番外編:大晦日【イラスト有】
新年、明けましておめでとうございます。
今年も筋肉式卓一同+α共々《Infinite Dungeon Online》をよろしくお願い致します。
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――大晦日の夜。
『ゴォーン、ゴォーン、ゴォーン』
屋敷の外から大きな鐘の音が聞こえてくる。
例の如く、IDO時代からの仕様で、屋敷のあるシャンドラ王都内で打ち鳴らされている訳ではない。
なので、どこに居ても聞こえるため――。
「ね、眠れないッス……」
「あー! うーるーさーいー!」
「毎年の事とはいえ、慣れないものだな」
こうなる。
まあ、ぐちぐちと文句を言ってるのはミャオ・ポル・ロマーナの三人だけで、他のメンバーはと言うと特に気にする様子も無く、それぞれ何か別の事をやっている。
「うーい。おまたせ」
「ん? タスクさん、お蕎麦作ってたッスか?」
「おう」
「さっき晩御飯食べたッスよね? ボケちゃったッスか?」
「違うわ! 今日が一年最後の日ってのは知ってるよな?」
「もちろん、知ってるッスよ」
「元、俺の居た世界で今日は“大晦日”っていって、年を越す際に蕎麦を食う習慣があるんだよ」
俺がそう言うとリヴィは読んでいた本を閉じ、首を傾げながらこちらを向くと、質問を投げてくる。
「……何でお蕎麦なの?」
「蕎麦は他の麺類より切れやすいだろ? それと今年一年の災厄を切るってのを掛けての意味らしいぞ」
「……そうなんだ。……なんか無理やり――」
「何も言うな。とりあえず作ったんだから黙って食え」
ミャオ・カトル・ポル・虎鐵の四人には高価な魔牛の肉を使った肉蕎麦を、リヴィとへススには新鮮な野菜と質の良いキノコの天ぷらだけをのせた天蕎麦を、ヴィクトリア・フェイ・ゼム・ロマーナ・ペオニア(先に届けた)の五人には肉と天ぷらの両方をのせたミックス蕎麦を、バトラ・アン・キラの三人には食べられないが形だけでもという事でかけ蕎麦を、それぞれダイニングテーブルの上に並べていく。
もちろん俺のお手製で、海藻や魚からしっかりと出汁を取り、麺も一から手打ちした自慢の蕎麦たちだ。
労いの意味を持つらしいネギも忘れてはいない。
「凄いですっ!」
「本格的ですぅ」
そうだろう、そうだろう。
伊達に数年間、独り暮らしをしていた訳ではない。
フハハハハ……ハハハ……ぐすん。
「まあ、食べてくれ」
全員が食べ始めた頃、寝ていた虎鐵が目を覚ます。
「む? 美味そうな匂いがする」
「おはよ。この音の中よく寝れるな」
「某は如何な場所でも寝れる。それより、蕎麦か?」
「おう。食え」
「頂こう」
虎鐵がズズズッと勢いよく蕎麦を啜る。
すると目をカッと見開き「ウマい!」と連呼していた。
他のみんなも美味しそうに蕎麦を食べてくれている。
そんな今年最後の光景を見た瞬間、俺は心の底からこの世界に来れた事に、この仲間たちに出会えた事に感謝した。
これは元の世界に居たら絶対に見られなかった光景だ。
そう思うと急に目頭が熱くなり、自然と眉間に皺が寄る。
「タスクサン? どうかしマシたか?」
「いや……なんでもねえよ」
「何か変な物でも入ってたの?」
「んな訳あるか。俺が作ったんだぞ」
「だいじょーぶ?」
感極まっていた俺の顔を見たフェイ・カトル・ポルは心配そうな表情を浮かべて覗き込んでくる。
辺りを見回すと、三人だけじゃなく、他のメンバーも箸を止めて横目で俺の方を見ていた。
「あー、なに、お前らに出会えたことに感謝してただけだ」
「なんじゃい。お前さんらしくないの」
「ゼムと同意見だな。キミがそんな感慨深げに物事を考える男だとは思ってもいなかった。キミはキミの目的のためだけにわたしたちを集めたんだとばかり……。すまない」
「んー、間違っちゃいないから良いんだ。だけどな――」
俺は全員の顔を見回し、言葉の続きを告げる。
「目的のためとはいえ誰でも良かった訳じゃねえよ。俺は守りたいと思える相手としか組まない。というか、死ねば終わりのこの世界では本気で守りたいと思える相手じゃないと、肝心な所で我が身惜しさに見捨てちまう気がしてな。そんな世界だからこそ、守りたいと思えるお前らとこうして出会えたことには感謝してんだよ」
