176 Side.辺境の村の村長
「皆の衆、集まったようじゃな…」
周囲を見渡し、欠けている者がいないことを再度確認する…。
そして一息吐き、意を決して言葉を紡ぐ…。
「既に知っている者もおるじゃろうが…、今朝方…国より早馬が来た…」
その言葉に、集まった者達は騒然とする…。
知っている者はその内容を思案し…、知らぬ者は知っているであろう者達に訊ねる…。
少し間を置いてから、手を鳴らして雑談を一時中断させる…。
「内容についてじゃが…、次の戦に向けての徴兵…だそうじゃ…」
一瞬の沈黙の後、再び騒然となる…。
再び手を鳴らして声を張り上げる。
「皆落ち着け! 今回はこのことに関する議論の場じゃ、何か意見があるものはおるか!」
騒めきは収まりきらないが、何人かが手を挙げる…。
一人一つずつとして発声を許可する…。
「年齢に関しては…?」
「成人していて尚且つ40代未満の者達じゃ…」
「人数に関しては…?」
「可能な限り、だそうじゃ…」
「期限は…?」
「………」
「村長…?」
「……一週間後だそうじゃ…」
儂のその答えに、三度騒然となる…。
流石にこれを諫めるのは無理じゃのう…。
しかし王国はどういうつもりじゃろうか…、年齢と人数に関してはまだ解らなくもないが、期限は正直喧嘩を売っておるとしか思えんぞ…。
……いや…、流石に考えすぎじゃろう…、それは無い…、あるはずが無い…。
そんなことがあっていいはずが無いのじゃ…。