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緑の指を持つ私と  作者: 美輪
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私リゼル、色々企んでるの

今回ジョゼフ達は出てきません……次話から話が進みます

号外!



金鶏騎士団、ジョゼフ団長様がまたしても、リスケ王国第8王子率いる大軍を撃破。

その数、リスケ王国王子軍1000名に対し、金鶏騎士団300名。

金鶏騎士団は少数にして知恵を絞り、ウィズカー岸壁に敵を誘い込む!そして急襲をかけた。

その姿、マクモスが大挙して、草を一掃する確し!

第8王子は成すすべなく討ち取られ、慈悲深きジョゼフ団長様は、降伏した者たち全てに慈悲を与える。

これで王子は残り5名!

金鶏騎士団たちは今後も名を馳せて行くことであろう!










この号外が配布される2日前、リゼルは乙女を散らしてしまった。


ジョゼフの兄カインロッドから求婚され続けて遂にその手を握り返してしまったのだ。




リゼルは貧しい男爵家の次女だ。




姉を社交界に送り出すだけで、家計は圧迫され、父はリゼルに我慢を強いた。

物分かりの良いフリをしながらリゼルは臍を噛む。

私の方が美しく、私の方が賢いのに、父は見誤っている。

2年先に産まれただけの愛想笑いしか出来ない、頭に蝶々が詰まっているような姉を社交界デビューさせて、この男爵家が潤うわけは無いのに…………





リゼルは姉に社交界の話を強請り、周囲の人間に気配を行き渡らせた。

伯爵たちの生活や〇〇公爵夫人のお茶会は誰が呼ばれて、誰が外されるのか……

地位は高くても、お金回りはどうなのか。逆に商売を軌道に乗せた爵位持ちの周囲の様子。


私は社交界には出られない。




ならば社交界には別の形で行くしか無い……

子爵ではダメだ。

一代で終わらせてしまう。

豪商もいけない。

男爵とはいえ地位ばかり狙われて、平民の愛人たちと競い合う生活など考えられない。



そう。伯爵以上でなくては。




サルバド連合国は新しいヒエラルキーを確立しつつある。

重なる戦に、王政は崩れ、今は新しい時代を迎えるのだ。




どこかに、何か落ちていないかしら…………

そう、伯爵家の次男三男でも構わないわ……




策を練り、どうにか形にしたいと思っている時、母が伯爵家のピアノ講師に選ばれた。




リゼルが10歳を迎えた年だった。






母エリザベスは元々伯爵家から嫁に来ており、その盾でルーサンベルト伯爵家への出入りが許された。

男爵の父とは恋愛結婚で2人は仲睦まじく、貧しさをなんとも思っていないようだったが、リゼルはそんな両親が物心ついた頃から嫌いだった。


エリザベスの実家を訪れた時は、豪奢な生活に涎が出そうになった。



いや、で出ていたかもしれない。



自分の毎日を振り返り、男爵の地位など平民と変わらないでは無いか?!と、怒りさえ覚えた。






エリザベスの実家は音楽に精通しており、公爵様たちからも非常に目をかけて貰っていた。

時に音楽会やダンスパーティーには重宝がられて、多くの社交家に名は知られていたのだ。




豪華なジャムが詰まった焼き菓子を祖父に食べさせてもらった時、リゼルの野心は6歳にして燃え上がった。



この焼き菓子を毎日食べれる生活を送らなければ!






母が出入りするルーサンベルト伯爵家には男子が2人。



兄のカインロッドと、弟のジョゼフ。



ジョゼフとは6歳の差だが、兄のカインロッドはリゼルと10以上違う。




母エリザベスに付いて行き、ルーサンベルト伯爵家の門を潜ると、カインロッドは随分大人に見えた。

そして、ジョゼフは話をしてみると、口数も少なく年よりも幼く感じた。






大人の読み物もこっそり読み込んでいたわリゼルは密かに策を巡らす。


カインロッド様はもう、筆下ろしなさってるに決まってる。きっとまだ、胸もなだらかな私の体には何も思わないだろう。3年はこの家に通うことになるが、私の成長も精々知れたもの。社交界の逞しい令嬢達には敵わない。

やはり狙うはジョゼフ様ね…………






体躯の良いジョゼフは15歳から騎士団の訓練校に入学していた。

伯爵家の近くにあったことから、16歳の歳からは通いで訓練校に通う。



逆にカインロッド様は、伯爵家の仕事に携わるようになり、家にいる時間もあやふや。




やはりジョゼフ様一択!






