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インフィニット・ダンジョン・オンライン《Infinite Dungeon Online》  作者: 筋肉式卓一同+α
第一章:《登場人物編》
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17話:蟒蛇の塔

 


 楽しい時間はあっという間に過ぎていく。


 ダイニングテーブルに並べられた料理が無くなってきた頃、ミャオ・リヴィ・へスス・ゼムの四人を集めた。


「明日からまたダンジョンに潜るから準備しといてくれ」

「どこ行くッスか?」

蟒蛇(うわばみ)の塔だ」


 『蟒蛇(うわばみ)の塔』とは、難易度四等級の塔型のダンジョンで、出現するのは亜人種の蛇人間(スネークマン)のみ。

 亜人種とは言ってもダンジョンが作り出した魔素の集合体に過ぎないため知能があったり喋ったりする訳では無いのだが。


「わかったわい」

「了解ッス」

「……わかりました。」

「承知した」


 初の難易度四等級だというのに四人は驚かず、二つ返事で了承してくれた。


 しかし、その後ろではアンとキラが聞き耳を立てていたのか不安そうな表情をこちらに向けてきている。

 俺たちの事を心配してくれているのは嬉しいのだが、難易度四等級など序盤も序盤だ。

 これからはもっと過酷なダンジョンに挑むつもりだから、二人には平常運転で食器を片付けているバトラを是非とも見習ってほしい。



 ――翌日。


 俺たちは軽めの朝食を摂った後、ダンジョンに潜る準備を終わらせてから『蟒蛇(うわばみ)の塔』に転移してきていた。


 目の前には石造十階建てで(国構え)状の塔が聳え立っており、扉の無いアーチ状の入口はどこか口を大きく開けた蛇を思わせる。


 その塔の周囲には土の地面があるが、周辺は沼地になっておりとても見通しが良い。

 なので俺たちは塔の真横にテントを張り、野営の準備を始める。


 今回は『ましらの穴倉』のように温泉はないため、大きめのドラム缶をインベントリに入れてきた。

 というのも、後でリヴィに<水属性魔法>と<火属性魔法>を使ってお風呂を用意してもらうつもりだ。

 毎日入らないと気が済まないからな。


 野営の準備を終えた俺たちは塔内部へと足を踏み入れる。

 入ってすぐは長い一本道になっており、抜けた先には一階から最上階までが吹き抜けになった中庭があった。


 見上げると晴天が見える。

 いい天気だ。

 さーて、やるかね。


 俺は通路を背にして足を止めると、インベントリから一本の笛を取り出す。


 刹那、俺が何をするのか分かったのであろうゼムが大きなため息を吐いた。

 しかし、この笛の存在を知らない三人は不思議そうに俺の方を見てくる。


 俺は大きく息を吸い込み、思いきり笛を吹いた。


 すると――思っていた以上に()()()()()


 吹き抜けになった中庭に塔内部の至る所から足音と何かを引き摺る音が鳴り響いてくる。


 ハハハ。

 やべえ。

 どこまで届いたんだろ。


 俺がチラリと後ろを一瞥するとゼムが目をひん剥いて大口を開けている。

 他の三人は何が起こったのかわかってない様子だが、足音などは聞こえているのでキョロキョロと辺りを見渡していた。


 数秒後、足音と引き摺る音の正体が中庭の向こうからゾロゾロと現れる。

 蛇の顔に人間そっくりの体、腕や背中には鱗がついており長い尻尾は地面を擦っているこいつが蛇人間(スネークマン)だ。


 蛇人間(スネークマン)は刀身の太いサーベルを主武器として戦うが、中には噛みつきや鉤爪攻撃などを使ってくる厄介な個体がいる。

 というのも蛇人間(スネークマン)の牙や爪には猛毒があり、<MEN(異常耐性)>が低い者が攻撃をくらうと数分で死に至るのだ。


 まあ、俺は<MEN(異常耐性)>が高いので問題は無いんだけどね。


 俺は蛇人間(スネークマン)が中庭の中央までやってきた所で『チャレンジハウル』を発動すると、敵意(ヘイト)が全て俺に集中し蛇人間(スネークマン)の先頭集団が手に持ったサーベルを勢い良く振り下ろしてきた。


 俺は新装備のミスリルの大盾を横に構え、数本のサーベルを受け止める。


 お、重てッ。

 さすがに数本を一気に受け止めるのは辛い。


 俺は『インパクト』を発動させ、先頭集団を吹っ飛ばす。

 そしてすかさず『ハウンドチェイン』を発動させて正面からの敵に集中した。


 とはいえ、次から次へと中庭の奥から蛇人間(スネークマン)が現れるのでリキャストタイムが空ける度に『チャレンジハウル』を発動させて俺だけに敵意(ヘイト)が向くようにする。


 抜けた奴が居ないか念の為にチラリと確認をしてみると黒鎖に捕えられた蛇人間(スネークマン)をゼムが大槌でぶん殴り、ミャオが短剣で切り刻んでいた。

 更にその後ろではリヴィが蛇人間(スネークマン)の弱点である<風属性魔法>を放ち、ヘススは<闇属性魔法>を放っている。


 よしよし。

 抜けたりしてないな。

 敵意(ヘイト)が飛んでる様子もない。

 これなら遅れは取らないだろう。


 などと考えながら、蛇人間(スネークマン)の攻撃を弾いていると聞き慣れない音が聞こえた。


『ペッ』


 何の音だ?

