38話:双子の天才(下)
虫遣いと指揮官。
ポルとカトルが言った俺の知らない職業。
……十中八九、星付きだ。
予想以上に早く出会えたな。
というのもミャオが面接に来た時、<冒険術>という俺の知らないスキルを持っていたのを見て、俺は知らない職業を持った奴が居るかもしれないな、とは思っていた。
「どうかしましたか?」
カトルは不安げに俺の顔を覗き込むように見てくる。
その隣ではポルも首を傾げながら俺を見ていた。
いかん、いかん。
この二人を見てると、悪い癖が出そうだ。
あー、うん、無理だな。
我慢できん。
「お前らさ、行くとこ無いなら俺ん家に来ないか?」
突拍子もない事をいきなり切り出した俺の顔を見ながら、カトルとポルは驚愕で目を見張った。
そして二人は顔を見合わせ、訝しげな表情を浮かべる。
そりゃ、不審がるわな。
知り合って間もない人に「俺ん家に来ない?」なんて言われて「行くー!」なんて言う奴は、先ず居ない。
だが、しかし、俺は諦めん!!
「どうせ冒険者ギルドに登録が出来る街まで行くんだろ?」
「それは……そうですけど」
「じゃあ、ついて来りゃいい。ダンジョンメインだけど、俺たちも一応冒険者だから案内してやるよ」
「ダンジョンメインですか?」
「ああ、そうだ。いずれ難易度十等級まで行く予定だ」
難易度十等級と聞いたカトルは眉間に皺を寄せ、同じくポルも少しムッとしたような表情をしていた。
「難易度十等級なんて……無謀ですよ」
「うん。絶対むり!」
「これでもそう思うか?」
俺はステータスウィンドウを立ち上げ、二人に見せる。
するとカトルとポルは顔を近付け、俺のステータスウィンドウを食い入るように見つめていた。
「見ての通り、俺のレベル上限は100で、職業は騎士の最上位職である守護者だ。そのうち他のパーティメンバーたちも全員、最上位職まで昇格させる。それでも無理と思うか?」
「昇格? って何ですか?」
「最上位職? ってなに?」
そうだった。
この世界では周知されていないんだったな。
俺はインベントリから適当な昇格スクロールを取り出し、上位職や最上位職というものを一から全て説明していく。
話の途中、カトルとポルに加えテアの三人は、目を輝かせながら自分のステータスウィンドウを眺めていた。
「てことは、俺とポルのレベル上限は75になってるから、上位職って事ですか?」
「そうだな」
「私、最上位職になれるー?」
「レベル上限まで上げて、昇格スクロールがあったらな」
カトルとポルは顔を見合わせ、パァッと笑う。
その隣では、二人が既に上位職だったという事実を知ったフェイとテアは少し羨ましそうにしており、ミャオとリヴィに至っては顔をピクピクと引き攣らせていた。
当然である。
ミャオとリヴィは苦労して昇格した。
だからこそ複雑な気持ちなのだろう。
「とはいえ、最上位職の昇格スクロールは難易度七等級以上のダンジョンでしかドロップしない。因みにだが、俺の守護者も難易度八等級のダンジョンでドロップした物だ」
その場にいた全員が「えっ」と漏らす。
ミャオとリヴィは顔を青くさせながら「そんな物を私たちに使うのか」と言いたげな表情で俺の事を見てくる。
フェイとテアは難易度七等級と聞いて、先程の次元蠕虫を想像したのかプルプルと体を震わせていた。
そんな中、カトルは真剣な面持ちで問いかけてくる。
「それでも俺は昇格スクロールが欲しいです。俺とポルは昇格スクロールを取りに行けるくらい強くなれますか?」
「それはお前らの努力次第だな」
この世界での強さとは、ステータス値だ。
しっかりレベルを上げて、昇格をして、ポイントを割り振りさえすれば誰でも強くなれる。
……が、しかし、だ。
俺はこの子たちに酷な事を伝えなければならない。
「だけど、俺はお前らの最上位職が何か知らないし、最上位職が存在しているのかすら分からん。だから強くなったところで昇格スクロールが手に入るとも限らんし、そもそも昇格スクロール自体この世界に存在しない可能性だってある」
そう言うとカトルとポルは俯き、視線を落とす。
反応からして、期待していたのだろう。
自分たちがもっと強くなれるかもしれない、と。
強くなりたい理由は知らない。
二人で生きていくため、とか……。
まあ、理由は何だっていい。
この子たちが強くなりたいと思うのなら――。
「だがな? 俺は今までに数多くのダンジョンを見てきてる。だからこそ、俺ならお前らの昇格スクロールがドロップしないダンジョンは全て教えてやれる」
