158 Side.ディサイエン帝国の皇帝 2
───我らディサイエン帝国は、この世界唯一の人類国家であり、世界の支配者である。
先代の皇帝から聞かされたその言葉を…、当時の私は疑問と共に受け入れていた…。
そしてその疑問は…、私が父上から帝位を継承するまで…私の中で燻り続けた…。
当時父上からそれを聞いた時の私は…、万年続く帝国の歴史を知っていたからこそ、疑問に思った…。
それだけ長く続く以上、国としての自負と誇りがあるのは理解できる…。
だがこの大陸すらも手中に収めていない帝国に…、そのようなことを言う資格があるのだろうか…、と。
過去に何度もあった世界大戦の全てを乗り越え、生き残ってきた実績から見ても…、世界の支配とは言わないまでも、世界の覇権国家であることは、私も納得できるところではある…。
だがどうにも奇妙なのだ…。
過去の歴史を学んでみても…、様々な分野に励んでみても…、父上に付いて国政を学んでみても…、言葉に出来ないような違和感を感じるのだ…。
父上に直接聞いても…、お前に帝位を継承するときになったら、話してやろう───と言うばかりで…、その時が来るまで…ずっと違和感と疑問を抱えてきた…。
そして父上から全てを聞かされたあの日…。
違和感が解消され…、疑問が氷解し…、帝国の今までの歴史にも納得した…。
───帝国がここまで繁栄したのは、初代様がこの御方と邂逅したからだ…。
父上から聞かされた言葉と…、目の前の玉座に坐する…、虚無すら思わせる大男に謁見した時に…。