113話:上位職昇格3
おおおおおッ!
俺は今、猛烈に感動している。
何故かと言えば、幽寂洞穴から帰って来てみれば一軒の家が出来上がっていたからだ。
いやはや、魔法や魔道具の力……恐るべし。
ワンルームとはいえ、まさか一週間で家が建つとは。
一週間と言えば、幽寂洞穴で行われたレベル上げの成果だが、擬態箱のレベルが57だという事もあり、俺・ミャオ・リヴィ・ヘスス・ヴィクトリア・ゼムの経験値の獲得上限であるレベル62まで上がり、他のメンバーはと言うと、カトルとポルは共にレベル51、デスビィはレベル31、そしてフェイとロマーナは下位職上限であるレベル50まで上がった。
ハハハ。
はい。
やりすぎました。
後ろに居るみんなはゲッソリとしていて生気がない。
ミャオとポルは四日目辺りから「休みが欲しい」と駄々を捏ね続けていたのだが、六日目辺りから静かになった。
そんなゲッソリとしているメンバーを引き連れ、俺が玄関の扉を開けると、アンとキラが仁王立ちで待っていた。
「た、ただいま」
「「……おかえりなさい」」
あ、はい。
いつものお説教タイムですね。
毎度のことながら二人には心配を掛けてしまうな。
だからといって、毎日戻っていたら転移スクロールの消費が馬鹿にならない。
ぺオニアには是非とも頑張っていただかなければ。
さっさと上位職に上げて、ばりばり働いてもらおう。
そんな事を思いながら、お説教されている間にダンジョンに行っていたメンバーはそれぞれの部屋に戻っていく。
さすがにぶっ続けのダンジョン探索は疲れたのだろう。
今はゆっくり休め。
そして明後日からまたダンジョンに……。
「タスク様っ! 聞いていますかっ!?」
「うん。聞いてない」
「「ちゃんと聞いてください!」」
顔を真っ赤にしたアンとキラが、グイッと顔を近付けながら怒る。
「ごめん。で、何だっけ?」
「ですから、各国の王様たちからダンジョンの攻略法が知りたいとのお手紙が届いていますっ!」
「それにお返事できるのはタスク様だけなんですぅ」
「あー、なるほどね。書庫の机――」
「そう言うと思って、もう置いてありますっ!」
「さすが、アン。ありがと」
『ライトフォース』を発動させ、アンの頭を撫でる。
すると隣でプクっと頬を膨らませてキラが睨んできた。
なのでキラの頭を撫で、二人を宥めた後、俺は二階の書庫へと入る。
そこには、二十通の手紙が置いてあった。
多くね? と思いながらも差出人を確認していく。
手紙の差出人と大まかな内容は以下の通りだった。
~東の大陸より~
・テア王女:私もダンジョンに行きたい
・グロース国王:ダンジョンの攻略法
・ヘンリー皇帝:ダンジョンの攻略法
・ランパート国王:ヴィクトリア、元気?
・ランパート国王:ダンジョンの攻略法
・ウィンスダム共和国:ダンジョンの攻略法
・レヴェリア聖国:新教皇の挨拶及び謝罪
・レヴェリア聖国:ダンジョンの攻略法
~南の大陸より~
・グレミー魔皇帝:フェイちゃん、元気?
・グレミー魔皇帝:ダンジョンの攻略法
・アザレア魔皇帝:タスク君、元気?
・アザレア魔皇帝:ダンジョンの攻略法
・コリント魔皇帝:『殺人一家』の脱獄報告
・コリント魔皇帝:ダンジョンの攻略法
・ヴノ魔皇帝:ダンジョンの攻略法
~西の大陸より~
・ガンディ獣王:ダンジョンの攻略法
・ラシュム精霊王:ダンジョンの攻略法
・ぺオニア:いつ迎えに来るの?
