187 Side.三国国境都市
そこは帝国と王国、そして連合国の国境が隣接する場所…。
そこには三国が合同で運営する都市があった…。
三国の入国審査場所であり…、不戦地帯であり…、折衝場所でもあった…。
故にこそ、今この都市は大騒ぎであった…。
そんな大騒ぎにあっても、一部はそんなことも無関係とばかりに静かな場所もある…。
そこはそんな場所にある空き家の一室…。
廃屋として捨て置かれ、未だ手付かずのままのその家に…、黒い人影がいた…。
その黒い人影は宙に座禅を組み、微動だにしないまま瞑想していた…。
何時からそうしているのか、それを知るものはこの場にいない…。
やがて黒い人影は何かに気づいたようで、座禅を解いて地に降り立ち、壊れかけの扉へと視線を向けた…。
そして視線が向けられた扉は、音を立てずに開け放たれた…。
「ただいま戻りましたわ」
「戻ったわよ~♪」
「お疲れ様です…」
挨拶しながら入室してきた白い人影とピンクの人影に、黒い人影も言葉を返す…。
「あら~? 私達が先かしら?」
「……そうでもないようですわね…」
「ほぼ同着ですね…。」
黒い人影がそう言いながら、壁の方へと振り返る…。
「お疲れ様…」
「戻ったよ~」
「終わったぞ…」
壁をすり抜けて蒼い人影と猫が降り立つ…。
両方を見遣り、黒い人影が言葉を続ける…。
「向こうも無事に終わったようですし、父上の許へ帰りましょう…」
そう言いながら黒い人影は虚空に鍵を差し込む…。
すると鍵を中心に黒い渦が現れた…。
「忘れものは無いですね?」
「問題ないわ~♪」
「問題ありませんわ」
「大丈夫だよ~」
「問題無い…」
黒い人影の言葉に、それぞれが返事をする…。
「では戻りましょう…」
言いつつ黒い人影は鍵を捻る…。
すると黒い渦が大きくなり、5人を包み込んでゆく…。
そうして黒い渦が5人を完全に呑み込み…、渦が消えた跡には誰もいなくなっていた…。