185 Side.帝国某所
「…本体が消滅した、か…」
窓から差し込む月明りのみが照らす部屋の中で、豪奢な椅子───玉座に座る人影が呟く…。
その顔色は、暗がりの中からは判断がつかない…。
「そうなると私かあいつのどちらかが成り代われるわけだが…、それは此度の戦の勝者で良いか…」
相変わらず照明が点いていない部屋は薄暗く、依然として顔色の判別は出来ない…。
「あら♪ それなら手間が省けるわね♪」
「……何者だ…?」
玉座に座る人影が、入口の扉に向けて言葉を投げかける…。
その扉から溶け出すように、白とピンクの人影が現れる…。
「お邪魔するわね~♪」
「この者が例の恥知らずの末端ですか…」
「……いきなり現れて随分なご挨拶だな…」
苛立ちを僅かに滲ませながら、玉座から人影が立ち上がる…。
「私をこの国の皇帝と知っての狼藉か…?」
立ち上がった人影がそのまま侵入者へと歩を進める…。
「敬う価値のある人なら礼節も尽くすわよ~♪」
「貴方にはその価値も感じませんわね…。 そもそも皇帝ですらない癖に偉そうですこと…」
侵入者のその言葉に、皇帝と名乗った人影が足を止める…。
「ならば言い方を変えよう…。 私をこの世界の神の分霊と知っての狼藉か…?」
神の分霊を名乗る者が、身体中から神気を放出しながら威圧する…。
「さっきも言ったでしょう~? 敬う価値のある人なら礼節も尽くすわよ~♪」
「何度も言いますけれども、貴方程度にはそのような価値すら感じませんわ…。 そもそも私達の主様の妨げとなる行いを為している時点で、塵芥程の価値も有しませんわ…」
「成程…、何処までも愚からしいな……」
溢れ出す神気と冷気、そして淫気が部屋中を満たす…。
「ならば疾く失せよ…。 神に逆らう愚か者共を罰することになるぞ…!」
「神ってだけでどうしてここまで偉そうにできるのかしら~?」
「それが理解できる知能があるならば、ここまで増長していませんわよ…」
その言葉が合図となったのか…、神の分霊を名乗る人影が飛び出し、白とピンクの人影と激突した…。