175/269
174 命爆ぜ散る
紅が引いたその後に、銀色の紅が降臨する…。
紅い泉の水面に降り立ち、中心部へと歩を進める…。
そして銀色の紅は徐に水中に右腕を突っ込んだ…。
何かを探るように身動ぎをし、見つけたのか腕を引き抜く…。
その手に握られていたものは、紅色をした球体だった…。
それが引き抜かれたと気づいたのか、紅い泉が騒めきだす…。
波打つ水面に力を感じず、振り絞るかのように騒めきだす…。
銀色の紅は一切気にせず、踵を返して岸まで向かう…。
紅い泉は尚も騒めき続け、ついには水面の紅が薄まりだす…。
銀色の紅が岸に着く、それと同時に水面の紅が失せる…。
銀色の紅は尚も気に留めず、そのまま目の前に出来た空間の裂け目に入っていった…。
後に残ったのは綺麗な泉、透き通るような水面の泉…。
かくして紅い泉は消えた…。
唐突に災厄の根源が消えた…。
だが人々は怯え続ける、紅き泉無くとも怯え続ける…。
消えたことにも気づかずに、幻の災厄に怯え続ける…。
何時か気づく日は来るだろうか…。
それとも新たな災厄が来るだろうか…。
それは他世界の者にはどうでもいいことだろう…。