少しの静寂が流れる。
なにポカンとしてんだよ。
的外れな事を言ったつもりは無いんだが? 俺一人じゃダンジョンを踏破する所か、魔物を倒すのにも手こずるんだ。
感謝くらい当然するだろ。
俺がそんな事を考えていると、ヴィクトリアは口元に手を当てて「クスッ」と笑う。
「ん? なんか、おかしなことを言ったか?」
「いいえ。申し訳ありません。立場が逆なのもので、ついつい笑ってしまいましたわ」
「どういう意味だ?」
俺の質問にヴィクトリアは立ち上がり答える。
「感謝しているのは私の方という事ですわ。ただ腐っていただけの私を救い上げてくれたのはタスク様。貴方ですわ」
「拙僧も同じである。教会のいざこざは主には関係がなかった。しかし拙僧のためだと解決してくれたのである」
二人の言葉を皮切りに一人、また一人と口を開く。
「アタシも感謝してるッスよ。冒険者として心が折れそうになってたアタシを拾ってくれたのはタスクさんッス」
「……私も。……ずっと独りぼっちだった私が、こうしてみんなと居られるのはタスクさんのおかげ。」
「ワタシもデス。捕まって奴隷にされたワタシを助けてくれマシた。それに修練もつけてくれマス」
「俺たちもだよ。ダンジョンでダリオスとレトナが殺されて、死にそうになってたところを助けてくれたじゃん」
「そーそー。あのままだったら私とカトル、死んでたよ」
「某もだ。危うく寄生蠕虫に殺されるところだった」
「ワシもじゃ。少し鍛冶を嫌いになりかけとったが、今は鍛冶が愉しくて仕方がないわい」
「柄にもなくわたしもだな。自慢じゃないが研究が進まない事で自害を考えた事すらある。キミと会えて良かったよ」
「わ、私もですっ! タスク様はこの屋敷を、私たちを助けてくれましたっ!」
「そうですぅ。ここを買ってくれたのがタスク様で本当に良かったですぅ」
「アン・キラ・バトラと私共に名を与えて頂いた事、心より感謝しております」
シレッと話を聞いていたのか、バトラが言い終わった所で外からぺオニアの声がした。
「私もです! 遊び人で何の取り柄も無かった私をドワルドラから連れだしてくれました!」
全員の言葉を聞いた俺は言葉を失った。
ロマーナの言う通り俺は俺のためだけに仲間を集めた。
ただ、かつての仲間たちと見れなかった光景だけ求めて。
それなのに……。
刹那、その場に居た全員が驚いた表情を浮かべる。
その理由はただ一つ、俺の瞳から頬へと流れるコレだ。
俺はテーブルに両肘を付き、両手を組んで額を乗せる。
「悪い……。あまりにも予想外だったわ……」
「それはこっちの言葉ッス。結構付き合い長くなってきたッスけど、タスクさんの涙なんて初めて見たッスよ」
「じゃな。何と言うかホッとしたわい。お前さんはダンジョン以外で感情を表に出さんからな」
「全くだ。キミはもう少しダンジョン外でも感情を表に出しても良いと思うぞ」
「出してると思うんだが?」
『どこが(ッスか・じゃ・ですか・デスか)!?』
ほぼ全員が声を揃えて声を荒げる。
その様子が可笑しくて俺は笑ってしまった。
「ハハハ。そんなに出てないか? ……わかった。来年からはもう少し努力するよ」
俺が言い終わるのと同時に、外で“爆発音”が響いた。
その音の正体は花火。
IDO時代からの仕様で年明けの合図だ。
「みんな、明けましておめでとう。今年もよろしくな」
「よろしくッスー!」
「……よろしく。」
「よろしくである」
「宜しくお願い致しますわ」
「よろしくデス!」
「よろしく!!」
「おー、よろしくー!」
「宜しくお願い致す」
「よろしくじゃ」
「宜しく頼む」
「よろしくです!」
「よろしくお願いしますっ!」
「よろしくお願いしますぅ」
「よろしくお願い致します」
俺は窓を開け、打ち上がる花火を全員で眺める。
「今年も生き延びて、また全員で新年の花火を見よう」
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