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インフィニット・ダンジョン・オンライン《Infinite Dungeon Online》  作者: 筋肉式卓一同+α
第二章:《終戦行動編》
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雑話:ローパ



 小さい頃の話。


 俺はよくある貧しい家庭に生まれた。

 家族構成は両親と妹の計四人。

 貧しい生活の中、両親は毎日のように酒を飲んでは俺と妹を虐待する日々が続いていた。

 

 ある日の深夜。


 俺は家に火を放った。

 もちろん、家族は家の中で寝ている。

 別に恨みや憎しみがあった訳ではない。

 というのも両親は虐待こそ行ってはいたものの、酒を飲まなければ普通の親だった。

 妹に関しても俺を慕う可愛い奴だった。

 

 ただ“虐待が許される空間”が嫌いだった。


 だから燃やした。

 ただ、それだけ。


 “嫌な物は消せばいい”。


 家族が一緒に燃えてしまったのはどうでもいい。

 今となっては興味もない事だ。


 その後、駆けつけた兵士に保護された俺は何故か孤児院に預けられた。


 保護された時に「俺が燃やした」と伝えたのだが、兵士たちは「こんな子供が自分の家を燃やすか?」や「偶然、外に出てただけじゃないか?」などと言って実行犯だとは思われなかったのだ。

 両親や妹を亡くし、気が狂ったのではないかと疑う奴まで居た。


 俺のしたことは間違っていたのか? わからない。

 


 孤児院に預けられてからは、何も考えずにただ言われた事をやるだけの日々を送った。

 自らの手で家族を焼いたと自己紹介をしていたため、普通に生活しているだけでも俺の姿が不気味に映っていたのか、他の孤児たちは気味悪がって近付いて来ない。

 俺としても他の孤児たちに微塵も興味がなかったので、その方が都合がよかった。

 しかし、小さな孤児院という集団生活の中で完全に干渉しないなんて事はできない。

 そのため、みんなで何かをする時は口頭で排除していた。


 次第に周りの孤児たちは、俺を攻撃するようになった。


 罵倒、小さな暴力、不当な扱い、などを受ける日々。

 俺はそんな事どうでも良かったのだが、経営者であるシスターは見つけ次第、周りの孤児たちを制止する。

 それでもなお続く攻撃に、優しいシスターは里親として俺を引き取ってくれる者を探してくれた。


 そして、遂に里親が見つかった。


 連絡を受けたシスターは、その里親と実際に会って話をするために孤児院を出た時、“アイツら”は行動を起こした。

 孤児院内の子供の中でも年長の数人だ。

 シスターが出ていったのを確認した年長の数人は、食堂で食事をしていた俺をとり囲んだ。


 曰く、シスターが俺のために里親を探しているという事が気に入らなかったのだと言う。

 優しく綺麗なシスターは孤児院内で人気を誇っていた。

 シスターからの特別扱いというのはアイツらの腹を立たせるには十分だったのだろう。


 面倒くさいなあ。

 ご飯食べ終わったら何しよう。

 掃除を頼まれてたんだっけ。

 そうだ、食器も洗わないとなあ。


 暴言が飛び交う中、俺はそんなことを考えていた。

 

 すると、年長の一人に殴り飛ばされた。

 元々、体の小さかった俺は地面に転がる。


 俺は立ち上がり、席に戻ろうとするが、戻る直前にもう一度殴り飛ばされる。

 二度目……。

 三度目……。


 倒されては同じように起き上がり席に戻ろうとした。


 そして四度目……は来なかった。


 皆一様に俺を見ていた。

 何か違う生物を見るような、気持ちの悪い物を見るような、奇異の視線と静寂が俺を襲う。

 

 何故? 俺は何もしていない。

 暴力をふるっていたのはそこの年長者どもだろう?

 

 ……あァ、そうかァ。


 俺はフォークを握り、最初に殴りかかってきた相手の目に向かって、一切の躊躇なく振り下ろした。


「あはっ!」


 俺の笑い声が食堂内に響く。

 辺りは静寂に包まれてた。

 俺をとり囲んでいた奴らが静かになっている。

 

 “嫌な物は消せばいい”。


 やっぱり、それが正しいんじゃないかァ!

