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インフィニット・ダンジョン・オンライン《Infinite Dungeon Online》  作者: 筋肉式卓一同+α
第三章:《北の大陸編》
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159話:観戦者たち


 ~Side:ミャオ&リヴィ&ヘスス~


 


 巨木の化け物は一方的に攻撃を続ける。


 その間、タスクさんは防戦一方で伸びてくる蔦や振り下ろされる腕を弾きながら、魔力ポーションをインベントリから取り出しては咥え、首だけを傾けて中身を飲んでいた。


 あー、もう見てらんないッス。

 一人で戦うなんて無理があったんッスよ。

 まともに反撃すら出来てないじゃないッスか。


 アタシは腰に付けた魔法鞄から矢を取り出し、“クレセント”の弦に指を掛け、『パワーショット』を放った。

 するとタスクさんは大盾を投げたかと思うと、『シールドアトラクト』で転移し、アタシの放った矢を背中で止める。


「ンなッ!? 何やってるッスか!?」


 確かにアタシの声は届いているはずだが、タスクさんは巨木の化け物の攻撃を弾き飛ばすだけで返事は返ってこない。


 ……無視ッスか。

 それじゃあ、アタシも好きにやらせてもらうッスよ。


 再度、アタシが“クレセント”の弦に指を掛けると、隣に居たリヴィとヴィクトリアさんがアタシの腕を掴む。


「何で止めるッスか?」

「……手を出さないでって言ってたから。」

「リヴィ様の仰る通りです。それに、私だって我慢していますのにミャオ様だけ攻撃するのはズルいですわ」

「……ヴィクトリアさんはちょっと黙ってて。」


 リヴィはチラリとヴィクトリアさんを睨むと、ヴィクトリアさんは「ほんの冗談ですのに」と言って観戦を再開する。

 そしてリヴィはアタシの方へと向き直り、口を開いた。


「……多分、あそこに埋まってる人はタスクさんの大事な人なんだと思う。……私の予想だけど『流レ星』の人じゃないかな。……だから一人でやるって言ったんだと思う。」

「それはアタシも分かってるッスよ。そうだとしても、アタシたちに手伝わせてくれてもいいんじゃないッスか?」

「……私も同じ気持ちだよ。……でもね、ミャオはもし私が殺されたら、私を殺した人をどうしたいと思う?」

「それは……」


 もしリヴィが殺されたとしたら、アタシは刺し違えてでもリヴィを殺した犯人をこの手で殺したいと思う。


 それと同じ事をタスクさんが考えてるのは分かるッス。

 分かってるからこそ、アタシは手を出したいんッスよ。

 あのままだと本当に刺し違えかねないッスから。


 現にタスクさんは弾ききれなかった巨木の化け物の攻撃を体に受け、至るところから出血してなお戦い続けている。

 その表情にはいつもの笑み……余裕はなく、見ているアタシまで苦しくなってくるような苦悶の表情に染まっていた。


 それでもリヴィは冷静な表情で言葉を続ける。


「……今はタスクさんの気が済むまでやらせてあげよ。」

「もし、それで死んじゃったらどうするッスか?」

「死なせない! あの時とは違って、今回は私たちが傍に居るんだから!」


 真剣な眼差しで、ハッキリと、リヴィは言い放つ。


「あー、もう! わかったッスよ! でも、本当に危ないと思ったら、すぐに手を出すッスからね?」

「……うん。……その時は、私も。」



 負けんじゃねーッスよ、タスクさん。



 ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~



 会話を終えたミャオは“クレセント”を強く握りしめ、タスクさんと巨木の化け物の戦いに目を向ける。


 私もそちらを見ると、タスクさんは攻勢に出ていた。

 どうやら防戦一方だったのは魔核スキルのリキャストタイムが空けるのを待っていただけだったようで、巨木の化け物の攻撃を弾き飛ばした後、天高くから光線を降り注がせる。


 あの光線は私の魔法以上の威力があるように見えた。

 そんな光線を全身に浴びながらもタスクさんに攻撃を続けている巨木の化け物を見ていると、先程ミャオに言った言葉が本当に正しい事だったのか分からなくなってくる。