カトルとポルは顔を上げ、立ち上がると近付いてくる。
「俺たちに教えてくれませんか? お願いします!」
「いいぞ。……と言いたいところだが、お前らだけじゃダンジョン攻略は先ず無理だから教えられない」
「やってみなきゃわからないでしょ!?」
「さっきも言ったろ。俺は今までに数多くのダンジョンを見てきてるってな? お前たち二人で行けば確実に死ぬ」
「じゃあ! ……どうすれば教えてくれるんですか?」
簡単な事だ。
「仲間を集めれば教えてやるよ」
「「え?」」
二人じゃ無理なら五人で挑めばいい。
パーティとは本来、五人で一つなのだから。
「ただ数を集めるだけじゃダメだぞ。昇格スクロールの落ちる高難易度ダンジョンに挑むんなら猶更だ。自分たちの命を任せられるパーティを組め。そうすれば何でも教えてやる」
「わかりました!」
「だから俺と来い。俺ん家は王都シャンドラにある。大きな冒険者ギルドもあるし、人の出入りも多い街だから仲間を集めるにはもってこいだぞ」
「「えッ!? 王都ッ!?」」
カトルとポルが驚いた表情をするも当然だ。
今、俺たちが居る『怠惰と勤勉』は王都シャンドラから、馬車で一週間以上はかかる場所に位置している。
俺が転移のスクロールをインベントリから取り出し、カトルとポルに説明してやると目を白黒とさせていた。
「で? どうする? 俺と来るか?」
「行きたいですッ!」
「うん。行くー」
いよぉぉぉし!! これでIDO時代に無かった星付き職業を持った二人のスキルなどなどを身近で見れるぜえ!!
俺は内心でガッツポーズをしながら四人の方に向き直る。
「俺は一度、王都に戻る。お前らはどうする?」
「いや、何言ってんッスか? アタシらも帰るッスよ? タスクさん居ないと帰れないじゃないッスか」
「帰り用の転移のスクロールを渡――」
「戻るッス!!」
「……戻ります。」
「戻りマス!」
「わたくしは、どちらでも……」
四人中、三人が戻ると言い始めたので戻ることになった。
四人には「ホーム」の文言で転移して先に帰ってもらい、俺・カトル・ポルは「王都シャンドラ」の文言で転移する。
王都の城壁の門を潜り、二人を連れてギルドへと向かう。
ギルドで二人の冒険者登録を手早く済ませ、カトルたちのパーティメンバー募集を出した後、屋敷へと戻ってきた。
「お家でかーい」
「凄いです! タスクさんって貴族様なんですか?」
「違うぞ。普通の冒険者だ」
その後、屋敷で二階の一室を使っていい事、半透明の使用人の事、冒険者ギルドの事、などなど王都で暮らす上で知っておいた方がいいことは一通り教えて置いた。
カトルとポルを入れて十一人。
大所帯になったなあ。
そろそろクラン申請でもするかな。
「カトルです! これからお世話になります!」
「ポル! よろしくー」
カトルとポルがみんなに自己紹介をする。
すると早速、アンたち女子組が群がっていった。
俺たちも改めてカトルとポルに軽く自己紹介をして、カトルとポルを正式に屋敷に迎えた。
「カトル、ポル。ステータスを見せてくれないか?」
「いいですよ!」
「いーよー」
――――――――――――――――――――――――
【ステータス】
<名前>カトル
<レベル>1/75
<種族>人間
<性別>男
<職業>指揮官
<STR>D:0
<VIT>D+:0
<INT>C-:0
<RES>D:0
<MEN>C-:0
<AGI>D+:0
<DEX>D:0
<CRI>D:0
<TEC>D:0
<LUK>D:0
残りポイント:0
【スキル】
下位:<戦士><斧術>
上位:<指揮官☆>
――――――――――――――――――――――――
――――――――――――――――――――――――
【ステータス】
<名前>ポル
<レベル>1/75
<種族>人間
<性別>女
<職業>虫遣い
<STR>D:0
<VIT>D+:0
<INT>D+:0
<RES>D+:0
<MEN>D+:0
<AGI>D+:0
<DEX>D:0
<CRI>D:0
<TEC>D:0
<LUK>C+:0
残りポイント:0
【スキル】
下位:<調教師><糸操術>
上位:<虫遣い☆>
――――――――――――――――――――――――
やっぱり二人とも星付きか。
ハハハ。
笑いが止まらん。
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