・ゴルド:素材や魔石の入荷日の件
・クラフト族王:ダンジョンの攻略法
……はあ? 一つ、シャレになってないものがあるぞ。
『殺人一家』ってあの自称神に愛された<大魔導士>と戦闘狂<拳闘士>とイカれた<暗殺者>だよな? 確か真祖レオンと一緒でアッサール魔帝国にある“あの監獄”にぶち込まれたハズだが。
……うん、知ーらね。
まあ、砂漠のど真ん中にある監獄だし、どっかで野垂れ死んでるだろ、多分。
にしても、レヴェリア聖国とウィンスダム共和国からもダンジョンの攻略法を教えろって……まあ、いいか。
俺は手紙に記載されているダンジョンの攻略法を一つ一つ書いて行く。
全ての返事を書き終わり、気付けば夕方になっていた。
昼食も摂らず作業をしていた俺は一階に降り、ダイニングに入る。
既に何人かは夕食を摂り始めていた。
そんな中、俺を見つけたロマーナが近付いてくる。
「タスク」
「ん?」
「あのだな」
「なんだよ」
「昇格スクロールを、だな」
「ああ、そういやそうだったな」
俺はロマーナに一巻の昇格スクロールを渡す。
ロマーナはしおらしく小声で「ありがとう」と言った。
「使ってみろよ」
「あ、ああ。では……」
ロマーナは一巻の昇格スクロールを勢いよく広げ、文言を唱える。
同時にロマーナの体を淡い光が包みこんだ。
「どうだ?」
「……ああ。最高の気分だ」
「おめでと」
俺の言葉に同調するように周りに居たヘスス・リヴィ・カトル・フェイ・ゼム・ヴィクトリアの六人もそれぞれ祝辞を送る。
突如、ロマーナは口角を吊り上げ、不敵に笑い、ブツブツと独り言を言いだした。
「ロマーナ、独り言は後にしてくれ」
「ああ、すまない」
「それよりも、ステータスを見せてくれないか?」
「もちろんだ。序でにわたしも見ておこう」
――――――――――――――――――――――――
【ステータス】
<名前>ロマーナ
<レベル>1/75
<種族>屍人
<性別>女
<職業>錬金術師
<STR>D-:0
<VIT>D-:0
<INT>C-:0
<RES>D:0
<MEN>C:0
<AGI>D:0
<DEX>C:0
<CRI>D-:0
<TEC>C:0
<LUK>C-:0
残りポイント:10
【スキル】
下位:<調薬師><針術><鑑定>
上位:<錬金術師>
最上位:<薬神の加護☆>
――――――――――――――――――――――――
よし。
ちゃんと昇格で来ているな。
ロマーナの上位職は<錬金術師>だ。
<錬金術師>とはポーションなどの薬類の調薬はもちろん、不純物の混じった金属の精錬や、魔石や魔物の素材の合成など幅広く活躍できる。
って……ん? はあ!? 何だこれ!?
「<薬神の加護☆>ってなんだ!?」
「まだわたしも見ていない」
「詳細を開いてくれ」
「わかった。その代わりわたしも一緒に見る」
――――――――――――――――――――――――
<薬神の加護☆>
・<調薬師>ツリースキル成功率上昇。
備考:パッシブスキル。
――――――――――――――――――――――――
は? 強ッ!
常時、スキルの成功率が上がるとかチートだろ。
IDO時代の成功率上げる課金アイテムいらないじゃん。
そんなことを思っていると、ロマーナはとんでもない事を言いだした。
「使えんスキルだな」
「はあ?」
驚きに俺が眉を顰めていると、ロマーナは呆れ顔で言い放つ。
「タスク。キミはそこまで頭は悪くないと思っていたんだが……わたしの思い違いか? よく考えてみろ? 成功率を神とやらに頼らなければならない時点でそれは半人前だろう? わたしは己の力のみで成功率を百パーセントにして見せる。それくらいしないと『侵犯の塔』の専属調薬師は務まらんと思っていたんだがな。違うのか?」
絶句した。
ド正論だ。
こいつ、ほんっとに面白い。
「ハハハ。そうだな。俺たちは間違いなく、この世界で知らない者の居ないクランになる。確かにそこの専属調薬師様が調薬ミスってたら笑われるな」
「だろう? だから使えんと言ったんだ」
「お前の言う通りだよ」
でも、星付きは羨ましいな。
くそう……俺も欲しい。
読んで頂き誠にありがとうございますorz
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