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インフィニット・ダンジョン・オンライン《Infinite Dungeon Online》  作者: 筋肉式卓一同+α
第三章:《北の大陸編》
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134話:快進撃



 屋敷を出てから一週間。


 俺たちは今『怪鳥の縄張』に来ている。

 既に『蠢く岩漿』と『渦巻く洞』の周回は終わっており、無事<炎属性魔法>と<源属性魔法>の能力(スキル)スクロールを入手できた。


 紙に書いていた内容の上から順番に終わらせても良かったのだが、パーティメンバーで話し合った結果、難易度五等級ダンジョンからさっさと終わらせてしまおうという事になり、ここで三か所目だ。


「ミャオー。そっち飛ばすぞー」

「了解ッス」


 俺は滑空してきた『怪鳥の縄張』のボス『迦楼羅王(キングガルーダ)』の攻撃に合わせ『パワーランページ』でパリィし、吹っ飛ばした。

 地面をゴロゴロと転がる迦楼羅王(キングガルーダ)を、ミャオの『ウィークアタック』と『パワーショット』を発動させた矢が襲う。


 放たれた矢は眉間を貫通し、迦楼羅王(キングガルーダ)は風の大魔石と素材、そして一巻のスクロールへと姿を変えた。

 

「うし、出た。これでここも終わりだな」

「厄介な相手でしたわね」

「あー、ヴィクトリアはやりづらかっただろうな。迦楼羅王(キングガルーダ)は自由自在に飛び回るから、コンボ繋がんなかっただろうし」


 迦楼羅王(キングガルーダ)は人間と鷲を足して二で割ったような姿をしており、頭と下半身が鷲、腕含む胴体が人間、そして背中に巨大な翼をもつ魔物だ。

 常に空を飛び回っており、攻撃する時にのみ下りてくるので遠距離攻撃を持っていない限り、普段は攻撃が届かない。


「でも、お前は<光属性魔法>使えるだろ」

「ええ」

「使えばよかったのに」

「私は気持ちよく相手を殴り飛ばしたいんですの」


 悔しそうに拳を握りながら言うヴィクトリア。

 その隣に居たミャオはニッと笑いながら口を開く。


「アタシは今回、楽だったッスよ」

「だろうな。弓を使うお前からすりゃ、ただの的当てゲームだっただろうよ」

「そーッスね。やっぱアタシは最初に行った、ニョロニョロが嫌だったッスね」

「……私も。……あのボス、気持ち悪かった。」

「ああ、溶岩灰鰻(ラヴァグレイール)な」


 溶岩灰鰻(ラヴァグレイール)とは『蠢く岩漿』のボスで、一言で言えば溶岩の中を泳ぎ回る大きなウナギだ。


「私はそちらの方が楽でしたわよ」

「殴ってて熱くないんッスか?」

「熱くなかったですわよ」

「相変わらず、なんて拳してんッスか……」


 ミャオはジトッとした目でヴィクトリアを見る。


 それもそのはず。

 溶岩灰鰻(ラヴァグレイール)は陸地に上がってくるとはいえ、体にはマグマが付着している。

 それをヴィクトリアは平気な顔……いや、笑顔で殴りとばしていた。


「誰にでも得手不得手はあるものだ」

「ロマーナさんは何かあるッスか?」

「特には無い……が、楽してる奴は人間も魔物も嫌いだ。だから、あの渦の中に居た奴なんかは嫌いな部類だな」

「ああ、『渦巻く洞』のボスッスね。アイツも渦の中から動かなかったんで楽だったッスよ」


 『渦巻く洞』のボスは『渦蟻地獄(ヴォルトリオン)』という、渦巻く水中に潜んでいるアリジゴクの魔物だ。


「私は見ているだけでしたので退屈でしたわ」

「だから俺が鎖で引っ張り出してやっただろうが」

「その後は殴り放題すぎて退屈でしたの。もっと張り合いのある相手と早く戦いたいですわ」

「うーん。次行く予定の『不動山』のボス『岩石竜(ロックドラゴン)』は硬いけど、アダマスドラゴンほどじゃないからな。張り合いは無いと思うぞ」


 そう言うとヴィクトリアは露骨に残念そうな顔をする。


 仕方がないだろ。

 難易度七等級の、それもレイドボスであるアダマスドラゴンと戦った後なんだ。

 難易度五等級のボスじゃ張り合いも何もないだろう。


 ん? いや、待て。

 難易度五等級でも一匹、面白いのが居た。

 だけど今は言わず行ってからのお楽しみにしておくか。


「とりあえず帰るぞ。思った以上に遅くなっちまったし」


