91話:クラートラムの内情
~Side:カトル~
グランツメアの城を出た俺たちの表情は曇っていた。
「凄いこと聞いちゃったな」
「だねー」
「ヘス兄、さっきの話はタスク兄には言うの?」
「無論である」
「そうだよね」
「その為にも、急いでクラートラムに行くのである」
そう言ってヘス兄は魔法鞄から転移スクロールを取り出した。
俺とポルも取り出したのを見て、同時に文言を唱える。
「「「転移、帝都クラートラム」」」
文言を唱え終わると同時に視界が切り替わり、高い塀に囲まれた大きな帝都が目に入ってくる。
俺たちが門の方に向かって歩いていると、慌てた様子の兵士たちと面倒くさそうにしている門番が話しているのが見えた。
「本当にここには来ていないんだな!?」
「そう言ってんだろ」
「相変わらず態度の悪い奴め。もし来たら我々に報告しろよ!! いいな!?」
「あー、はいはい」
「クソッ! 一体、何処へ行ったんだ!!」
「一刻も早く探し出すぞ!!」
どうやら慌てた兵士たちは誰かを探しているようで、足早に去って行った。
兵士と話し終えた門番は欠伸をしながら門の外へと視線を戻すと、近くに居た俺たち気付き驚いたような表情で剣を抜く。
「何者だ?」
「シャンドラ王国の使者である」
「はあ? それなら来る方向が真逆じゃねえか? それに……」
門番はジロジロと俺たちの方を見てくる。
「亜人か魔人かわかんねえ奴とガキ二人がシャンドラ王国の使者って。吐くならもうちょいマシな嘘吐けよ」
「嘘はないのである」
ヘス兄は封蝋付きの手紙を取り出して、門番に見せる。
すると、門番は訝しげな表情を俺たちに向けた。
「シャンドラ王家の紋章……。本物か? 偽造は重罪だぞ?」
「信じないは主の勝手であるが、通してほしいのである」
頭をぼりぼりと掻き、門番は剣を鞘に戻しながら言う。
「本物なら尚更、通せねえな」
「何故であるか?」
「こっちの門は入ってすぐが貧民街で治安が悪い。それに城に行ったとしても皇帝陛下は居やしねえよ」
「それってさ、兵士たちが誰かを探してるのと関係してるんですか?」
「聞いてたのか、ボウズ」
「はい。それで、誰が探されてるんですか?」
「それは――」
「朕だ」
門番の言葉を遮り、詰所の扉が開く。
すると、中から俺やポルと変わらない年齢の男の子が出てきた。
「陛下! 外に出てはなりません!」
「少しくらい問題ない。それに、その者らは朕の客だろう?」
「そうですが……。せめて詰所の中で話されてください」
門番は皇帝と呼ばれた男の子と俺たちを連れ、詰所の中へと入る。
「では、私は仕事に戻ります」
「迷惑をかける」
「構いませんよ」
そう言うと門番は詰所から出て行った。
男の子は扉が閉まるまで見送った後、俺たちの方に向き直り口を開く。
「朕はヘンリー・フォン・キンスキー。若輩ではあるがクラートラム帝国の皇帝だ」
「拙僧はヘススである」
「カトルです」
「私、ポル」
「話は聞こえていた。シャンドラ王国からの使者だそうだな。何用だ?」
「これを届けに来たのである」
ヘス兄が手紙をヘンリーさんに渡す。
丁寧に封蝋を外して中を確認したヘンリーさんは、座っていた椅子を倒しながら勢いよく立ちあがった。
「円卓会議だと!? これは一体、何の事だ!? 朕は何も聞いていない!!」
――ヘンリーさんは円卓会議の事を知らなかった。
▼ ▲ ▼ ▲ ▼ ▲ ▼ ▲ ▼
時は少し遡り、グランツメア王国。
「少し話を聞いてくれないかな?」
ニコニコとしているランパートさんだが先程までとは違い、真剣な雰囲気を感じる。
「何であるか?」
「その前にさ、これをどうにかしてくれないかな?」
ランパートさんがクラリスさんの首に巻き付いた糸を指さしながら言う。
ポルは「あっ」と声を上げた後、スキルを解き魔法鞄に糸を仕舞う。
「ありがとう。それで、話なんだけど何処から話そうか……」
「ランパート兄様、初めから話された方がよろしいのでは?」
「うん。そうだね。事の発端は、十年以上前の事なんだけどね、僕たちのお父様、前国王はヴィクトリアの母親である第三王妃に殺されたんだ」
「「えっ」」
俺とポルが驚いて声を漏らす中、ヘス兄は眉に皺を寄せランパートさんを睨みながら口を開く。
「それが原因で娘であるヴィクトリアを国外追放したのであるか?」
「違うよ。確かにヴィクトリアを追放したのは僕だけど、他に理由があったんだ」
「何であるか?」
「……僕が最初に殺されたお父様を見つけたんだけど、その時既にヴィクトリアの母親の姿はなく、お父様の隣でヴィクトリアが座ってただけだったんだよ」
その言葉を聞いた俺たちの顔から血の気が引いていく。
「それじゃあ、まるでヴィク姉が国王を殺したみたい――あっ!!」
「そう。だから、ヴィクトリアが罪に問われる前に国外へと追放したんだ。だけど、当時のヴィクトリアはまだ幼くてね。一人じゃ心配だったから、数人の部下にヴィクトリアを尾行させていたんだ」
「それで拙僧たちの事を知っていたのであるな」
「そういう事。僕たちの妹を、ヴィクトリアを仲間に入れてくれてありがとう。心から感謝している」
再び、深々と頭を下げるランパートさん。
その肩は小刻みに揺れていた。
「あれ? でもさ、なんでヴィク姉のおかーさんがおーさまを殺したって知ってるの?」
「それは……」
ポルの質問に対してランパートさんは口を噤む。
確かにポルの言う通りだ。
ヴィク姉が殺してないって事を知らないと、国外に追放なんてしなかったはずだ。
一瞬の静寂を破り、答えたのはクラリスさんだった。
「それは私とランパート兄様だけは、父様からヴィクトリアの母親から殺されるかもしれないという事を知らされていたからですよ」
「「「!?」」」
「知らされていたのに何故止めなかったのか、とういう顔ですね。私もランパート兄様もヴィクトリアの母親が他国からの刺客だという事を聞いた時は止めようとしました。しかし、刺客だという事を周りに、特にヴィクトリアには気付かせないように事を済ませたいから一人で説得する、と父様は仰ったのです」
「他国……また、レヴェリア絡みであるか?」
ヘス兄が表情を暗くしながら言う。
ランパートは首を横に振り、信じられない事を言い放った。
「君たち『侵犯の塔』はレヴェリア聖国を敵視しているみたいだけど、レヴェリア聖国も被害を被っている側だと思うよ。諸悪の根源はクラートラム帝国さ」
クラートラム帝国!?
この後、俺たちが向かう予定の国の名前だ。
「ランパート兄様、それでは勘違いされてしまいます。“クラートラム帝国”が悪いのではなく“クラートラム帝国を操っている者”が悪いのです」
「そうだね。補足をありがとうクラリス」
「操っている者……クラートラム皇帝であるか?」
ヘス兄の質問にクラリスさんは首を横に振る。
「現クラートラム皇帝のヘンリー様は幼くも聡明な御方のようです。見事に操り人形を演じておられます」
「じゃあ、クラートラム帝国を操ってる者って誰なんですか?」
俺の質問にランパートさんは苦虫を噛み潰したような表情を見せる。
「……真祖です」
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