44話:新たな仲間【イラスト有】
深紫と白銀の瞳が見開き、俺を見る。
俺の突然の誘いに空気が凍り付く。
数秒の沈黙が続く中、ヴィクトリアは口を開いた。
「ご冗談ですわよね?」
「冗談は好きだが、嘘は言わない。お前には俺のパーティに入ってほしい」
ヴィクトリアは冷静な顔で俺を見つめる。
後ろで聞いていた六人、隣に居たテアが驚き声を荒げる。
「タスク様!? 本気ですか? グランツメア王国の第三王女様ですよ!?」
「ん? 別に関係ないだろ。それにココに住んでるって事は帰れねぇんだろ」
「ですが――」
ヴィクトリアはテアの方を向き、穏やかな声で言った。
「テア王女殿下。私はもう王女ではありません。タスク様の言う通り帰る国もありませんわ」
何かを言いかけたテアはヴィクトリアの言葉で黙る。
先程と同じはずの冷静な顔はどこか悲しそうに見えた。
「ヴィクトリアは力が欲しいんだろ?」
「ええ。どうしても殺したい人が居ますの」
んんんんん? この子、凄い爆弾落としたぞォ。
殺したいとは穏やかじゃないな。
だが、ヴィクトリアは一人で三等級のクリア出来るんだから、この世界の人の一人や二人くらいなら余裕そうなもんだが。
「その相手はそんなに強いのか?」
「わかりませんわ。ですが、アイツだけは確実に殺します」
覚悟を決めてるな。
こりゃ、何言っても変えないだろう。
俺は説得する気も変えさせるつもりも更々ないが。
「それなら俺と来い。俺たちは十等級のダンジョンまで行くから恐ろしく強くなれる」
「十等級なんて不可能ですわ。タスク様は嘘を――」
俺が不敵に笑うと、ヴィクトリアは言葉を止める。
そう、俺は嘘はつかない。
行くと言えば意地でも行くんだよ。
すると、リヴィとミャオが後ろから俺の前に来て口を開く。
「反対ッス。人を殺そうとしてるッスよ?」
「……私もです。……嫌です。」
二人共、俺を真剣に見ており意見を変えそうにない。
だから俺は後ろに居るヘススの方を向く。
「拙僧は問題ない」
「ヘスさん!? 本気で言ってるッスか!?」
「無論である」
想像通りの答えが返って来た。
多分俺と考えている事が一緒なんだろう。
「タスクさんもヘスさんもおかしいッス! 人殺しッスよ!? 絶対ダメッス!」
リヴィは俺を睨み、ミャオは眉を顰めて怒鳴る。
この二人は理解できていないみたいだな。
「ミャオ、リヴィ。お前たちはなんで生きてんだ?」
二人は生きてる理由を考えているのか、俯き黙ってしまう。
難しいことを聞いたつもりは無いのだが。
「ヴィクトリアはその誰かを殺すために一生懸命生きてんだ。自分が死ぬかもしれないダンジョンにたった一人で入ってまで全力で力を求めてんだよ。理由も事情も聴かずに責めるのはヴィクトリアを蔑んでるのと同じだぞ」
ミャオはまだ何か言いたげな表情をしていた。
リヴィは下を向いたまま震えている。
俺は二人に近付き、前屈みになり頭に手を置き撫でる。
二人だけに聞こえるように小声で呟く。
「事情を聴いて、それでも間違ってると思ったなら俺たちが止めてやればいい」
何かあるのは間違いないんだ。
ならその理由や事情を知ってから止めても遅くは無い。
今すぐ殺しに行くと言ってるわけじゃないんだから。
ヘススはその辺りを考えていたのだろう。
俺は説得する気も考えを変えさせる気もないが、場合によっては止める気だ。
俺は二人の頭から手を離すとヴィクトリアの方へと向き直る。
「どうする? 俺と来るか?」
「あそこまで言われては行かない、とは言えませんわね」
よし。
これで後は調薬師と遊び人だけだ。
