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インフィニット・ダンジョン・オンライン《Infinite Dungeon Online》  作者: 筋肉式卓一同+α
第三章:《北の大陸編》
135/184

118話:上位職昇格4



「ラスト! ポル、斬!」

「ほいっ!」


 ポルの持つミスリルの糸が倒れている瞬閃犰狳(ジフマジロ)の腹部を切り裂く。

 起き上がろうとしていた瞬閃犰狳(ジフマジロ)は力なくその場に倒れ伏した。


 粒子が舞いながら、コトリと土の大魔石が落ちる。

 それと同時に一巻のスクロールが地面に落ちていた。

 私は地面に落ちたスクロールを拾い上げ、題簽を見る。



 そこには――<軽騎士>と書かれていた。


 やっと……やっと出た。


 『迸る球獣』に来てから既に一週間が経過している。

 その間、私のために一緒に戦ってくれたカトル・ポル・ロマーナさん・ヘススさんはもちろん、今もボス部屋の外で待ってくれているタスクさん・ミャオさん・リヴィさん・ヴィクトリアさん・ぺオニアさんには感謝してもしきれない。


 瞳の奥が熱くなり、ポロッと一滴の雫が落ちる。

 溢れ出る涙を堪えられない。


 泣きじゃくる私の両隣にカトルとポルがそっと近付いてきて――。


「おめでとー! フェイ」

「おめでとう! これでフェイも上位職だな!」


 と、笑顔で言ってくれた。

 

 ……嬉しい。

 これで二人と肩を並べられる。

 もっと強くなれる。


「ありがとう、ございマス」


 私が二人にお礼を言うと、今度は背後から声が掛かる。

 振り向くと、そこにはヘススさんとロマーナさんが立っていた。


「フェイ。キミの努力が実を結んだ事をわたしは嬉しく思う。おめでとう」

「よく頑張ったのである。おめでとう」


 そう言いながら二人も私に微笑みかけてくれる。


「ハイ。ありがとうございマス」

「では、戻ろうか。タスクたちも待っているだろうしな」



 こうして私たちの『迸る球獣』の周回は幕を閉じた。

 


 ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~

 


 俺たちが『迸る球獣』のボス部屋前で待っていると、通路の奥からフェイ・カトル・ポルの三人が勢いよくこちらに走って来るのが見えた。


 ロマーナとヘススが居ない事に嫌な予感がしたが、それもすぐに杞憂だったと気付く。

 三人の笑顔を見れば誰でもわかる事だ。

 

「お疲れ。終わったんだな」

「ハイ! 終わりマシた」


 フェイは魔法鞄から<軽騎士>の昇格スクロールを取り出し、両手で大事そうに持ちながら俺に見せてきた。

 

「おめでとう。頑張ったな」

「おめでとーッス!」

「……おめでと。」

「お祝い申し上げますわ」

「おめでとうございます!」

「皆サン、ありがとうございマス」


 フェイはポロポロと涙を流し頭を下げる。


 嬉しいよな。

 わかるぞ。

 俺もそうだったから。


 初めて上位職のスクロールを手に入れた時はオールナイトだったっけか? しかし、まあ、よくやった。


 俺がフェイの頭を撫でてやると、ミャオとリヴィも一緒になって撫で始める。

 その間、フェイはずっと下を向いたまま泣いていた。


 フェイが泣き止んだ後、俺たちが『迸る球獣』から出るとヘススとロマーナが野営地を片付けていた。


「遅い……と、言いたいところだが、まあ、良い。早く片付けて帰るぞ」

「ん? 何か用事でもあるのか?」

「レベルが上がったからな。帰って研究の続きをしたい」


 ブレないな、こいつ。

 まあ、早く帰ろうってのは同感だな。


 『幽寂洞穴』といい、『迸る球獣』といい、二回連続で一週間も屋敷を空けたんだ。

 またお説教を食らうのか。

 

 俺はため息を吐きながら野営地の片付けをした。

 片付けが終わった所で、転移スクロールを全員に手渡し「ホーム」の文言で転移スクロールを使用する。


 屋敷へと戻って来た俺は玄関の扉に手を当て、ゆっくりと開けるとアンとキラが立っていた。

 

 毎回思うんだが、ずっと玄関ホールに居るの? 扉を開けて居なかった試しが殆ど無いんだけど。

 

「ただいま」

「「おかえりなさい!」」


 あれ? どうしたんだ? 上機嫌だ。


 不思議に思っていると、アンとキラは俺の横を通り過ぎフェイの元へと駆け寄った。


「フェイちゃんっ! おかえりっ!」

「スクロールはとれたぁ?」

「ハイ。一週間も掛かりマシたけど……」

「頑張ったねっ! おめでとっ!」

「おめでとぉ」

「ありがとうございマス」


 おお! 今回はお咎め無しっぽいな。

 良かった、良かった。

 

