110話:帰宅
「ただいま」
「「おかえりなさーーーいっ!!」」
俺が玄関の扉を開けると、物凄い勢いでアンとキラが飛びついてきた。
……が、俺の体をすり抜け庭へと着地する。
そう、俺たちは今、シャンドラにある屋敷に帰宅した。
各国間講和も無事に終わり、各国の王とその護衛に転移スクロールを渡した後、グロースと一緒に帰国したのだ。
事後報告にはなるが、事の元凶である真祖レオンと教皇ミスカにはあの後それぞれに処罰が下された。
真祖レオンは目隠しをされたまま、アッサール魔帝国の“とある監獄”に一生幽閉される事となり、教皇ミスカはというと地位の剥奪はもちろん、レオンとは別の監獄に投獄される運びとなった。
まあ、死刑にならなかっただけ良かっただろう。
「俺たちが留守にしている間、何も問題なかったか?」
「はいっ! たったの数日間ですよっ?」
「私たちだけでも大丈夫ですぅ」
「なら良かった。アン、キラ。少し話があるんだがいいか? バトラも呼んでくれ」
そう言うと、二人は頷き、屋敷の中へと駆けて行った。
俺はダイニングへと行き、少し待っているとバトラを連れたアンとキラが入ってくる。
「おかえりなさいませ」
「ん。ただいま」
「それで、話とは何でございましょうか?」
「家を建てようと思ってるんだが、いいか?」
三人は一様に驚いた表情をする。
「ど、ど、ど、どういう意味ですかっ!」
「このお屋敷から出て行くってことですかぁ?」
「違う、違う。庭に一軒、離れの家を建てようと思っているだけだ」
「宜しいですよ」
「「えッ!?」」
二つ返事で許可を出すバトラ。
アンとキラは信じられないといった表情でバトラに視線を向ける。
「何か理由があるのでございましょう?」
「ああ。新たな仲間が『侵犯の塔』に加わる事になった。名前はぺオニア・アドルナート。巨人族だ」
「なるほど。納得でございます。そういう事でしたら、是非使ってくださいませ」
「助かる。ありがとな」
よし! これで離れが出来上がり次第、ぺオニアを王都シャンドラに呼べる。
それに、そこまで長く時間はかからないだろう。
一軒家、それもワンルームだけだからな。
『キーン、コーン』
屋敷の呼び鈴が鳴る。
俺は立ち上がり、玄関の扉を開けると、そこにはテアが立っていた。
「タスク様あああ!! 来ちゃいました!」
「いらっしゃい。ってあれ? テアだけ?」
「我も居るのだ」
おっと、居たのか。
グイグイ来るテアに目が行って、後ろに立っているグロースに全く気付かなかった。
失敬、失敬。
「どうぞ、上がってください」
「お邪魔しまーす!」
「タスク、あの件は――」
「あー。今、丁度、許可を貰ったところです」
「そうか。なら我は城に戻ってすぐに手配するのだ」
「上がっていかないんですか?」
「うむ。今回の件は世話になったからな。出来るだけ早くお主の“お願い”を叶えてやるのだ」
そう言って、グロースはテアを残し帰っていった。
というのも、俺は各国の王たちに三つの用事があると言ったが、正確に言えば各国の王に対しては『国力の強化』と『推薦状』の二つだけで、一つはグロースに対しての用事だったのだ。
それは、建築士と大工の手配。
屋敷の庭を管理しているバトラの許可が取れたら頼もうと思っていたのだが、その事をベルアナ魔帝都からの帰りに話したら「我も説得に付き合うのだ」と言ってくれたので屋敷に呼んでおいた。
まあ、二つ返事で許可が下りたので結果を聞きに来ただけになってしまったが。
早速、翌日から離れの工事は始まった。
数人が<風属性魔法>を使い、建材である木を次々とカットしていく。
隣では、家の土台部分である基礎を土と火の魔石を使った魔道具?を使い数人がかりで固めていた。
その結果。
一日で家の骨組みまで完成した。
普通に凄くね? 元の世界じゃ、こうはいかない。
新築が立つまで最短でも数か月単位で掛かったはずだ。
それが一日でこれかあ……。
魔法とか魔道具ってすげえ。
俺が感心していると、後ろから声が掛かる。
「タスクサン?」
俺が振り向くと、そこにはフェイ・ポル・カトルの三人が立っていた。
「ん? どうした?」
「ここって誰が住むんデスか?」
あ、そうか。
ぺオニアの事は俺とヴィクトリアしか知らないのか。
「新入りだ」
「どんな人なのー?」
「んー。来てからのお楽しみだ」
「俺たちのパーティに入れる?」
「無理だな。戦闘は出来ない」
「そっかー。私たちも早くダンジョン行きたいなー」
「行くか?」
「「いいの!?」」
「いいんデスか!?」
何を言っているのだ、この子たちは。
俺たちはダンジョンメインのクランなんだぞ? 良いに決まっているじゃないか。
というか、俺が行きたい。
「良いぞ。それなら明日から行くか」
「「「やったー!」」」
そうと決まれば、善は急げだ。
俺はクランメンバー全員をダイニングに集める。
「なんじゃい! 帰って来て早々!」
「明日からダンジョン行くぞ」
ゼムは大きなため息をつく。
毎度ながら唐突ですまんな。
そろそろ限界なんだ。
俺が心の中で謝っていると、ロマーナが口を開く。
「わたしは新しい薬の研究の途中なのだが?」
「ロマーナ。上位職に上げてやるから来い」
「よし、行こう。今すぐ」
「明日だって言ってんだろ」
「それで? どこに行くッスか?」
うーん。
正直、考えていなかった。
現在、俺たちのパーティの平均レベルは53くらい。
対してカトルたちのパーティの平均レベルは34くらい。
そしてゼムが44で、ロマーナが25。
丁度良い等級は無い。
……ならば。
「『幽寂洞穴』なんてどうだ?」
「どこッスか? そこ」
「マグニゲイル魔帝国の山奥にある難易度六等級のダンジョンだ」
俺の言葉で全員の頭の上に「!?」マークが付いた。
同時にロマーナは声を荒げて俺に言葉を放つ。
「六等級なんて無茶だろう! そんな場所にカトルたちを連れて行くなんて殺す気か?」
「んなわけあるか! 今回は“キャリー方式”でレベルの底上げをする」
「キャリー方式って何?」
「レベルが高い人がレベルの低い人を補助して、レベル上げを行う事だ。だから、今回のダンジョンはパーティメンバーを入れ替える」
またも予想外の事を言った俺を見て、全員は驚いた表情をする。
「具体的に言えば、タンクが俺、アタッカーがヴィクトリアとゼム、バッファーがリヴィ、ヒーラー役がロマーナで一つのパーティ。もう一つのパーティはタンクがフェイ、アタッカーがミャオとポル、バッファーがカトル、ヒーラーがヘススだ」
「それで大丈夫なんッスか?」
「ああ。俺を信じろ。滅多な事が起きない限り『幽寂洞穴』なら死ぬことはまず無い。それに、難易度六等級なら獲得経験値も多い上、レベル50を超えている連中にも経験値が入る」
「ボス部屋はどうするんじゃ?」
「入らない。今さっき伝えたパーティじゃ、まず勝てない。だからボス部屋を見つけても絶対に入るな」
全員が頷いたところで今日は解散した。
さて、明日は久々のダンジョンだ。
読んで頂き誠にありがとうございますorz
少しでも良いと思ったらブックマーク登録お願いします♪
評価の方もしていただけたら嬉しいです( *´艸`)
毎日一話ずつですが更新します!




