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192 Side.黑と黒の世界 2
地獄絵図であった…。
人は弾け飛び、犬は千切れ飛び、猫は潰れ、鳥は墜ちる…。
血に塗れた惨劇が繰り広げられようとも、悲鳴も怒声も聞こえない…。
肉が弾ける「音」はする…、骨が砕ける「音」はする…、臓器が潰れる「音」はする…。
だがしかし…、死にゆく人々の「声」は聞こえない…。
苦悶の表情を浮かべて人が絶命するが、断末魔の「声」は聞こえない…。
苦痛や怒りに表情は染まれど、「声」は一切聞こえない…。
生命が消える「音」が聞こえる…。
生命が消える「声」は聞こえない…。
一体どれほどの生命が消えたことだろう…。
それでもまだまだ…、戦いは終わらない…。
掠り傷すら負わせていないというのに…、返り血すら届いていないというのに…。
一人たりとも逃げ出さない…。
一匹たりとも逃げ出さない…。
一羽たりとも逃げ出さない…。
皆敵に突撃し、死んでいく…。
その表情が恐怖に染まることもなく…、みんな敵に突撃し…、そして無為に死んでいく…。