92 Side.王国の宰相
それを聞いたのは、市井の調査を一任している部下の一人からであった…。
「何? 奇妙な冒険者の一団がいる?」
「はい…、ギルドの者達やそのギルドに出入りしている他の冒険者達からの情報によりますと……」
曰く、ランクAの迷宮のボスであるアイアンゴーレムを剣だけで切り伏せた…、だの。
曰く、山を支配していたドラゴンを倒した…、だの。
曰く、死の街に住むリッチーロードを消滅させた…、だの。
聞く限りではまるで御伽噺の英雄のような内容ばかりだ…。
しかも…。
「それを為したのが、ある日唐突に現れた者達だと言うのか…」
「はい…、それ以前まで何をしていたのか…、何処の出身なのかすら誰も判らないらしく…、新たな英雄と持て囃す者達もいるそうですが、不気味に思う者達のほうが現状では多いようです…」
「だろうな…。 今迄影も形も無かったのに、いきなり現れて英雄候補だと…?
一体何なのだそいつらは…、何処か別の世界からやってきた異世界の人間だとでも言うのか?」
「異世界といえば…、魔神と呼ばれる存在は異世界から来ているとかいう話がありましたね…」
「はっ…、唐突に現れたという点においては魔神共と同じだな…。 まだその冒険者達が魔神と言う方が説得力があるわ…」
「そう思った者達もいたらしく…、魔法の鏡を介して見たところ普通に映ったようで…、どうやら魔神ではないようです…」
となると…、そいつらは正真正銘の人間だということか…。
「……厄介だな…」
「はい?」
「厄介だと言ったんだ…。 その者達の性格は知らんが…、まず間違いなく利用しようとする者達が現れるだろう…」
「彼の死病の王すら打ち倒した者達ですよ?」
「そんなものは判断材料にならん…。 悪意を持って近づく者達にとって必要なのは、利用しやすいかどうか、だ…。 それに見た目が同じ人間である以上、魔神と違って躊躇する理由が皆無だ…。
魔神は理解の及ばない異形の存在だが、その者達は見た目そのものは同じ人間なのだからな…」
「彼らに近づく人物を精査しますか?」
「頼む…、今はこれ以上厄介事が増えては困る…」
今はただでさえ面倒な時期なのだ…。
「彼らを調査する必要は?」
「市井の者達の噂話を集めるだけで良い…。 どのような者達か不明な以上、調べられていると知られるのは不味い…。 気取られそうなら調査は即座に中断させて構わん」
「解りました、では早速…」
「あぁ…」
そうして、部下は部屋から退出していった…。
「ふぅ…、また何でこんな面倒な時に余計な厄介事が湧いてくるのだ…」
寧ろだからこそ…、なのかもしれんな…。
悪い出来事と言うのは…、同類を伴ってやってくるものだ…。




