジョンへと向かい歩き出す。
後ろから四人が付いてくるのをジェラはずっと見ていた。
魔方陣に乗り、転移した先は一面の花畑。
空には大きな太陽が輝き、地面には色とりどりの花が咲き誇っている。
「ヘスス、リヴィ、ミャオ。頼むぞ」
「了解ッス!」
ミャオは<冒険術☆>『ミティゲーション』を発動する。
『幻惑の花畑』では花粉ですら毒であるため環境の影響を軽減、無効化するミャオのスキルが輝くのだ。
「……任せて。」
リヴィは<強化魔法・無>スキル『ガード・バフ』を全員に掛ける。
状態異常の多い『幻惑の花畑』では<MEN>が必須だ。
<MEN>を上昇させてくれるリヴィのバフには心底感謝をしている。
「承知した」
<僧侶>スキル『アイアンハート』:恐怖耐性・幻惑耐性の小上昇。
発動、ダンジョンの中とは思えないほど心が落ち着く。
俺個人的に『アイアンハート』は好きではない。
難易度六等級以上の魔物は魔素を振りまき、恐怖を与えてくる。
それまでスキルで鎮静化していては、無謀にも挑み死んでしまうような事があるからだ。
だが、今回の『幻惑の花畑』の幻惑が本当に厄介なので、恐怖が一緒に消えてしまうのは致し方ない犠牲だ。
「皆様、凄まじいですわね」
「そうだな。ヴィクトリアは戦闘で大暴れしてくれ」
「タスク様が褒めてくださるなら、頑張らせて頂きますわ」
相変わらずのヴィクトリアはクスクスと笑う。
こう見えて戦ってる時は俺よりクレイジーな奴なんだよなぁ。
思いっきりぶん殴ってるし。
「三人はスキルの効果時間を気にしといてくれ。行くぞ」
これだけ綺麗に咲き誇っている花を踏み抜くのは本来なら気が引ける。
だがダンジョン内で、これはオブジェクト。
どれだけ暴れまわろうが散ったりはしない。
だからお前らそんな顔をするんじゃない。
「タスクさんの前方、来るッスよ!」
歩いているとミャオが声を上げる。
ヴィクトリアは『ファスト・ステージ』を発動、リヴィは全員にバフを掛ける。
ミャオは『メルトエア』で姿を消し、『ジールケイト』『ウィークアタック』を発動させる。
少しすると前方からドスドスと足音が聞こえてくる。
「なんですの!?」
「……えっ!?」
「!?」
全員に言ってなかったので驚くのも当然だ。
花畑だからと言って、お花と戯れようって訳じゃない。
このダンジョンの魔物は――竜種だ。
走ってくるソレは骨竜ほどの大きさがあり、全身は蔦で覆われていた。
肩や背中など至る所に多彩の花が咲いており、顔には一輪の巨大な花が開き、ボトボトと花弁から液体をまき散らしながら走ってくる。
『幻惑の花畑』の花植物竜だ。
俺は花植物竜に、『チャレンジハウル』を放つ。
走ってきた勢いのまま、俺に突進してくる花植物竜を真っ向から迎え撃つ。
腰を落とし、俺はスキルを使い駆け出す。
<重騎士>スキル『パワーランページ』:重い突進攻撃。
発動、ゼムの作った大盾に手を引かれるように猛突進し、正面衝突する。
「オラアアアアア!」
鈍い金属音と共に花植物竜の突進が止まる。
クッソ押し負けた。
<STR>が足りねえ。
俺の猛突進も止まっており、それどころかズルズルと押されている。
だが俺は独りで相手してんじゃねえぞ?
「がら空きですわ!!!」
花植物竜の横っ腹に拳が突き刺さる。
ヴィクトリアの『マグナム・メドゥラ』を受けた花植物竜は体が横にずれる。
「……ミャオいくよ。」
「了解ッス――」
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