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インフィニット・ダンジョン・オンライン《Infinite Dungeon Online》  作者: 筋肉式卓一同+α
第三章:《北の大陸編》
147/184

129話:鉱山竜アダマスドラゴン(中)


 ~Side:虎鐵~


 


 ――凄い。


 それ以外の言葉が出てこなかった。


 大岩をも容易く砕きそうな大槌を軽々と片手で振り回しているゼム。

 縦横無尽に走り回りながら弦を引き、正確に矢を放つミャオ。

 水晶の放つ光線を至近距離で避けながらも全力で殴りつけているヴィクトリア。

 そして、その三人の後ろからバフを掛け支えているリヴィ。


 (悪ぃけど、俺に才能は無えよ)

 (……何を。お主に無いなら一体誰が持っているんだ)

 (うーん。あいつらとか)


 タスクが申していた事は誠だったか。


 正直、某が挑んだ相手がタスクで良かった。

 攻撃しているあの三人、特にミャオやヴィクトリアが相手だったらと考えただけでもゾッとする。

 間違いなく骨折だけでは済んではいなかっただろう。


 なれど、やはりタスクに才が無いとは思えん。

 無論、強さもそうだが某には強さとはまた違った別の才を持っているように見える。


 それは――天分を見抜く才。

 加えて、才ある者を伸ばす術をも持っている。


 某が修行を始めて百と三年。

 一日も欠かすことなく続けてきた。

 なれど、目の前の光景はその修行の全てが無駄だといわんばかりに打ち砕く。


 全く……残酷なものだ。


 某は戦っている四人をただ見ながら、左腕の傷が癒えるのを待っていた。

 一発食らっただけで、こうも傷付く自分の脆弱さが情けない。

 悔しくなりギュッと右拳を握り、下唇を噛む。


 そんな某の隣へリヴィが近付いてきた。


「……あの。……大丈夫ですか?」

「うむ」

「……では、バフを掛けますね。」

「感謝致す」

「……はい。」

「お主に聞きたい。某はどうすればお主らのように強くなれる?」


 某にバフを掛けながら目を合わせようとしないリヴィの顔をジッと見ながら問いかける。

 するとリヴィはキョトンとした表情をした後、瞳を右に左に動かしながら小さな声で答えた。


「……虎鐵さんは強いと思いますよ?」

「何故そう思う?」

「……タスクさんと戦ってる所……見てましたから。……私が虎鐵さんだったらあんなに立ち上がれません。……ですから、その……虎鐵さんは心の強い人だと思います。」


 実力ではなく心か。

 それならば買いかぶりだ。

 某は虚勢を張る事でしか折れそうな心を保てない小心者。

 ただ負けず嫌いであるがゆえ、才ある者との差を修行で埋めようと藻掻いてる道化でしかない。


 その続けてきた修行ですらたった今、砕かれ――。


「虎鐵サン!」

「虎鐵さん!」

「もじゃもじゃー!」


 某を呼ぶ声が後ろから聞こえる。

 振り返るとこちらに掛けてくるフェイ・カトル・ポルの三人の姿が見えた。


「どうしたのー?」

「怪我したの?」

「大丈夫デスか?」


 心配そうな表情を浮かべ、某に近付いてくる。

 三人の顔を見上げた時、自分の言ったことをふと思い出した。


 (未だ修行中の身ゆえ至らぬ点も多い。なれど、某が持てる力は全てお主らの為に振るうと誓おう)


 そうだ。

 某が未熟な事など百も承知でこの者らに誓ったばかりではないか。

 それなのに、何をミャオたち三人に気圧されいる。

 そんな暇など無いではないかッ!


