198 Side.ディサイエン帝国諜報部長
「…それで…、状況は…?」
「はい! 郊外に突如出現した物体…、通称「門」は、出現時と同じく突如として姿を消し、現場は「門」が出現する前の状態に戻っている模様です!!」
「そうか…、報告御苦労…、引き続き状況を注視し、何かあれば報告を…」
「了解いたしました!」
報告を終え、退室した部下を見送り、肩の息を抜く…。
「一先ず非常事態は過ぎ去った…、と思っても良いのだろうな…」
「はい…、街中に侵入したものがいないか、引き続き調査を継続させます…」
「任せる…」
椅子に凭れ掛かり、大きく息を吐く…。
突如として現れ、そして唐突に消えた「門」…。
一体アレは何だったのか…。
ああいった建造物を、短時間で造る技術は存在する…。
だが何の痕跡も残さずに消し去る技術は、まだ存在しない…。
もしも世界樹案件であるならば…、我々に出来ることは無いだろう…。
彼の者らは我々の常識を超越している…。
彼の者らなら…、あるいは不可能ではないと思えてしまう…。
だが彼の者らの正確な情報を知るのは陛下のみだ…。
代々の皇帝のみが口伝でのみ継承する秘事…、我々が知る由も無い…。
だがまぁ…、解らぬものを考えても仕方あるまい…。
常人に超人の思考や思想を理解できるはずもないのだ…。