 それでも……。


 私は正しかったと思いたい。


 以前、レヴェリア聖国でミャオが殺されそうになった時、私は生まれて初めて溢れんばかりの怒りを覚えた。

 殺されそうになったというだけでもそうだったのに、タスクさんの場合は大事な人を殺された状態で目にしている。

 その上、その犯人が目の前に居るのだから、タスクさんの心の中が怒りで溢れかえっている事など想像に難くない。


 出来る事ならタスクさんの言う通り、私たちが手を出さずに仇を取ってほしいけど……恐らく、タスクさんが負ける。


 <占い師>スキル『フォーカスト』:第六感の強化。


 虫の知らせというのだろうか。

 上手く言葉には出来ないけど、『フォーカスト』を掛けて観戦していると、何となくだけど少し先の事がわかる。


 でも、負けるという事が確定している訳ではない。

 だからこそ、私はタスクさんの気が済むまで一人でやらせてあげたいと思った。

 

 

 ……頑張って……タスクさん。



 ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~



 巨木の化け物に三発目の光線が天高くから降り注ぐ。


 戦い初めてから既に二十分以上が経っている上、三発の光線が直撃しているにも拘わらず、巨木の化け物はものともしていない様子で攻撃の手を止めない。


 それとは裏腹にもう何本目かわからない魔力ポーションを口にするタスクは苦しそうに肩で息をしており、巨木の化け物の攻撃を弾く精度も徐々に落ちてきている。


 もう無理だ。

 何度もそう思った。


 しかし、拙僧は手を出せずにいる。

 というのも、あれだけボロボロの状態になりながらも巨木の化け物に向かっていくタスクの目が死んでいないからだ。


 とは言っても、“かたいたて”のスロットに空きはない。

 空きがないということは、タンク職であるタスクの攻撃手段……奥の手がもう無いということを意味している。


 それなのに何故、折れないのであるか? 勝機があるのであるか? 拙僧らは待って良いのであるか? もどかしい。


 逆転は有り得ないから、勝ち目は無いからと可能性を切り捨てて、今すぐにタスクを回復してやればいいのだろうが、それをしてしまうとタスクの気が済まないだろう。

 だからといって、このまま拙僧らが何もせず見ているだけでは、いずれタスクが倒れる事は目に見えている。


 どうするべきかと考えながら拙僧は、タスクと巨木の化け物の戦いを観戦している七人を見回した。


 ミャオとリヴィは、不安を押し殺すように手に持つ武器を強く握りしめて、タスクの戦いをジッと見つめている。

 少し前に二人が話していた内容を聞いていた限り、タスクの気が済むまでは手を出さないつもりなのだろう。


 ヴィクトリアと虎徹は、真剣な表情を浮かべながら観戦してはいるが、二人とも内心を隠しきれていない。

 巨木の化け物が攻撃する度に体がピクリと反応しているあたり、巨木の化け物と戦ってみたいのだろう。

 

 フェイ・カトル・ポルの三人は万が一にもタスクが負けるとは思っていないのか、巨木の化け物の攻撃を見ては「あの攻撃がきたらどうする」などの会話をしていた。


 子ども三人を除く四人が直ぐにでも飛び出せる現状、拙僧もタスクが危なくなるまではこのまま観戦を続けよう――と思ったその時、巨木の化け物は攻撃の手を止め、辺り一帯に響き渡るほどの声で笑い始めた。


「グハハハハ! 俺様ノ攻撃ヲ、ココマデ防グトハ、ナカナカ、ヤルナ小僧! 死ヌ前ニ、オ前ノ名ヲ教エロ」


 ニィと笑うタスクは口から垂れていた血を袖で拭い、肩で息をしながら巨木の化け物の問いに答える。


「……俺は死なねえから、お前に教える事は何もねえよ」

「ソウカ。ナラバ……死ヌガ良イ!!」


 巨木の化け物はタスク目掛けて両腕を振り下ろす。


「……お前がなあッ!!」


 そう叫びながら、タスクは振り下ろされる両腕に真正面から突っ込んでいき、耳を塞ぎたくなるような金属音を響かせて大盾と両腕が衝突する。



 刹那、巨木の化け物の両腕が弾け飛びズタズタに裂けた。



読んで頂き誠にありがとうございますorz


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