「もう心配無用だ」

「なら良かった! あ、そうだ! 虎鐵さんちょっとステータス見せてくれない?」

「あい、わかった」


――――――――――――――――――――――――

【ステータス】

<名前>虎鐵

<レベル>57/75

<種族>鬼人

<性別>男

<職業>刀剣士


<STR>C+:0

<VIT>D-:0

<INT>D-:0

<RES>D-:0

<MEN>C-:0

<AGI>A:250

<DEX>A:250

<CRI>B-:50

<TEC>D-:0

<LUK>D+:0

残りポイント:20


【スキル】

下位:<剣士><剣術><刀術>

上位:<刀剣士>

――――――――――――――――――――――――


 某がステータスを開くとカトルはまじまじと眺めていた。

 その後もスキルの詳細などを開いてほしいと言われ、その通りにする。


 一通り見終えたカトルは頷き、口を開いた。


「覚えた! ありがとう!」

「礼には及ばん」

「それじゃあ、フェイ、ポル、虎鐵さん! 俺たちも行こう! ミャオ姉たちに負けてられないよ!」


 カトルの掛け声と共にフェイとポルは水晶に向けて駆け出す。

 某もその後ろを追うように駆けた。


 刹那、フッと体が更に軽くなる。

 体を見ると薄っすら発光していた。


「何だこれは?」

「ああ、俺のスキルだよ! コマンダーバフって言って俺の指示通りに動いてさえくれればパーティが違っても強化されるんだ」

「……」


 某が言葉を失った――その時。


「おいでっ! デスビィくん!」


 突如現れた一匹の巨大な蜂が翅音を立てながらポルに近付き、背中にひっ付く。


「何だそれは?」

「デスビィくん、私の家族だよー!」

「……」


 もしやとは思っていたが、タスクの言った“あいつら”の中にはやはりこの子たちも入っていたのか。

 という事は……。


「タスクサンに言われて来マシた! 水晶の攻撃はワタシが引き受けマス!」

「助かるッス!」

「お任せ致しますわ」

「無理はするなよ嬢ちゃん!」

「ハイッ!」


 フェイは大きな返事をしながら、飛んできた光線を腕に付けた小盾で難なく弾く。


 ふっ。

 フハハハハ。

 もう笑いしか出ん。

 なんだ『侵犯の塔』とは。

 化物の巣窟ではないか。


 ……もう迷わん。

 誓った以上、血反吐を吐こうともこの者らに追いつく。


 某が大太刀の柄に右手を添え構える。

 それと同時にカトルの声が辺りに響いた。


「フェイ、そのまま敵意(ヘイト)固定! ミャオ姉、ペネトレイトショット! ヴィク姉、イラ・メドゥラ! ゼム爺、パワーストンプ! ポル、斬!デスビィ、飛針! 虎鐵さん、穿ノ型!」

「カトルよ、穿ノ型だけか?」

「いや、()()()良いよ!」

「あい、わかった」


 某は大太刀を鞘から抜き放つ。

 そして――。


 <刀剣士>スキル『先ノ先』:敵スキル発動前に発動で威力上昇。

 <刀剣士>スキル『壱ノ閃』:初撃時、威力上昇。

 <刀術>スキル『穿ノ型』:貫通重視の斬撃。


 ――同時発動。

 某は力一杯地面を蹴り、水晶との間合いを詰める。

 そして横に薙ぐように大太刀を振った。


 が、『キィン』と音を立て弾かれる。


 やはり硬い。

 某の『先の先』と『壱ノ閃』、カトルの『バフ』、リヴィの『バフ』を掛けてなお、弾かれるか。

 なれど、負けんッ!


 某はもう一度スキルを発動させ、今度は大太刀を振り下ろす。


 <刀剣士>スキル『弐ノ閃』:二撃時、威力上昇。

 <刀術>スキル『豪ノ型』:威力重視の斬撃。


 が、またも弾かれる。


 何故、刃が通らん! やはり、某では……いかん! 弱気になっている暇などない! 手を緩めるな!


 一刀、また一刀と大太刀を振る。

 なれども、某含めその場に居る全員の攻撃は水晶に傷一つ付けることが出来ない。

 

 もう一度と攻勢に入った時、カトルが声を上げる。


「虎鐵さん! ストップ! ちょっとこっち来て!」

「あい、わかった」


 某は納刀しながら近付く。

 すると、カトルは突拍子の無い事を言いだした。


「虎鐵さん。俺たちを信じてくれる?」

「む? 何を今――」

「いいから答えて!」

「無論、信じる」

「じゃあ次に水晶が光線を撃つ時さ、真っ直ぐ突っ込んで」


 光線を食らえという事か? 何の冗談……とも思ったが、カトルの表情は真剣そのもの。

 ならば、某の答えは一つ。


「あい、わかったッ!」


 某は踵を返し、その時を待つ。

 その数秒後、水晶が淡い光を放った。


「虎鐵さん走って! 虎鐵さん以外は水晶から離れて!」


 カトルの声と共に某以外の全員は水晶から離れる。

 某は光線が放たれようとしている水晶に向かって駆け出した。

 そして――。


「今ッッ!! 虎鐵さん、対の先!」


 カトルの指示通りスキルを発動させる。


 <刀剣士>スキル『対ノ先』:敵スキル発動と同時に発動で威力()上昇。

 <刀剣士>スキル『壱ノ閃』:初撃時、威力上昇。

 <刀術>スキル『豪ノ型』:威力重視の斬撃。


 同時に水晶からは光線が放たれていた――が、某が居る方向とは反対側に飛んでいく。

 狙われていたのはフェイ。

 某と正反対の位置取りをしていたのだ。


 なるほど……これがパーティ戦か。

 良いものだな。

 


 某は歯を食いしばり、全身全霊をその一刀に籠める。



 振り下ろした大太刀はキィンと音を立てて、弾かれ……ずに()()()()



読んで頂き誠にありがとうございますorz


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毎日一話ずつですが更新します!

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