24話:上位職昇格
『妖精の瀧壺』を周回し始めて早五日。
倒した妖精蠑螈の数はもはや覚えていない。
それぐらい倒し続けてようやく、当初の目的であったスクロールを人数分、入手する事が出来た。
それは<水中呼吸>の呪文スクロール。
読んで字の如く、水中で呼吸ができるというものだ。
これがあればグロースからの依頼である、ルング湖の素潜りも楽に達成できるだろう。
そして今――。
「もう蜥蜴は見たくないッス!」
「……そう? ……私は可愛いと思ったけど。」
「リヴィの嬢ちゃんは趣味が悪いんじゃないか? ワシはあのウネウネがどうも好かんわい」
「お前ら、口じゃなく手を動かせよ」
野営地のお片付け中である。
<水中呼吸>のスクロールが集まったので、そのままルング湖へ向かっても良かったのだが、とある理由から一度王都に帰ることにした。
その理由とは――。
時は少し進み、王都の屋敷。
ダイニングに全員が集まったところで、ヘススの手には一巻のスクロールが握られていた。
ヘススはスクロールを開き、文言を唱える。
すると淡い光がヘススを包み込み、手に持っていたスクロールが霧散していった。
「どうだ?」
「問題ないのである」
「うし。それじゃあ、ステータスを見せてくれ」
――――――――――――――――――――――――
【ステータス】
<名前>ヘスス
<レベル>1/75
<種族>竜人
<性別>男
<職業>僧侶
<STR>C+:0
<VIT>D+:0
<INT>C+:0
<RES>C-:0
<MEN>C-:0
<AGI>D+:0
<DEX>D+:0
<CRI>C-:0
<TEC>D+:0
<LUK>D+:0
残りポイント:10
【スキル】
下位:<闇属性魔法><闇属性適正><治癒士>
上位:<僧侶>
――――――――――――――――――――――――
そう、ヘススのレベルが上限に達したので<僧侶>の昇格スクロールを渡して昇格してもらったのだ。
てか、C-以上が五個だと? 竜人のステータス、マジで強いな。
IDO時代に使えば良かった、などと俺が後悔している隣でゼムがへススに向けて口を開く。
「お前さん、装備はどうするんじゃ?」
「問題ない。拙僧の装備は適正レベル1である」
「はあ!? それじゃあ、今までずっと適正レベル1の装備で戦ってきたのか?」
「そうであるが」
それが当たり前の事かのように言うへスス。
その言葉に俺・ミャオ・ゼムだけでなく、その場に居たバトラまでもが信じられないといった表情を浮かべる。
しかし、リヴィだけはキョトンとしていた。
もしかして……と、嫌な予感がした俺はリヴィの方を向き、問いかける。
「まさかリヴィの装備も適正レベル1か?」
「……はい。……ごめんなさい。」
「別に謝らなくていい」
うーん……マジか。
これは早めに新しい装備を揃えないとダメだな。
装備を強い物に変えれば、その分強さに直結する。
その違いを実感してほしい。
特にリヴィには。
そうすれば少しは自信もつくだろ。
とりあえず今は昇格してレベル1戻ったへススのレベル上げが最優先だな。
「うし。ダンジョン行くか」
「はあ!? 冗談じゃないわい!」
「嫌ッス! 今、帰ってきたばっかなんッスから!」
「……えっと。……その。……ごめんなさい。」
そう言い残しゼム・ミャオ・リヴィの三人はそそくさとダイニングから逃げ出した。
少しすると昼食を乗せたワゴンを押しながらアンとキラがダイニングへと入ってくる。
「あれぇ? みなさんはどちらに行かれたんですかぁ?」
「えっ? 居ないのっ? お昼ご飯できたのにっ!」
あいつら一体、どこまで逃げたんだ。
そんなにダンジョンが嫌か。
昼食後、俺はアン・キラ・フェイの三人と一緒に食器を片付け、仕方なく俺とヘススの二人で出掛けることにした。
行先はもちろん――ダンジョンだ。
タンクとヒーラーの二人だけということもあり、今回やって来たのは難易度二等級の『夜照の密林』というフィールド型のダンジョン。