 

 コイツは俺を殴った。

 いらない。


 こいつは俺の掃除の邪魔をした。

 いらない。


 此奴は俺を罵倒した。

 いらない。


 コイツは、こいつは、此奴は――全員いらない。


 食堂が静かになったので食事を再開しようとした時、ガラガラと音を立てて扉が開く。

 そこには真っ青な顔をしたシスターが立っていた。


 シスターは食堂を一望する。

 その視線を追うように、俺も眼球を動かした。


 俺の瞳に映ったのは、血に染まった床で動かなくなった孤児たち。

 苦悶の表情を浮かべたままの屍と目が合った、その時。


 『ドクンッ』


 あれ? なんだろ? 嫌な物を消しただけ。

 なのに、俺の中の何かが満たされていくようだ。

 家を燃やした時もそうだった気がする。


 そんなことを考えていると、シスターが俺に抱き着いてきた。

 シスターは俺に怪我はないか、ここで何があったのか、などを訪ねてくる。

 その時のシスターは俺の頭を優しく撫でてくれていた。


 ああ、シスターはやっぱり優しいな。

 シスターはいつも俺に優しくしてくれる。

 そんなシスターが俺は大好きだ。


 その時、俺の頭の中で一つの疑問が浮かぶ。


 “そんな人を殺したら、どれだけ俺の心は満たされるのだろうか?” と。


「ねェ? シスター?」

「なに?」

「俺、シスターが大好きだ」

「どうしたの……ウッ!!」

 

 俺を抱きしめるシスターを抱きしめ返し、首の裏にナイフを刺し込む。


 頚椎への一撃。

 シスターは即死した。


 俺を撫でている時の優しい顔のまま、何があったかもわからずに屍と化した。


 俺はゆっくりとシスターの屍を床に寝かせ、美しく滑らかな頬を撫でていたその時、シスターの胸元から一枚の手鏡がコトリと落ちる。


 地面に転がった手鏡には少年の顔が映し出されていた。


 俺の顔だ。


 それも満悦至極といった表情の。


 そうか。

 俺の中に満たされる何か。


 これが……()()()か。



 その後、俺は駆け付けた兵士に捕まった。

 孤児の一人が即座に逃げ出し、近くの民家に駆けこみ状況を伝えたようだ。


 牢獄に入れられた俺だったが、未だに満たされた時のあの感覚が忘れられない。


 もっと、愉しみたい。

 もっと、味わいたい。

 もっと、殺したい。


 それだけを考えて数年間の獄中生活を送った。


 次第に熱が冷めてきた頃、俺は釈放された。

 その足で獄中生活時に聞いた“天啓”というものを受け取りに神殿へと向かった。



 職業:<暗殺者(アサシン)>。



 これはイイ。

 やはり、俺は殺すために生まれてきたのだ。

 

「手始めに俺っちがぶち込まれた原因を殺るかあ~」


 神殿を出た後、俺は孤児院の生き残りの一人を捜す。

 意外と早く見つけ出すことが出来たのだが、数年の獄中生活の間我慢していた事もあってサクっと殺してしまった。

 

 足りない。


 一緒に居た奴も殺した。

 足りない。


 現場を見た奴も殺した。

 足りない。


 そこら辺を歩いている奴も適当に殺した。


 足りない足りない足りない足りない足りない足りない足りない足りない足りない足りない足りない足りない足りない足りない足りない足りない足りない足りない足りない足りない足りない足りない足りない足りない足りない足りない足りない足りない足りない足りない足りない足りない足りない足りない足りない足りない足りない足りない足りない足りない足りない足りない足りない足りない足りない足りない足りない足りない足りない足りない足りない足りない足りない足りない足りない足りない足りない足りない。


 十人程殺したところで十数人の兵士が駆け付けて来る。

 さすがに分が悪いと思い、逃げる事にした。


 運が悪く、街の近くで逃げ込めそうな場所は危険な魔物の住むと言われる山。

 山中まで逃げ切れば恐らく兵士は追って来れないはず。


 その代わり、俺の身の安全も保障されない。

 それでも俺は迷わず山の中へと逃げ込むことを選んだ。

 あんな何もない牢獄で生活するよりずっとマシだろう。

 そう思っていた。


 ……が甘かった。

  

 水場には見た事もない魔物が居座っており、飲み物が手に入らない。


 食べ物に関しては、魔物を狩ろうにも強くて狩れない。

 逆に俺が狩られかけた。


 数日間は植物を食べ、飢えや喉の渇きに耐える事は出来たのだが、これではただ死を待つだけだ。

 そう思い、俺は手始めにステータスの確認やスキルの確認をした。

 

「メルトエア、気配遮断かあ~。使えるう~。次はあ~」


 その日はスキルを使いこなす事に集中し、次の日から狩りを始める事にした。


 まずは孤立している魔物を狩り、レベルを上げる。

 ステータス値を上昇しては、また狩る。

 そんな日々を繰り返していくうちに、森の中での生活が徐々に安定してきた。


 同時に、人を殺したいという欲求が限界を迎えた。


 俺は山を降り、麓にあった集落へと行くことにした。

 息一つ切らすことなく集落に住む人を全員殺す。


 その後も多くの人を気の向くままに殺し、小さな村から大きな街までいろんな場所を渡り歩いた。



 そんなある日――俺っちは奇妙な聖職者と出会った。



読んで頂き誠にありがとうございますorz


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毎日一話ずつですが更新します!

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