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インフィニット・ダンジョン・オンライン《Infinite Dungeon Online》  作者: 筋肉式卓一同+α
第一章:《登場人物編》
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31話:堕落した隠れ里

 


 『堕落(だらく)した(かく)(ざと)』は難易度五等級。


 街型のダンジョンで、出現するのは亜人種のエルフのみ。

 緑色の髪を持ち、長い耳をした一般的な、あのエルフだ。


 違いがあるとすれば、魔物であるかどうかという事だけ。


 以前にも話したが、ダンジョン内にポップする魔物はダンジョンの魔力で魔素が固められ、生み出された偽物(つくりもの)だ。


 しかし見た目がそのまんまエルフなのだ。

 故に内蔵や皮膚、骨など体の構造が無くとも、傍から見れば本物のエルフを殺しているようにしか見えない。


 だからこそ言ったのだ――地獄だと。


 街型のダンジョンというのも厄介なもので、ボスが街内をランダム徘徊しており、ボス部屋が存在しない。

 そのため雑魚敵との戦闘中にボスが乱入してくる事もざらにあるので来ない事をお祈りするしかない。


 しかし戦闘している音などを聞いてボスや雑魚敵が集まって来たりする事はこの難易度帯では無いのが救いだ。


 魔呼笛を除いて……だがな。


 まあ、魔呼笛はヘススに渡してあるので持っていない。

 というか持っていても使う気はなかった。

 何故なら、ボスも来るから。

 これは経験談である。



 そんなこんなで俺たちは今、『堕落した隠れ里』を囲む木製の壁の外でテントを張っていた。


 野営地を設置し終わった後、里の入口へと向かう。

 ミャオとリヴィは行先を聞いて以来、ずっと表情が曇っており、玄関に居た時とは真逆の雰囲気を醸し出していた。


「そろそろ覚悟を決めて、気を引き締めろ」

「わかってるッスよ! わかってるッスけど……」

「……怖い……です。」

「じゃあ、やめるか?」


 俺の問いかけに二人は驚いた表情をする。


 正直、やめられたら困るが……どうしても嫌だ、と言うのなら無理強いはしたくない。

 無理強いは人間関係を壊す要因になりうるからな。


「やるッス! 強くなるには、必要なことなんッスよね?」

「ああ。必須と言っても、過言じゃない」

「……ミャオがやるならやります。」


 ミャオとリヴィは俺の目を真っ直ぐ見る。


 これは……まあ、行くだけ行ってみるか。


 一分ほど歩き、『堕落した隠れ里』の入口へと辿り着いた俺たちは、顔だけを突っ込んで内部を覗き見る。

 『堕落した隠れ里』の内部には壁や屋根などが全て木で建てられたの平屋がポツリポツリと並んでいた。


 そして、その平屋の間には巨木が生えており視界が悪い。


「ミャオ。索敵スキルは切らすなよ」

「り、了解ッス」


 ミャオはスキルを発動させ、目の色が変わる。

 それを確認した俺は先頭に立ち『堕落した隠れ里』へと入った――その時、一本の矢がすごい勢いで飛んできた。


 俺は咄嗟に大盾で弾き、飛んできた方向を見る。

 ……が、そこにあったのは青々と茂る木の葉。


 クッソ! 面倒くせえ!


