46話:クラン
俺は冒険者ギルドの二階の個室に居た。
昨日は一日アンとキラに付き合っていたので用事は今日になってしまった。
前の席に、巨漢のギルドマスターのアイザックと、赤髪ポニーテールの受付嬢フランカと、どこかで見た覚えのある老人の三人が座っている。
「それでぇ、ワタシたちが呼ばれた理由って何なのかしらぁん」
ギルドマスターであるアイザックは相変わらずのオカマ口調と獲物を狙うような眼力で俺の鳥肌を立てる。
隣に居る老人はそれを冷ややかな目で見ており、小さくため息を吐くと俺に向かって口を開く。
「屋敷を買っていった時以来かの? わしは商人ギルドマスターのヘルカスじゃ」
思い出した。
この人、商人ギルドの若い受付が呼んできた人だ。
なるほど、ギルドマスターだったか。
それならバトラ達の事を知っててもおかしくないか。
「よろしく。改めて俺はタスク。今日二人をフランカに呼んでもらったのはコレだ」
俺はインベントリから四つの魔法袋を取り出す。
インベントリを使った事でギルドマスター二人は驚き、ヘルカスにギルド職員にならないかと誘いを受けたが丁重にお断りしておいた。
一方、フランカは慣れた手つきで魔法鞄から次々と素材と魔石を取り出していく。
取り出し終わったテーブルの上には山のように魔石と素材が積まれているが、これでもまだ一部でしかない。
「こ、これは、何だ!? どこからこんなに!?」
地声が出てるぞアイザック。
俺が見ると、コホンと一度咳払いをする。
「これは、エルダーエルフの魔石に、……エルダードワーフの魔石まであるのか」
「ほとんどが三等級以上のボス級の魔石じゃないのぉん! それに五等級と六等級ですってぇん? タスクちゃんは本当に何者かしらぁん?」
「俺は俺だ。それで、ここにある物全部買い取ってくんね?」
俺の言葉で空気が凍り付く。
最低でも三等級、最高で六等級の魔石や素材の山を買い取るとなれば相当な額になる。
だからこそ、フランカに事前に話をした時「私の手には負えません!」と言われたので二人を呼んでもらっていたのだ。
「ワタシは買い取っても良いけどぉ、良いのかしらぁん?」
「ちょっと待てオカマ。その魔石はわしが狙っておったんじゃ。離さんか」
「なっ! 禁句を言いやがったな耄碌爺コラ。アァ?」
二人が席から立ちあがり対峙する。
その横でフランカは普通にしてる辺り、いつもの事なのだろう。
「じゃ、フランカ後は任せてもいいかな?」
「はい! お任せください!」
満面の笑みで片腕を胸の前に上げ、拳を握る。
俺は二階の個室を後にして、一階のロビーにあるテーブルの一席に座る。
二階からはドスドスと物音が鳴っていた。
元気だなぁ。
俺がカウンターで注文した果汁を飲みながらのんびりしていると、男女の二人組に話しかけられる。
「よぅ! ルーキー!」
「ちょっとバウム! いきなり失礼よ! ごめんなさいね」
誰だ?
聞きなじみの無い声のする方に振り向くと、首筋まで伸びた茶髪の男性と長いピンク色の髪を垂らした女性の二人が立っていた。
俺が果汁の入ったコップを片手に首を傾げていると二人は続けて話し出す。
「おぅ! 俺は『銀狼』ってクランのバウムってんだ! よろしく!」
握りこぶしの親指だけを自分に向けて立て、自己紹介をする。
その横ではピンク色の髪の女性がハァと深くため息を吐くと俺に向き自己紹介をする。
「本当にごめんなさいね、この馬鹿が。私はセフィール。こいつと同じ『銀狼』ってクラン所属よ」
バウムの頭を鷲掴みにして二人して頭を下げるので手を挙げて制止する。
それにしてもクランか。
この世界でのクランってどうなってるんだろうな。
IDO時代にクランを設立すると、クランホームに受付NPCというキャラが出現し、その受付NPCから街にあるギルドと同じ依頼を受けられた。
クランホームには鍛冶場を始めとする設備の整った部屋も設置できたので、クランを設立した場合街に行く必要がほぼほぼ無くなってしまう。
受付NPCが突然現れるとも思えないし……。
「俺はタスクだ。ちょっと聞きたいんだが、クランって――」
食事や飲み物を奢ると、いろいろとクランの事を聞かせてくれた。
まず受付NPCはやはり突然現れる……なんて事は無く、ギルド本部から派遣された人にお願いするか、嫌なら自分で人を雇うかすると言っていた。
クランの設立申請は冒険者ギルドで出来るらしい。
その他にもいろいろと聞いたがIDOとほぼ同じで知っていることばかりだった。
査定終わりの魔石と素材の料金を受け取り、しばらくしてから魔道具専門店に寄って屋敷へと戻った。
ダイニングに入るとゼムとバトラ以外が全員居た。
「少し話があるんだが。ゼムを呼んで来てくれない?」
キラは大きな胸を揺らしながら手を挙げ、ダイニングを出ていく。
俺はダイニングでいつも座っている椅子に腰を下ろすと全員座る。
少ししてゼムとバトラとキラが入って来たのを確認して、話し出す。
「まずはこれをみんなに渡しておく」
アンとキラとバトラの前には宝石の鏤められたネックレス。
それ以外の八人の前にはパンパンの革袋が一つ。
フェイ、カトル、ポルの三人の前には革袋の他に一つの鞄を置く。
「使用人の三人には魔力が溜めておける魔道具だ」
前にバトラに聞いたところ思念体は魔力を糧に生きている?らしい。
空気中に漂う魔力だけで十分との事だが、一応感謝の気持ちと言う奴だ。
魔道具専門店のおばあちゃんに頼んでおいたのだ。
「私たちまでありがとうございますっ!」
「大事にしますぅ」
「タスク様。お心遣いありがとうございます」
「良いんだよ。お前らには世話になってばっかだし」
この三人には感謝してもしきれないくらいだ。
いつ帰って来ても屋敷はピカピカだし、庭には雑草一本伸びておらず、料理はうまい。
ハハハ、最高じゃないか。
「んで、冒険者の全員に渡したのは魔石と素材を換金してきた分だ。好きに使ってくれ。それと四人に渡したのは魔法鞄だ。無いと不便だろ」
革袋の中身を見て、みんなの目が白黒としている。
参加したダンジョンごとに分配したので中身に差はあるが、一番多い者で普通に新品の屋敷が建つくらい入っている。
一番少ないのは勿論ヴィクトリアだが、それでも『明月の館』周回分を均等配分しているので結構ある。
「タスクサン、良かったんデスか?ワタシに魔法鞄なんて」
「そうですよ!! ってか俺らが逆に連れてってもらってばっかだったのに!!」
「私達何もしてない」
「あ? 周回頑張ってたろ。これからも頑張れ」
フェイ、カトル、ポルには期待してる。
正直、俺たちのパーティを超える可能性すら感じてるくらいだ。
「さて、ここからが本題だ」
全員「!?」を頭に浮かべ、驚いた顔をしている。
今渡したものが本題とでも思ったかね?
否! 断じて否だ!
「わかったッス! ダンジョンッスね!?」
「あ、それもあった」
「……えっ!?」
なんでそんな意外そうな顔を向けてるんだお前ら。
俺だってダンジョン以外の事も考えてるんだぞ?
失礼すぎやしないかこいつら。
俺は一度咳払いをした後、全員に告げる。
「このメンバーでクラン設立しよう」
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