175 Side.辺境の村の住民
「今日も一段と冷えるなぁ~…」
白い息を吹きかけながら手を擦り合わせる…。
今年の冬も大変そうだ…。
「兄ちゃん、薪割り終わったよー! 何時もの所に積んどくねー!」
「頼むー!」
家の裏から薪を積み上げる音が聞こえてくる…。
最近は薪割りの速度も上がってきたし…、弟ももう慣れたようだ…。
(父と母が戦で亡くなってもう五年か…)
すっかり今の生活にも慣れてしまった…。
戦が始まり弟と共にここまで疎開して…、戦地となった都で父と母が亡くなったと聞いた…。
戦の被害が酷く、辺境の村の殆どが放っておかれる事態になった…。
この村に疎開した人々と自給自足の共同生活を開始し、それにも随分と馴染んだ…。
(父さん…母さん…こっちは何とか元気でやっていけてるよ…)
足りないものも多いけど…、まだ何とかやっていけてる…。
後五年もあれば…、きっと安定した生活になる…。
「それじゃあ行ってくる…、凍えないように戸締りはしっかりとな!」
「はーい!」
弟の返事を聞きつつ、中央の屋敷へと歩き出す…。
屋敷と言っても…、殆ど村民の会議の場に使われるだけの空き家だが…。
「今日も何事も無ければいいけどなぁ…」