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インフィニット・ダンジョン・オンライン《Infinite Dungeon Online》  作者: 筋肉式卓一同+α
第三章:《北の大陸編》
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126話:虎鐵の誓約【イラスト有】



 PVP後、俺はダイニングに戻って来た。


 椅子に深く腰掛け、バトラが淹れてくれた紅茶を啜る。

 現実世界のコンビニで買った紅茶とは違い、良い香りが鼻へ抜けていく。

 

「あ゛ー! うまっ」

「恐縮にございます」

「タスク様、お行儀が悪いですわよ」

「いいんだよ。家なんだから」

 

 俺と一緒に戻って来ていたミャオ・リヴィ・ヴィクトリアの三人も椅子に腰かけゆっくりとしていた。


 因みに他のメンバーだが、ヘススは虎鐵の怪我を治療中、カトル・ポル・フェイの三人はその付き添い、ぺオニア・ロマーナ・ゼムの三人は各々生産中、アンとキラは晩御飯の準備中だ。


「そういえばッスけど、タスクさん途中で本気出してなかったッスか?」

「ん? 俺はいつも全力だぞ」

「いや、それは嘘っス。アタシと戦う時は手加減……ってそうじゃなくてッスね。なんか最後の方、虎鐵さんと少し話した後、盾を強化してまで突っ込んだじゃないッスか。てっきり虎鐵さんが死んじゃったかと思ったッスよ」