母エリザベスを通じて、ルーサンベルト伯爵夫人に気に入られるよう、リゼルは努力を重ねた。


10歳とほ思えないマナーと謙虚さ。

我儘を言うことはなく、ルーサンベルト伯爵夫人のお茶会の裏方を務める。


庭師と仲良くなり、花の生け方を習得。


ルーサンベルト伯爵夫人の代わりに、伯爵のハンカチに、家紋を刺繍しこっそり株を上げた。

客人の集まるホールに、公爵夫人の誕生花を飾り、ルーサンベルト伯爵夫人がお礼を言われるように仕向けた。



おバカな姉が偶にヘラリと茶会に参加している時も、辛抱強くお仕着せのまま頑張った。



今に見ていなさい。

外堀を埋め、見初められるのは私…………




リゼルの明確な努力はルーサンベルト伯爵の目にも止まり、夫人の後押しで17歳にして遂に婚約者の地位を手に入れた。

相手は予想通り、ジョゼフ。



ジョゼフは騎士団の中でも花形とされる金鶏騎士団に所属が決まり、出世の道も開けている。


やっと私の努力が実った!



リゼルは婚約式の夜、ベッドで1人喜びに震えた。

それは、結ばれた縁を喜ぶのではなく、自分の計画が上手くいった達成感。

思惑通りに物事が進んだ歓喜。



姉も同時期に婚約が整ったが、相手は同位の男爵家。領地も大したものでは無かった。



嬉しそうに、お互い幸せになりましょう!と微笑んだ姉の横面を抓りたくなったが、それは秘密だ。


私は伯爵家に嫁ぐのだ。

貴方とは違う!










リスケ王国との諍いが、戦に発展したのはこの後だった。




ジョゼフは家を離れ、戦線に絡め取られる。

会えない日々が続いていたが、文一つ寄越さない無骨なジョゼフに、なんの寂しさもリゼルは感じていなかった。



フランセという街に敵襲があった時、ジョゼフは更に戻りにくくなったと、金鶏騎士団の部下が遂に伯爵家に一報を持ち込む。


ルーサンベルト伯爵達はリゼルを気遣って、花嫁修行に我が家に入らないか?と、誘ってくれた。寂しいだろう、未来の花嫁を慮ってのことだった。

ルーサンベルト伯爵夫人がドレスを一緒に誂えましょう。と微笑み、リゼルの虚栄心は益々満たされた。



男爵だったら、あの仕立て屋に頼むわけがない!

姉の一歩も二歩も上を行くのだ!



リゼルは喜んで身支度を整え、男爵家を後にした。




ルーサンベルト伯爵邸は快適で、リゼルは随分油断するようになった。

お菓子を楽しむようになり、伯爵夫人と観劇や茶会に勤しむ。側仕えも居るので動くことも減り、半年も過ぎるとギスギスしていた体型は丸みを帯びて、柔らかさが出てきた。

子供っぽかった顔に、白粉と色気が混じり、ジョゼフ一筋だと周囲に知らせていた為、淑女としての価値も高まった。

そんな時、膨よかなリゼルの胸はカインロッドの目に留まる。

湯浴みの後、エリザベスから譲り受けた大きめのベビードールを着たままウロついていた所を、カインロッドに、見られたのだ。

リゼルは調理場にお菓子を摘みに行く途中だったのだ。




社交界でキリキリした令嬢ばかりを相手にしていたカインロッドは、油断しまくりの気の抜けたリゼルに目を奪われた。


貞淑なリゼル。弟の婚約者なのに……と思いながら気持ちは走りまくり、遂には、リゼルに求婚してしまった。



リゼルは驚いたが、伯爵家に嫁ぐという目論見が更に強固なものになっただけ。

カインロッドからは、子供扱いしか受けていないと思っていたが、結果は更に良好。


伯爵家の後継者と夫婦になれるのだ。これ以上の出世は無い!



ジョゼフは所詮騎士団の団長……





永遠に頑張れるものでも無いだろうし、やはり家紋入りの馬車に乗るのが私には相応しい……






リゼルは迷うフリをすること10日……




カインロッドの手を取ったのだった。













号外が届けられた朝、カインロッドの寝室でリゼルは複雑な気持ちに見舞われた。



私の選択は間違っていないと思われる…………




しかし、ジョゼフはこの度の活躍で国の英雄にのし上がった。きっと、この後も追撃していくことであろう……




初めて、ジョゼフを天秤にかけた日であった。

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