162 Side.ヘスティア 4
「わぁ……」
目の前に広がるのは…、文字通りの別世界…。
「海の底ってこうなってるのね…」
アナスタシアさんの言葉を聞きつつ、透明な壁の向こう側を夢中で見つめる…。
私とアナスタシアさんは今…、世界樹の根元にある海底都市に来ている…。
世界樹の内部を大体見終わり、ちょうどいいタイミングだからとアグニルさんに連れてきてもらった。
何がちょうどいいんでしょう…?
「客人が来てるからね…、それも今回は不確定要素付き…」
「アグニルさん!」
考えを読んでいるかのように声をかけながら、アグニルさんが近づいてくる。
「それってこの前聞いた転移者の事かしら?」
外を眺めたまま、アナスタシアさんがアグニルさんに尋ねる。
「それ三人と皇帝が一人、ね…」
溜息を吐きつつ、アグニルさんが答える。
「皇帝って…、唯一交友があるっていう帝国の皇帝ですか?」
「その皇帝で間違いないよ」
私の問いに、隣に並びながら答えるアグニルさん…。
「私は基本的に人間を信用してないからね…、数多存在する人間達の中でもマシな奴ではあるけれど…、それでも半々ってところかな…」
そして私が疑問を零す前に、何処か暗い色を宿した瞳で、透明な壁の外を見ながら言葉を続ける…。
過去に何かあったのでしょうか…?
「……ねぇ…」
「何だい?」
「どうしました?」
何処か震えた声で、アナスタシアさんが問いかけてくる…。
「向こうの方で……凄く大きな影が…動いて…いる…気が…するんだ…け、ど…」
後退りながら言葉が段々と細く、途切れ途切れになっていく…。
向こう…?
「………!?」
アナスタシアさんが見ている方向を見つめてみると…、とてつもなく大きな影が蠢いているのが見える…。
元いた世界じゃ見たことのない大きさ…、あんな大きなのが存在するなんて…。
あれ…? 近づいてきてるような…?
「あー…、アレはレヴィだね…」
同じ方向を見つつ、変わった様子もなく言葉を発するアグニルさん。
「知っているんですか…?」
「知っているというか…、私達と同じ我が主の眷属の一人だよ…」
「……え?」
あんな大きな生物も…、主様の眷属だなんて…。
どんどん近づいてきて…、姿が明確になっていく…。
姿がはっきりと見えるまでに近づいてきたところで、アグニルさんがこちらを振り向く…。
「彼女はレヴィアタン…、我が主の眷属の中で一番の巨体で…、ここの番人だ…」
そう言って紹介された彼女は…、その巨大な口を大きく開いた…。