「……私も思った。」

「ああ、アレか」

「何だったんッスか?」

「まあ、少しイラついただけだ。気にするな」


 本人しか知らない事とはいえ、死ぬほどしてきた努力を才能の一言で片付けられたら誰でもイラつくだろう。

 ただでさえ『流レ星』といい、『侵犯の塔』といい、才能を持った奴が多いというのに。

 高いプレイヤースキルとか、星付き(ユニーク)スキルとか、高ステータスとか、不思議種族とか。

 あー、羨ましい。


「前から思ってたッスけど、タスクさんって沸点低いッスよね。アタシとかリヴィを見習った方が良いッスよ!」

「うるせえ、猫畜生」

「ンなッ! 何てこと言うッスか! 撃ち抜くッスよ!」

「おう、沸点低いな猫」

「もう撃つッス」


 その時、ダイニングの扉が開きヘスス・カトル・ポル・フェイ・虎鐵の五人が入って来た。

 ダイニングの有様を見た五人は一様にギョッとした表情を浮かべる。


 それもそのはず。

 既にミャオは弓を引絞り、鏃の先を俺に向けていた。

 それをリヴィが後ろから抱き着くように止め、その隣ではヴィクトリアが呑気に紅茶を啜っているのだ。

 何も知らない五人からすれば何事かと思う事だろう。


 そんな中、俺は普段通りの表情で五人の方へと近付いて行った。


「お疲れ。治療は終わったのか?」

「無事終わったのである。……それでタスク、これはどういう状況であるか?」

「気にするな」

「承知した」


 後ろで「離すッス!」とか言っているが気にせず、俺はカトルたちの方へと視線を移す。


「で? どうなったんだ?」

「ん? 何が?」

「虎鐵を勧誘したんじゃないのか?」

「それがさー、俺たちが走って行った時、既に虎鐵さん白目剥いて気絶しちゃってたんだよね」

「いやあ、面目ない。我慢の限界だったんだ」


 俺は気絶するほどの威力を出したつもりは無い。

 というか、出ない。

 だとすれば考えられることはただ一つだ。

 こいつ、<VIT(生命力)>がペラいな。


「なれども、勧誘とは?」

「ああ、虎鐵を――」

「タスク兄、待って!!」


 俺が説明しようとすると、隣に居たカトルが声を荒げて言葉を遮る。

 勧誘するのを止めたのか?とも思ったが、カトルの真剣な表情が違うと物語っていた。


「俺が言うよ。このパーティのリーダーは俺だから」

「……そうだな。すまん」


 驚いた。

 一瞬、言葉が出なかったぞ。

 カトルも成長してるんだなあ。

 兄ちゃん嬉しいぞ。


 俺が感極まっている隣で、カトルが虎鐵の方を向く。


「虎鐵さん。お願いがあります!」

「あい、わかった。引き受けよう」

「俺たちの……って、え? まだ言ってないんだけど」

「む? 言う必要など無い。先刻も申したが某はお主らに命を救われたんだ。なれば、某に出来る事はどんな事でもやろう。それがたとえ死地へ赴く事だろうともな」

「……」


 フッと微笑む虎鐵。

 それをフェイとカトルは困惑した表情で見ていた。


 いや、話は最後まで聞いてやれよ。

 どんな内容でもやるっていう心意気は良いけどさ。


「虎鐵」

「む?」

「ちょっと黙っとけ」

「あい、わかった」

「カトル。いいぞ」

「う、うん。タスク兄ありがとう」


 改めてカトルは真剣な面持ちで虎鐵の方を向く。


「虎鐵さん、お願いします! 俺たちのパーティに入ってください!」

「…………」

「まだヒーラーは居ないんだけど、頑張って探すから!」

「…………」

「こんな子供だけのパーティじゃダメかな?」

「…………」

「あれ? 虎鐵さん?」

「…………」


 カトルが右に左にと顔を覗き込む。

 それを黙ったまま見下ろす虎鐵の視線は左右に動くカトルを追っていた。

 

「おい、虎鐵」

「…………」

「……喋って良いぞ」

「あい、わかった」

「カトルの話は聞いてたか?」

「無論」

「じゃあ、なんで返事しなかったんだ?」

「お主が某に黙っていろと申したのではないか」


 ははーん? わかったぞ。

 こいつ、さては馬鹿だな?


 理解もせず“恩には恩、仇には仇、命には命で返す”だったかを決め事にしてたり、お願いの内容も聞かず引き受けたり、黙っとけと言われればひたすらに黙ってたり……馬鹿正直すぎるわ――嫌いじゃない。

 


「そうだが、そうじゃない。話を最後まで黙って聞いてやれって事だ」

「む? 黙って聞いていたぞ?」


 誰か教えてくれ。

 俺はどう言えば良いんだ? さっきまでは普通に喋れてたよな? うん、もう考えるをやめよう。


「うん、そうだな。俺が悪かったよ」

「うむ」

「だからカトルにちゃんと答えてやれ」

「あい、わかった」


 虎鐵はカトルたち三人の方に向き直り、突然正座をした。

 そして持っていた大太刀を自身の右隣りに置き、両拳を地面につくと深々頭を下げる。


「某、虎鐵は喜んでお主らのパーティに加入致す! 未だ修行中の身ゆえ至らぬ点も多い。なれど、某が持てる力は全てお主らの為に振るうと誓おう」

 

 虎鐵がお馬鹿でなければもう少し早く聞けたであろう答え。

 それが嬉しかったのか、カトルとフェイは顔を見合わせて笑い合う。 

 三人がちょくちょく冒険者ギルドに顔を出していたのを知っていただけに俺も少し嬉しくなった。


 後はヒーラーが加入すれば立派なパーティの完成か。

 しかし、まあ、このパーティのヒーラーは正直なところヘススでもキツいだろうな。

 というのもパーティメンバーが特殊すぎる。

 フェイは俺がタンクのイロハを叩き込むから問題ないが、問題はカトル・ポル・虎鐵だ。


 まずポルは何でもできるが何もできない。

 全ては契約魔物に依存するからだ。

 今は破壊蜂しか居ないが後の四匹で運用法がガラリと変わってくる。


 次いでカトルはバフしか掛けられない。

 相手に干渉するスキル、デバフと行動阻害が無いのだ。

 最上位職で覚えるかもしれないが、そうなればこちらも運用法が変わってくる。


 最後に虎鐵だが――()()良い。

 だが、そのうち最上位職を“二つの選択肢”から選ぶことになる。

 一つはDPS重視、そしてもう一つは、一撃の火力重視。

 ポルの運用法が決まってない以上、どちらかなど選びようがない。


 因みにDPSとは、『Damage Per Second』の頭文字をとった略称で、一秒あたりのダメージ量を算出した数値を意味している。

 

 と、こんな未完成のパーティのヒーラーを任される訳だ。

 相当な実力者じゃないと無理だろうなあ。

 まあ、それは追々だな。


 今はとりあえず――。


「虎鐵」

「む?」

「ようこそ、『侵犯の塔』へ。さっき、鍛えてやる暇はないと言ったが取り消す。『侵犯の塔』に入った以上、ゴリゴリ鍛えてやるよ」


 虎鐵はキョトンとした表情で首を傾げる。

 そして、とんでもない言葉を言い放った。


「某は『侵犯の塔』に加入してないぞ?」



 ……。



挿絵(By みてみん)


新メンバー、虎鐵のイラストです♪


読んで頂き誠にありがとうございますorz


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毎日一話ずつですが更新します!

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