161 Side.転移者ショウタ 2
『よく来たね…、ディサイエン皇帝…』
頭の中に直接…、声が響く…。
目線を上げると…、段上の玉座にて坐する大男が…、口と目を閉じたまま此方に顔を向ける…。
こうして相対するのは二度目になる…。
相も変わらず虚無を纏っているその大男は…、前回と同じく周囲に眷属達を侍らせている…。
「お久しぶりです…、クレス殿…」
そしてその大男に対し…、頭を垂れて話すディサイエン帝国皇帝陛下…。
彼自身も慣れた動作で…、遥か昔からの変わらぬその関係を想わせる…。
「こちら…、今年度のものです…」
そう言って…、皇帝陛下は何処からともなく大きな本を取り出す…。
…いや…、本というよりは…、元の世界でよく見たファイルに似ている…。
それを片膝をつき、両手で奉げるように大男の方に差し出す…。
『リース…』
「はい…」
大男に呼ばれた黒髪の少女が、皇帝の前まで歩いて行きそのファイルを受け取る…。
そしてそれを、大男の許まで持っていき手渡す…。
「どうぞ、創造主様…」
『ん…』
受け取ったそれの表紙に手を翳す…。
すると…、同じものが翳していたところに突然現れた。
複製の魔法だろうか…?
『元のは返すよ…』
「お返しいたします…、どうぞ…」
大男から受け取ったそれを、黒髪の少女が皇帝に手渡す…。
そして、それを恭しく皇帝が受け取る…。
「ありがとうございます…」
受け取ったそれを、取り出した時と同じように何処かへと仕舞う皇帝陛下…。
何らかの収納魔法でも使ってるのだろうか…。
『さて…、先にそちらの用事を済ませてしまおうか…』
大男がそう言いつつ…、自分達3人の方を見遣る…。
『質問は一人一つずつでいいかな…? あまり時間を割くのも皇帝に悪い…』
その言葉を聞き、あらかじめ自分達で決めていた順番で質問をすることにする…。
最初にカズマから…。
「俺が聞きたいのは───」