 聞こえたあとチクッとしたけど。


 俺はチクッとした方へと視線を落とす。

 するとズボンに小さな穴が開いていた。


『ペッ』


 先程と同じ音がまた聞こえた。

 と、同時に中庭に生えた草がジュッと音を立て溶ける。


 もしかして……。


 俺は大盾を縦に持ち直し左右を確認すると、黒鎖に捕らわれていた蛇人間(スネークマン)()を飛ばしている事に気が付いた。

 ズボンや草を見るにその唾が猛毒であろう事が一瞬で理解出来る。


 物が溶ける毒ってなんだ?

 うーん、わからん。

 毒の種類がわかった所で意味無いか。

 普通の毒じゃないってことは確かだ。


 IDO時代に無かった攻撃方法。

 恐らくスキルの類では無いだろうが……薄々は感じていた事が確信に変わった。


 ここはゲーム内ではなく現実だ。

 ダンジョン内の魔物とはいえ、ゲーム時代に設定されたシステム通りの動きだけをするわけではないのだろう。


「面白れえな……。面白えぞお前らァ!」


 俺は叫びながら正面の蛇人間(スネークマン)が振り下ろしてきた一本のサーベルにタイミングを合わせ『シールドバッシュ』を発動させてパリィする。

 体勢を崩した蛇人間(スネークマン)に向かって大きく一歩踏み出しスキルを発動させた。


 <騎士>スキル『レイジングスピア』:対象に槍を突き出し攻撃する。


 ――発動。

 右手に持っていた魔鉄製の槍が一直線に軌道を描き蛇人間(スネークマン)の口から後頭部まで貫通する。


 そのまま槍の刺さった蛇人間(スネークマン)を足で蹴飛ばし引き抜いた。

 蹴飛ばした蛇人間(スネークマン)は霧散し魔石がコトリと落ちる。


「行くぞオラァ!」




 ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~




「え? いきなりどうしちゃったッスか?」


 ミャオは突然叫びだしたタスクの方を見る。

 ワシは大槌を振りながらその問いに答えた。


「タスクはあんな感じじゃぞ?」

「いやいや! ましらの穴倉の時はあんな感じじゃなかったじゃないッスか!」

「あれが本来のタスクじゃよ」


 じゃが『嘆きの納骨堂』・『ましらの穴倉』・『蟒蛇の塔』……どれをとってもやはりタスクは異常としか思えん。


 敵意(ヘイト)はタスクに全て集中しており、他のメンバーには被害が一切出ていないものの、タスクの服の至る所が溶けボロボロになっている。


 そんな状態で、それだけ囲まれて、何故笑っていられる? お前さんは一体何者なんじゃ?


 ワシには自殺志願者のようにしか思えんぞ。


 ただでさえダンジョンに好んで潜る者は少なく、ダンジョンに潜る者たちは慎重に慎重を期す。


 だが、タスクは違う。


 初めて一緒に行った『嘆きの納骨堂』では何の打ち合わせもなくあの笛を取り出し問答無用で吹きおった。


 あれ以来ワシの常識が音を立てて崩れていった。


 改めて思うと初めて会った時からわからん奴だった。

 ワシの事を鍛冶王(キング・スミス)だとか、この世界の事を教えてくれだとか……。


 タスクは常識を知らなすぎる。


 生きてきた世界が違うかのような感覚すら覚えた。


 本当にため息しかでない。


 だが――惹きつけられてしまう。


 あの背中に、あの言葉に。


 タスクは言った。


 ワシが世界で一番腕の良い鍛冶王(キング・スミス)になると。


 それを信じられるだけの実力がタスクにはある。


 だからこそ思えた――。


「ワシらもやるぞ! いつまでもタスクが生きとるとは限らんからな!」

「いやいや! アレ絶対に死なないッスよね!? 死ぬ想像ができないんッスけど!?」



 あの男に最期まで着いていこう、と。



読んでくれてありがとうございますorz

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毎日一話ずつですが更新します!


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― 新着の感想 ―
[良い点] 読み始めたばかりだけど、めっちゃ惹き込まれる!面白いです!素敵な作品をありがとうございます!
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