その二人が揃ってようやく十等級に近付く。
愉しくなってきた。
「早速なんだがステータス見せてくれないか?」
「……見せたくない、と言ったらどうしますの?」
「困る」
俺の答えにポカンとするヴィクトリア。
すると、口元に手を当てクスクスと笑う。
「タスク様なら大丈夫そうですわね」
そう言うと俺にステータスを開示する。
――――――――――――――――――――――――
【ステータス】
<名前>ヴィクトリア・フォン・ハプスブルク
<レベル>48/75
<種族>半吸血鬼
<性別>女
<職業>拳闘士
<STR>A-:200
<VIT>D+:0
<INT>A-:250
<RES>D+:0
<MEN>D+:0
<AGI>C:0
<DEX>D+:0
<CRI>D+:0
<TEC>D:0
<LUK>D+:0
残りポイント:30
【スキル】
下位:<戦士><光属性魔法><魔法適正>
上位:<拳闘士><血操術>
――――――――――――――――――――――――
<拳闘士>か。
あれだけミスリル製の大盾をぶん殴っておいて、拳が壊れない理由はスキルか。
それに<戦士>からの上位職だが恐らく生まれながらの上位職だろう。
ん? 種族が半吸血鬼!? スキル<血操術>!? なんだこれ!!!!!
俺の顔を見たヴィクトリアは訊ねてくる。
「軽蔑いたしましたか? 私は混じり物ですの」
「するわけねぇだろ! こんなもん! 控えめに言って最高だぞ!」
小声で言ってくるヴィクトリアの言葉に思わず叫んでしまった。
周りに居た七人がこちらを見てくる。
その光景を見たヴィクトリアはクスクス笑い、耳元で囁く。
「ほんの少しで構いませんわ。タスク様の血を飲ませて頂けませんこと……?」
「断る」
痛そうだし。
ヴィクトリアはまたクスクス笑う。
その表情はとても柔らかく優しいものだった。
それから、ヴィクトリアを連れ一度王都に戻った。
まだ午前中だったのでヴィクトリアにお願いしてホームを俺たちの屋敷に設定してもらった。
その後すぐ、もう一度『明月の館』に戻り、周回をした。
序でにボスが復活しているかの確認も出来た。
これで『いにしえの皇城』にあの悪魔が復活している事が確定した。
もう一度、玉座は俺たちが貰っていくから待っとけよ。
周回を終えた俺たちは夕方、屋敷に戻ってくる。
既に国王がテアの迎えに来ており、ダイニングに座っていた。
「だから、こんな所に来ていいんですか? 俺、何かあっても責任取りませんよ?」
「大丈夫なのだ。お主に責任が行くような事にはならぬ」
国王が椅子に座り紅茶を啜っている事にカトル、ポル、ヴィクトリアの三人が驚く。
双子はテアとは会っていたが国王と会うのは初めてだった。
「なら別にいいですけど」
「うむ。ん? そこにおる少年と少女二人は誰なのだ?」
「あぁ、うちの新メンバーと双子のシーカーですよ。訳あってうちに居るんです」
俺が話している途中、三人は頭をさげようとするが国王に制止される。
双子が国王に自己紹介をしたあと、ヴィクトリアが口を開く。
「ヴィクトリア・フォン・ハプスブルクと申します」
国王の表情が一気に変わると、音を立て飲んでいたカップを置く。
「グランツメア王国の第三王女……なのか?」
テアと全く同じ反応をする国王。
親子だねぇ。
「今はただのヴィクトリア・フォン・ハプスブルクと申します」
「そう、か。わかったのだ。詳しくは聞かぬ」
「感謝いたしますわ」
黒いドレスの裾を摘み、スカートを軽く上げ頭を下げる。
貴族云々を知らない俺でも美しく見えた。
こうして一週間に及ぶテアのレベル上げが終わった。