 俺は安堵し、ダイニングに行こうとした、その時。


「「タスク様?」」

「ん!?」

「「ちょっといいですか?」」

「今日は無いんじゃ?」

「「それはそれ、これはこれ、です!」」


 ニコッと笑うアンとキラ。


 ちくせう。


 小一時間ほど説教を食らった後、俺はダイニングに入りいつもの席に座る。

 すると、フェイがソワソワとしながら近付いて来た。


「あの、タスクサン。ごめんなサイ」

「ん? 何が?」

「アンチャンとキラチャンに怒られてマシたから」

「ああ、いつもの事だし気にするな。それに、アレは前の主人が出て行ったきり帰ってこなかった時の反動だから、フェイのせいじゃねえよ」

「そうなんデスね」

「ああ」


 そう言うもフェイは俺の隣で黙ったまま、未だソワソワとしている。


 まあ、言いたい事はわかっているが……。


「俺に許可を取る必要は無いぞ」

「エ?」

「昇格したいんだろ?」

「は、ハイ」


 許可なんて必要ないんだけどな。

 元よりフェイの為に取りに行った訳だし。

 まあ、スクロールが高価な物だという先入観があるからこそ、誰かの許可が欲しいのだろう。

 だとすれば、俺の答えは一つだ。


「それならフェイの好きに使えばいい。だが、どうしても使う許可が欲しいなら聞く相手を間違えてるぞ? 聞くなら俺じゃなくて一緒に頑張ってくれた四人に聞くべきだ。それはフェイたちのパーティが努力した結果であり、頑張って入手した物だろ? それを俺がどうこう口出しする気はねえし、出来るもんでもねえよ」

「そう、デスか」

「ああ。で? どうするんだ?」

「聞いてきマス」


 フェイはそう言いダイニングを出て行った。

 

 うん。

 これは、スクロールが高価な物だという先入観をさっさと消す必要があるな。

 というのも、スクロールを手に入れるための苦労を知ってしまったのが悪かったのか、フェイとカトルは帰りの転移スクロールですら使う事を躊躇していた。


 よし! ぺオニアをさっさと昇格させよう。


 俺は心を固め、立ち上がる。

 すると、ダイニングの扉が勢いよく開き、カトルとポルがフェイの両手をを引っ張りながら入って来た。


「「タスク兄!」」

「どした?」

「これ見て!」


 俺の近くまで来たカトルはフェイのステータスウィンドウを指さす。

 

 おいおい。

 ロマーナに続いてフェイまで星付き(ユニーク)スキルを覚えたんじゃないだろうな? もし、そうだったら泣くぞ。

 あー、俺も欲しい。


 少し期待しながらフェイのステータスを覗き込んだ。


――――――――――――――――――――――――

【ステータス】

<名前>フェイ

<レベル>1/75

<種族>念動粘体

<性別>女

<職業>軽騎士


<STR>D:0

<VIT>C:0

<INT>D+:0

<RES>C:0

<MEN>C:0

<AGI>D:0

<DEX>D:0

<CRI>D:0

<TEC>D-:0

<LUK>D-:0

残りポイント:10


【スキル】

下位:<騎士><棒術><魔法適正>

上位:<軽騎士>

――――――――――――――――――――――――


 星付き(ユニーク)スキルじゃないのか。

 じゃあ、どこだ? 特に変わったところは……。


 ……ッ!? 念動粘体!? 何て読むんだ!? ってか、種族が変わる事なんてあり得るのか!?


「フェイ! お前、大丈夫か? 体に違和感とか変な所とか無いか?」

「エ、特にないデスよ」


 キョトンとした表情のフェイ。

 その隣でカトルが「あっ」と何かを思い出したかのように声を漏らす。


「ん? どうした? 何かあるのか?」

「いや、もしかしたらさ、アレじゃないか? 『哮る枯れ井戸』の時の、さ?」

「あー。あれかー」

「あ、そうかもデスね」

「おいコラ。お前たちだけで納得するな。全て話せ」

「どうする?」

「どーしよ」

「どうしマス?」

「は・な・せ・コ・ラ」

「「「はい」」」

 

 ……。

 俺は目を疑った。

 開いた口が塞がらない。


 まだ慣れていないのか、相当ゆっくりだがフェイの指が、腕が、足が、顔が自由に形を変えている。


 どういう経緯でこうなったのかもすぐに問いただした。



 本当、お前ら。

 最高かよ。

 


読んで頂き誠にありがとうございますorz


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毎日一話ずつですが更新します!

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