表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/7

プロローグ


 涼やかな風が、青々とした丘の上を吹き抜けていく。雲一つない夜空を見上げれば、こぼれそうなほどに満天の星空と、煌々(こうこう)と輝く満月が浮かんでいる。そんな星降る空の下に、二つの影があった。一人はパンツスーツを着た黒髪の少女、そしてもう一人は赤く汚れた茶色のコートを纏った長身の男である。


 夜空を見上げていた少女は、胸ポケットに入れた電話がブザーとともに振動するのを感じて、思わずしかめっ面をつくる。そして、表示された相手の名前を見て一つ、舌打ちをした後、応答した。


「……はい、こちらリュケイオン。はい、滞りなく……。はい、はい、了解しました。装備を補充後、直ちに向かいます」


 幾度かの受け答えのあと、少女は電話を切って悪態をつく。そして、男へと振り返った。


「例のターゲット、ようやく尻尾を出したって。で、すぐに現場へ急行しろってさ」


 少女の言葉に、男は露骨に顔をしかめる。だが、あきらめたかのように首を振ると、ゆっくりと丘を下り始める。少女もまた、男に追従する。


「……人使いの荒いもんだ」


 男がぽつりと呟く。そこには確かな呆れの感情が入っている。


「しょうがないよ、日本は数のわりに人手不足だからね」


「ターゲット、確か特Aランクだったろ? まったく、面倒なのばかり押し付けてきやがる」


「このままいけば、記録更新だね。喜ぼうよ」


「茶化すな……」


 男はこめかみを押さえてため息をつく。そして歩幅を大きくして、一気に丘を下っていった。


「ちょ、待ってよぉ!」


 少女もそれに追いつこうと、走り始める。



 彼らが()()()を去った後、月の銀光に照らされた丘の上には、歪に引き裂かれた異形の死体が、ただただ風に吹かれていた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