フィールド型というのは、フィールド上の一定範囲内がダンジョンとなっており、その範囲内で湧いた魔物を倒せば霧散してドロップ品を落とす。
俺は早速『夜照の密林』の範囲内に足を踏み入れ、インベントリから魔呼笛を取り出した。
そして大きく息を吸い込み魔呼笛を吹き鳴らすと、次第に辺りから羽音が聞こえ始める。
その音は単一の羽音ではなく、数多の羽音。
音は徐々に大きくなり、羽音の主は姿を現した。
赤く染まった前胸背板に、黒光りした上翅を広げ、その下の透明な薄羽を羽ばたかせる。
腹部から生えた六本の脚には棘があり、尻部が発光しているこの魔物は『夜照の密林』の『光蟲』だ。
群れをなし襲いかかってくる光蟲……だったのだが俺たち二人の敵ではなく、十数分後には殲滅できていた。
というのも光蟲は光属性で、弱点である<闇属性魔法>を使うヘススにとっては飛んで火にいる夏の虫状態である。
こうしてあっという間に『夜照の密林』の最奥部の小さな泉へとたどり着いた俺たちは、全長30センチほどの光蟲を150センチほどに巨大化させたボス、『光蟲皇』に挑んでいた。
とは言っても俺が『チャレンジハウル』を唱えるだけで、へススの<闇属性魔法>の範囲内まで飛んできてくれるため格好の的である。
しかし光蟲皇は腐ってもダンジョンのボスなので、数十分ほどの粘りを見せて光属性の大魔石へと姿を変えた。
因みにだが、『夜照の密林』の魔物は全て光属性の魔石を落とす。
なので屋敷の照明魔道具やダンジョン内で使うランプ型の魔道具にも使えるため、どれだけあっても困らない。
まだまだ時間はあるので俺とヘススは黙々と周回し、屋敷に戻る頃には夜になっていた。
「「おかえりなさいっ」」
「ただいま。二人してどうした?」
「どうした? じゃないですぅ」
「二人でダンジョンに行くなんて、危険ですっ!」
玄関の扉を開けてすぐのアンとキラは凄んできていたが徐々に顔が曇ってくる。
俺はそんな二人の目の前まで行くと『ライトフォース』を両手に発動させ、頭を撫でた。
「大丈夫だよ」
アンとキラを宥めるにはコレが一番である。
二人が睨んできてはいるが、満更でもなさそうだ。
アンとキラから手を離すと、少し残念そうに自分の頭に手をのせる。
その後、俺がダイニングで寛いでいると扉が開き、バトラが入ってきた。
「お疲れ様でございます、タスク様。明日のご予定をお聞きしてもよろしいでしょうか?」
「明日は国王に頼まれてる依頼に行くつもりだけど……買い物?」
「いいえ。買い物はフェイ様が毎日行って下さっております」
へえ。
フェイもちゃんと暮らせてるんだな。
よかった、よかった。
「そうなんだな」
「はい。大変助かっております」
「で、何か用事があるのか?」
「いいえ。ただ、ご予定をお聞きしただけでございます」
「そうか。何かあるなら遠慮なく言えよ」
「ありがとうございます。では失礼致します」
バトラは頭を下げ、ダイニングを出ていく。
それと入れ違いでミャオとリヴィが暗い表情を浮かべながら入ってきた。
「なんかあった?」
「いや、本当にダンジョン行ってきたんッスね……」
「行ってきたけど?」
「ごめんなさいッス!」
「……ごめんなさい。」
「疲れてたんだろ? 気にすんな」
「でも――」
「おお、タスク。帰っとったのか? お疲れさん」
ミャオの言葉を遮り、ゼムがダイニングへと入ってくる。
「お前らもあれくらい気楽でいいんだぞ」
「なんじゃ? 人に向かって指をさすな」
そういうとミャオとリヴィはお互いに見合わせ微笑む。
いつの間にかほんとに仲良くなったね君たち。
今日一緒に出掛けてたとか言ってたな。
「丁度いい。全員揃ったから言っとくぞ。明日は国王に頼まれたルング草とやらを取りに行く」
「了解ッス!」
「……わかりました。」
「承知した」
「了解じゃわい。朝から行くのか?」
「ああ。朝から出発する」
フィールドは専門外なんだけど……仕方ない。
気合い入れて行くか。
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