101話:襲撃鎮圧後(上)
俺は足を止め、拳をモーハの右頬に叩き込んだ。
今なんか一瞬、光った気がしたけど何だ? <光属性魔法>も使えるのか? それにしても<炎属性魔法>といい<空属性魔法>といい、コイツ<大魔導士>だったのかよ。
上位職なら上位職ですって、先に言っとけ!! 『フレイムショット』撃たれた時、結構熱かったわ!! まあ、そのおかげで我に返ったんだが。
地面に倒れたモーハは上体を起こし、声を荒げる。
「何故です!? 私の力が効かないなどあり得ません! 私は男神様に寵愛を受けた存在なのです! 選ばれた存在なのです! そしてこの<洗脳魔法☆>も……。貴方は何者なのですか!?」
……洗脳……魔法? まさか、星付きッ!? だから先に言えよ! ……ってか、危なくね? コイツ。
恐らく<MEN>依存で受ける魔法だろうから<MEN>が低いミャオとかヴィクトリアが相手だったらヤバかったぞ。
このまま始末しようか……なんてな。
監獄行きだろうから問題ないか。
「俺はタスクでそれ以外の何者でもねえよ。それと言っとくが男神様、男神様ってこの世に神なんて居るわけねえだろうが。居たとしてもあの男神じゃねえよ」
「……何を……言っている……のですか?」
「会ったことなんてないが、あの男神を少し知ってるってだけだ。他の神が居るなら話は別だが、あの男神が神ならこんな理不尽な世界なんて作らねえよ。だから居ないって言ってんだ」
パッと浮かぶだけでも、六つ。
高難易度ダンジョンの攻略。
高難易度ダンジョンの氾濫。
北の大陸内部の探索。
『次元の間』の突破。
『天界』への到達。
『地界』への到達。
今の『侵犯の塔』の全員で挑んだとしても、どうしようもない物がある。
その中でも次元の間の先にある『天界』と『地界』にだけは、IDO時代ですら行ったことがない。
アップデートされた時、既に俺以外『流レ星』のメンバーは居なかったからな。
だからこそ、今の仲間と愉しめるんだが。
「居る! 男神様はいらっしゃる! 私は御姿を見た! 私は御声を聞いた! 私は話をした! 男神様は私が導けと仰った! 私が咎人を皆殺しにして、間違った人種たちを新世界へ導けと! だから――」
「もういいや。寝てろ」
俺は大盾を取り出し『パワーバッシュ』でモーハの頭部を強打した。
数メートル後方に吹っ飛んだモーハはグルンと白目を剥き倒れる。
周りに居た取り巻きたちは、俺がモーハとやり合っている間にルガン・ゼファ・ジェラ・オード・クラリス・ヘンリーの護衛の六人が鎮圧し全員捕縛していた。
「お疲れ様ー! タスク君はやっぱり強いね! 僕の所に来ない?」
そんなことを猫なで声で言いながら、アザレアが抱き着いてくる。
「行きたいのは山々なんですが、シャンドラじゃないといけない理由があるので申し訳ないですけどお断りします」
「ざーんねんっ」
「ふははは。タスクは渡さないのだ」
「グロース王は話を聞いてたのかな? 理由があるだけで、本当は僕の所に来たいんだよ? ねっ? タス――」
「あ、ヘスス。ちょっといいか?」
面倒な事になりそうだったので、ヘススの元へと走る。
「何であるか?」
「悪いけど全員集めて来て貰えるか?」
「承知した」
そう言ってヘススは城の外へと走っていった。
すると、大きな羽音と大きな足音が壁の向こうから聞こえてくる。
「「タスク兄いいいいい!」」
「あ? うおッ! 危ねッ!!」
同時に俺を呼ぶカトルとポルの声がしたので上を向くと、二人が落ちてきた。
咄嗟に受け止める事は出来たが、落としそうになる。
「なんでここに居る?」
「ヴノ様に送ってもらった!」
「空を飛ぶの気持ちよかったー」
なん……だと……? 鷲獅子の背中に乗るなんて滅多な事じゃ出来ない経験しやがって……羨ましい。
そんなことを思っていると、ヴノが降りてくる。
