告白
彼女は早く言わなければこの人に迷惑をかけてしまう。昨日まで幾度も練習してきたから自信はあった。でも、実際は言葉が出てこない。時間が経つにつれ頭の中に霧がもくもくと現れて手で追い払おうとするが濃くなっていく。せっかく練習してきたセリフが見えなくなってしまう。
なぜ俺がこの女の子に告白されるとわかったのか?ただ、ギャルゲーの定番だからである。…ふっ、待つのも俺には耐え切れない。ギャルゲーの主人公はここでイケメンのセリフを彼女にかけてあげるのだろうな。あいにく、俺はそんなセリフは持ち合わせていない。
しかし、背中を押すことはできる。本来は友達がかけてやる言葉なのだが、俺にはそういう相手はいない。この場では、立場は関係ないだろう。
「ゆっくりでいいよ。まぁ、言わないと伝わらないこともあるよ」
笑顔でそう話しかけた。
女の子は、その言葉を聞いて泣きだしそうになる。
「ありがとうございます。そのように、声を掛けてくれて私は救ってもらいました。入学したての頃覚えていますか?覚えていないと思いますが私は、鮮明に覚えています」
入学式の時私はクラスになじめていなかった。クラスの子から根暗と言われ、他の女子からは身体的等のいじめはなかったが陰湿ないじめを受けていた。机に落書き、私物を隠される、しまいには、荷物をごみ箱に捨てられる。私にはどうすることもできなかった。担任に言えば親にもいじめられていると知られるから相談もできなかった。でもその時に、あなたが来てくれて助けてくれた。誰も助けてくれなかったのにあなただけ私に声を掛けてくれていじめをやめるようにと言ってくれた。ただの思い過ごしかもしれないが、私にとって天からの助けと思えた。それからは、いじめは少なくなりいつの間にか無くなった。
そのおかげで今もこうして卒業まで転校せずにいられた。
決心をして練習してきたセリフなんて思い出さなくていい。今の気持ちをそのままぶつけよう。後のことなんてまたあとで考えればいい。
「わた…私、あなたのことがずっと好きでした。入学してからずっとずっとあなたのことを考えていました。こうして話すのは初めてかもしれませんが、もし良かったら私とお付き合いしていただけませんか?よろしくお願いします」
私の気持ちは伝えた。このままこの場所から逃げてしまいたくなる。相手の顔もまともに見ていられない。
読んでいただきありがとうございます。