 そう言って迦楼羅王(キングガルーダ)の大魔石と素材をインベントリに仕舞い、俺たちは『怪鳥の縄張』を後にする。



 屋敷に戻り、ダイニングの扉を開けるとカトルたちのパーティも既に戻って来ていた。


 ここ最近は毎日、安否確認も含めてみんな屋敷に戻って来させている。

 その代わりぺオニアの作ってくれた転移スクロールがマッハの勢いで溶けているのだが、これは致し方ない犠牲……コラテラルダメージというやつだ。


 俺がいつもの椅子に座ると、フェイ・ポル・カトルの三人が駆け寄ってくる。


「「「おかえりなさい!」」」

「ん。ただいま」

「タスク兄! これ見て!」


 カトルが魔法鞄をごそごそと漁り、取り出した物をテーブルの上に置く。

 それは<火属性魔法>・<水属性魔法>・<風属性魔法>・<土属性魔法>・<光属性魔法>・<闇属性魔法>の六属性全ての能力(スキル)スクロールだった。


「お? 全種、集まったんだな」


 よくやった、と俺が三人の頭を撫でてあげるとカトルとフェイは「えへへ」と照れながら笑う。

 しかし、ポルだけはプクゥと頬を膨らませた。


「どした?」

「私なーんにもしてないのに、褒められるのヤダ」

「何もしてない?」


 俺が首を傾げていると、ポルの代わりにカトルが答える。


「デスビィが強すぎて拗ねてるんだよ」

「あー……」


 なるほどな。

 そりゃそうなんだが……ポルは本来の<調教師>とは異なる思考を持ってるからなあ。


 普通<調教師>は前線で戦おうなんてことは思わない。

 その理由としては、ポルを含む<調教師>は全体的に基本ステータス値が低いのだ。

 

 しかしポルは契約した災害蜂を自分の家族だと思っており、肩を並べて戦いたいと思っている。

 そんな思いとは裏腹に災害蜂が活躍している中、ポル自身が活躍で来ていないのが悔しいのだろう。

 

「いいか? ポル。災害蜂がいくら強くても、それは災害蜂だけの強さじゃない。ポルが契約して、ポルがレベルを上げて、ポルが進化させたからこその強さだ。それはポルの強さでもある。わかるな?」

「うん……」

「だから焦んな。今は災害蜂が強すぎるかもしれんが、それは今だけだ。これからは災害蜂だけじゃどうしようもないダンジョンなんかいっくらでも出てくる」

「ほんと?」

「ああ、ほんとだ。そん時にポルが、虫たちと一緒に戦ってやればいいさ」

「うん。わかった!」


 事実、災害蜂だけでは難易度九等級以上のダンジョンでは秒殺されるのがオチだ。

 なのでポルの為にも早く北の大陸や次元の間、そしてその先にある天界や地界に連れて行ってあげないとな。

 その四か所には災害蜂並み……いや、災害蜂以上の虫種の魔物が生息している。

 ソイツらと契約を結ぶことが出来ればポルは間違いなく化け物になるだろう。


「ねえ? タスク兄! このスクロールはぺオ姉に渡したらいいの?」

「ああ。フェイとヴィクトリアの二人が<魔法適正>を持ってるから複製しないといけないしな」

「わかった! 後で渡しに行ってくるね」

「よろしく。ところでカトルたちは明日からどこ行くんだ?」

「タンクのフェイを強くしたいから『堅牢の防塞』に行く予定だよ!」

「難易度六等級か。気を付けろよ」

「大丈夫! 災害蜂とヘス兄がついてるし!」

「某も居るぞ」

「虎鐵兄、災害蜂に討伐数負けてるじゃん」

「む? 明日は勝ーつ」


 虎鐵()……ね。

 どうやら向こうのパーティも愉しくやれてるようだ。


 良かった良かった、と思いながらカトルたちのやり取りを眺めていると、ゼムが近付いてくる。

 

「なあ、タスク」

「どした?」

「本当に出来上がった物から渡さなくてもいいのか?」

「ああ。まだ大丈夫だ。もし今使ってる装備が壊れた奴が居たら先に渡しても良いけど」

「わかったわい」

「順調か?」

「誰に言っておるんじゃ? 既にお前さんとミャオ、リヴィ、ヴィクトリアの嬢ちゃんらの分は出来上がったわい」

「さすがだな」


 フンッと鼻を鳴らしドヤ顔のゼム。


 このまま何事も無く全員の武器ができ、テンコレが終わり次第……。



 北の大陸を〝侵犯〟してやろう。



読んで頂き誠にありがとうございますorz


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