同時に大きな音を立て、ステイブが着地した。
「我が輩の勝ちだ」
「負けちゃったー」
「ゴラァ! ステイブ! 負けてんじゃねえ!! もっと気合入れて走らんかい!!」
「おかえり。ヴノさん、クラフト族王、ステイブ族王。あれ? コリントさんは?」
「港の後始末をしている所だ」
「そうなんだね」
「では、我が輩は迎えに行ってくる」
「うんうん。よろしくね」
そう言ってヴノは再び飛び去って行った。
「カトル、ポル」
「「何?」」
「ヴノと一緒に居たんだな?」
「「うん」」
「港で何をしてたんだ? フェイはどこ行った?」
「「……」」
「おい。コラ。答えろ」
「「ごめんなさい!」」
カトルとポルが頭を下げる。
二人に詳しく聞いた事を纏めると「ベルアナ魔帝都の住民を守りたかったから、怒られる事を承知で戦いに行った」という事だった。
フェイも怪我一つなく、今はコリントとイリアスを手伝って港の後始末をしているらしい。
ついでに、ミャオやリヴィやヴィクトリアの事を聞いてみたが「知らない」との事だった。
三人も戦闘に巻き込まれたりしてんじゃねえだろうな。
……ヴィクトリアはあり得そうだ。
しかし、ミャオとリヴィは無いだろう。
それはともかく――。
「よくやった!」
「「へ?」」
「二人はフェイのために頑張ってきたんだろ?」
「「うん」」
「一人も殺してないんだろ?」
「「うん」」
「それで大した怪我なく帰って来たなら言う事はねえよ」
そう言いながら二人の頭を撫でると、ポカンとした表情をする。
何を呆けているのか。
仲間のために戦ったのだ。
褒めてあげるのが当然だろう。
フェイを一人で行かせてたり、大怪我負ってたり、人を殺してたりしたら怒ってたけど。
「後でフェイも褒めてやらねえとなあ」
「フェイ?」
城の牢から戻って来たグレミーが俺の呟きに反応する。
「タスク君、今フェイって言った?」
「言いましたけど」
「もしかして、フェイ・ツー・リィンデラ……?」
グイグイとグレミーが近付いてくる。
確かフェイのステータスウィンドウを見た時はフェイとしか書いてなかったはずだ。
ヴィクトリアとテアのステータスウィンドウに家名が入ってた所を見ると、人違いの可能性が高いだろう。
「違うと思いますよ」
「そっか……」
「その人を捜してるんですか?」
「そうなの。前の人種との戦いで亡くなったリィンデラ伯爵って貴族が居たんだよね。その娘さんが行方不明なの」
「そうなんですね」
「タスク君!」
あ、やべ。
捜してるのか、なんて聞かなきゃよかった。
頭探しの次は人捜しなんて嫌だぞ。
「なんですか?」
「捜すの手伝ってくれない?」
うん、まあ、知ってた。
「無理です。同じ名前なんて何人いるかわかりませんし、第一その人を知らないですから」
「そうだよね……。あー、でも、一応私が覚えてる範囲で伝えといていい? 見かけたら教えてくれるだけでもいいからさ。どうしても見つけないといけないんだよ……」
「まあ、それくらいならいいですよ」
「ありがと! 助かるよ。名前はさっきも言ったけど、フェイ・ツー・リィンデラで」
うん。
「歳は今年でちょうど十歳だったはず」
うん?
「それで、種族は魔人種の粘体族で」
うん? うん?
「強めな語尾の少し独特な女の子」
うん。
その子、知ってた。
「なんだけど。これだけでごめんね? 絵とかあれば良かったんだけど持って無くて」
隣で話を聞いていたカトルとポルが珍妙な物を見るような目で俺を見てくる。
俺は悪くないだろうが! 本当に知らなかったんだから! てか、フェイって貴族だったのかよ! 話を聞く限り父親が殺された後に捕まって奴隷にされたって所か。
「十分です。ていうか、もうすぐ本人がここに来ます」
「え?」
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