163 Side.転移者カズマ 3
俺たちの質問に対するあいつの返答は…、ある意味で予想出来て、ある意味で予想できない答えばかりだった…。
何者なのか?…、という俺の問いに対しては…。
『遥か昔…、世界がまだ生まれて間もない頃に誕生した、出来損ないのエルフだよ…』
という答えだった…。
耳が長いからもしかしたらと思っていたが…、本当にエルフだとは思わなかった…。
だって俺らが知ってるエルフって…、もっとスマートというか…、線が細いというか…。
それに対してこの男は…、身長が明らかに2m超えてるし…、巌みたいというか…、凄く筋肉ムキムキだ…。
ボディビルダーの大会に出たら優勝できるんじゃないか…、と思うぐらいのガタイの良さだ…。
まぁ素人考えの適当な感想だが…。
ここは何なんだ?…、というショウタの問いに対しては…。
『私が創造した…今は世界樹と呼ばれている樹木だよ…。
私の力を吸って強化されてるし…、内部がこんなでも生命体として在れるんだから…、中々こいつも大した奴というか…、創造主としては誇らしい気分になるね…』
という答えだった…。
聞きたかった内容とは違うけれど、この木が固有種であるということは貴重な情報と言っていいだろう。
聞き直せる雰囲気ではないし…、ショウタの奴も聞き直すか否か迷って結局辞めたみたいだし…。
最後に……キョウスケの質問…。
貴方の目的は?……という問いに対して…。
『……世界の…未来永劫の安寧だ…』
という答えだった…。
俺たちが予想していた答えであり…、俺たちが予想していなかった答えでもある…。
俺たち三人での予想では…、「世界の支配」か「世界の平和」だと予想していた…。
「世界の未来永劫の安寧」は、「世界の平和」と係っている部分もあるが、どうにも違っているようにも聞こえてくる…。
「世界の支配」と予想したのは…、あいつの周りにいる眷属達が…、それをなし得るだけの力を持っていると感じたからだ…。
今あいつの膝にいる紫の少女一人だけでも容易く行えると確信できてしまう…。
なのにやらない…、やる理由かもしくは興味が無いように思える…。
安寧と言った部分も引っかかる…。
言葉の違いといえばそれまでだが…、俺たちの考える「平和」と…、あいつの言う「安寧」は別のもののように感じる…。
結局…、解ったことと判らないことが分かった一時だった…。
そして今俺たちは…、世界樹内部の食堂に来ている…。
皇帝との会合の邪魔だから…と、黒髪の少女に案内された…。
まさかこっちに来てからラーメンが食べられるとは…。
あいつに関しては謎が増すばかりだな…。
……ん?
何か揺れたような…?