 俺は敵意(ヘイト)を固定させるためにもエルフを視認しようと辺りを見渡していると、先程とは反対方向から矢が飛んでくる。


 すぐさま大盾で防ぎ、そちらを見るが、また木の葉。


 二体居るのか? 木を全部燃やしてしまいたいところだが、ダンジョン内オブジェクトは壊せないし燃えない。

 ミャオとリヴィは極力俺から離れないようにさせているから守れるが、これじゃ防戦一方で埒が明かん。


 うーん……どうすっかなあ。


 俺はチラッとミャオの方へと視線を送る。


 うん、少し顔色が悪いな。

 実際にエルフを見て、怖くなったみたいだ。

 リヴィもエルフの姿が見えたのか手が震えてる。


 これは……アレをやるしかないな。

 アレでダメならこのダンジョンは攻略不可能だ。


『パシュッ』


 弦音が聞こえると同時に、俺は大盾を音のした方に向ける――が、間に合わずに矢が俺の肩に突き刺さった。

 被弾した俺の肩が後ろにズレながら鮮血が飛び散り、後ろに居たミャオとリヴィの頬に付着する。


 あーあ。

 運がない。

 本当に運がない。

 キレたくなる。


 アレの正体、ショック療法を試そうとしたらコレだよ。


 <VIT(生命力)>がAある俺の体に矢を突き刺せる個体は、この『堕落(だらく)した(かく)(ざと)』には()()しか存在しない。


 『堕落(だらく)した(かく)(ざと)』のボス、『エルダーエルフ』だ。


 めちゃくちゃ痛え! なんだコレ。

 この世界に来て、初めてまともに怪我したわ。


 痛えけど……まあ、いいや。

 どうせボスには用があったんだ。

 探す手間が省けて良かったと考えるか。


 俺は治癒のポーションを呷りながら後ろの二人を一瞥すると、ミャオは俺の肩を見てガチガチに固まっており、リヴィは手だけではなく、体をカタカタと震わせていた。


 うーん……ダメだな、これは。

 ショック療法のはずが、もっと深刻化した。

 ボスとの早期遭遇はもったいないけど……帰るか。


「ミャオ、リヴィ。撤退だ」


 俺は大盾を真正面に構えながら、ミャオとリヴィを背中で押すようにして後退ろうとする。

 しかしミャオとリヴィは足を止めており、俺の背中が当たるとハッとしたような表情をし、顔を上げて俺を見てくる。


「だ、大丈夫ッス! もうやれるッス!」

「……私も……大丈夫です。」


 ミャオとリヴィは後退る俺の背中を片手で押し、もう片方の手で武器を構える。


 ミャオは『イーグルアイ』を発動させて、キョロキョロと辺りを見渡し、「あそこッス」と指をさした。

 そこへリヴィが風属性であるエルフの弱点、<火属性魔法>スキルを撃ち込む。


 放った火の球は全て躱されたが、二人は「やれる」と言わんばかりに厳粛した表情を浮かべて俺の顔を見てくる。


 少しだけ……やってみるか。


「ミャオ、エルダーエルフを早く見つけ出してくれ」

「任せて下さいッス!」

「リヴィ、魔法はもっと強引に撃っていいから、二人で協力してエルダーエルフを引き摺りだしてくれ」

「……了解です。」


 ざっとだがやる事を伝えた俺は大盾を構え、その後ろからミャオとリヴィが周囲を見渡す。


「見つけたッス! あそこッスよ!」


 刹那、ミャオの目がエルダーエルフを捉えた。

 同時に指をさしリヴィがその方向を見てスキルを使う。


 <火属性魔法>スキル『ファイアショット』:小さな火の球を放つ。


 ――発動。

 小さな火の球がミャオの指した方向へ飛んでいく……が、エルダーエルフまでの距離は遠く、易々と躱される。

 諦めずにリヴィは次々と『ファイアショット』を放ち続け、その隣ではミャオが指をさし続けていた。


 いい連携だ。


 それにしてもリヴィは最近、MP切れをあまりおこさなくなったな。

 だいぶ成長してきている証拠だ。


 俺も少しずつミャオが指をさしている方向へ前進する。

 チラチラと木の葉の間を動いているのは見えるのだがそれにタイミング良くスキルを合わせづらい。


 じりじりとエルダーエルフの方へと近付きながら進んでいると――後ろから弦音が聞こえた。


 俺は咄嗟に、大盾と俺の間に空いている隙間にリヴィを押し込み、抱き抱える形にして庇う。

 それと同時に俺の背中に矢が当たった。


 あだッ。


 前方にエルダーエルフ、後方にエルフか。

 挟まれた。


「お前たちはエルダーエルフに集中しろ。後ろに居るエルフは無視していい」

「わかったッス。それより背中は大丈夫なんッスか!?」

「……刺さってないですか?」

「大丈夫だ。刺さってない」


 それを聞いてミャオとリヴィは安堵の表情を浮かべ、エルダーエルフが居る前方に目を向ける。

 そして俺と大盾の影に隠れながら、ミャオは指さし、リヴィは『ファイアショット』を撃ち続けた。


 ……見えた!


 リヴィの『ファイアショット』を避けた瞬間、枝の隙間からチラッと見えたエルダーエルフにタイミングを合わせ『チャレンジハウル』を発動させる。

 するとエルダーエルフは枝の上で足を止めると、手に持っていた弓を引き絞り、俺の方へと鏃の先を向けてきた。 


 敵意(ヘイト)値が一定数を超えると足を止める。

 ()()()()()()の動きを、ありがとさん。


 本来のエルダーエルフ戦というのは、こちらが先に見つけてから敵意(ヘイト)をとり、仕掛けるのがセオリーだ。

 こちらが先に見つかってしまえば、先程のように高い<AGI(素早さ)>で逃げ回られ、厄介な事この上ない。


 しかし、一度敵意(ヘイト)さえとってしまえば倒すのは簡単だ。

 基本的にエルダーエルフは<INT(知力)>と<AGI(素早さ)>と<DEX(器用さ)>以外がめっぽう低いからな。


 俺はエルダーエルフの放った矢を『オーバーガード』を発動させて無視し、後方のエルフの方へと大盾をぶん投げる。


 次いで『シールドアトラクト』を発動させ移動。

 エルフの真横に転移した俺は『チャレンジハウル』を発動させて、エルフの敵意(ヘイト)も俺に向けさせる。


 これでエルダーエルフとエルフは俺に敵意(ヘイト)が向いている状態かつ、足を止めて矢を撃ってくるだけになった。



 後はミャオとリヴィのお仕事だ。



読んでくれてありがとうございますorz

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毎日一話ずつですが更新します!


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